ニュース

KDDI、iPhoneで日常に溶け込むアート作品が楽しめる「AR × ART」アプリ

 KDDIは、au Design projectの取り組みの一環として現代アート作品とARのコラボレーションが楽しめるアプリ「AR×ART by augART」(iOS版)の提供を開始した。

 AR×ARTは、iPhoneのカメラを活用して、アート作品を今いる場所に出現させたり、特定の場所に行くとアート作品が出現したりといった新しい芸術作品へのふれ合いが楽しめるアプリ。

 対応するのは、LiDAR搭載機であるiPhone 12 Pro/Pro Max/iPad Pro(2020)。Android版は将来的には対応を検討しているしている。

人やものが「PixCell」化する

 第1弾は、彫刻家の名和晃平氏の作品とコラボレーション。アプリ上で楽しめるアート体験は全部で3つある。

 アプリを起動すると、ホーム画面に3つの機能が並ぶ。

 「PixCell_AR」では、目の前の人やオブジェクトがリアルタイムに名和氏の代表シリーズである「PixCell」(ピクセル)のような造形に変貌するというもの。こちらは、12月ごろに実装される予定。

AR × ART COLLECTION

 「AR × ART COLLECTION」では、名和氏の作品をARで再現。自室や外出先などさまざまな場所に作品が出現させられる。作品のサイズや向きなどは調整も可能で、同じ作品を同時に複数体配置もできる。

 アートの選択画面からは、それぞれの作品の説明を読むこともできる。アプリ内の説明によると、このアプリ内の鹿はネット上に現れた「迷い鹿」から象った剥製らしい。複数並べると画像のように鹿牧場も作れる。

 また、鹿のほかにも、粘性の液体が床に落ちる瞬間の形状を3D化した「Ether」が楽しめる。

 一般的に少々、認識に時間がかかる印象のARだが、LiDARを利用することで素早く正確な認識を実現している。人やものの影になると一部が隠れ、しっかり椅子に乗せることもできる。

旅先でWhite Deerが現れる

 「White Deer_AR」では、ある特定の場所にでかけることで、名和氏の作品「White Deer」が現れるのを楽しめる。出現スポットは、GINZA 456 Created by KDDIや実際にWhite Deerの彫刻が展示されている場所などさまざま。

 出現スポットに赴き、「White Deer_AR」モードを起動。White Deerが出現する特定の場所にiPhoneを向けると、White Deerが突如現れる。

GINZA 456で試した様子。シカでした

 AR×ART COLLECTIONで選択できる作品は、初期状態では一部ロックがかけられている。White Deer_ARモードで無事にWhite Deerに出会えると、AR × ART COLLECTIONに選択可能な作品として追加されるようになっている。

 また、au 5G エクスペリエンスに対応しており、アート作品は通常は動かない静止画だが、au 5Gエリアの出現スポットではアニメーションで楽しめる。こちらの機能は2021年2月に対応する予定となっている。

 White Deerの出現スポットはGINZA 456、東京ガーデンテラス紀尾井町、GYRE、ホテルアンテルーム京都/那覇、宮城県石巻市萩浜のWhite Deer(実物)展示エリア(11/27より立ち入り禁止、再開時期未定)、渋谷パルコ(屋上)。加えて東京都内のある場所に行くとAR作品を全解除できるという。

 また、名和氏の作品集「METAMORPHOSIS」のWhite Deerのページにカメラを向けるとARのWhite Deerを楽しめる。

新しい芸術体験を推進

 KDDI 5G・xRサービス戦略部 部長の繁田光平氏は、KDDIがこれまでも「iida」などデザインについてさまざまな取組をしてきたことを紹介。「体験自体もデザインしてアップデートしていく。アート・カルチャーについてもより新しい体験を」と意義を説明。

KDDI 繁田氏
KDDI 砂原氏
名和氏
The Chain Museum 遠山氏

 「ARで作品を作るだけではなく、日本全体をインスタレーション化したり、『旅』を介して作品を感じ取ってもらえるような奥行あるものになっている」と繁田氏。「5G時代にXRも使いつつ、文化・芸術の体験をアップデートしていく。『augART』(オウグアート)のプロジェクトの中で、5年、10年先を見据えてアートの体験を作っていきたい」と語った。

 AR × ARTに参加するThe Chain Museumは、KDDI Open Innovation Fund 3号から出資を受け、KDDIと業務資本提携を締結。同社 代表取締役社長の遠山正道氏は「5Gを活用した新しいアートへの取り組みに参加できることに興奮している」とコメント。

 「芸術はそもそも壁画や天井画など3Dなものだった」と遠山氏。それがその後、キャンバスに描くようになり「3D→2D」という現象が起きたと説明する同氏は「ARは新たなメディウム(媒体)が加わった」と捉える。さらにアーティストに求められる素質やこれまでのように美術館に行くというよりもどこから始まりなのか分からない、風景とアートが溶け合ったような、これまでとはちょっと違う体験が始まるのではないか、とARアートに期待を寄せる。

 彫刻家 名和晃平氏は、前述の「iida」にも参加。2010年に「PixCell via PRISMOID」をデザインした。PixCell自体の始動はそこからさらに10年遡る。「今回、20年越しにデジタルな作品に取り組めた」と名和氏。

 PixCellは、情報化社会の到来を彫刻で表現したものだという。「20年前、こういう時代(デジタル時代)が来たら彫刻はこうなるんじゃないか、と思っていたが実際に今になって実現した」と感慨を語る。