ニュース

キッザニア、5Gエリアを設計する「通信会社パビリオン」をオープン

 KDDIグループのKCJ GROUPが運営するキッザニアは、新たに通信会社パビリオンをオープンした。

 通信会社パビリオンは、携帯電話ネットワークを構築する通信エリア設計士の仕事を体験できるもの。

 架空の街の地図をもとに基地局の模型を設置することで、地図にその基地局がカバーするエリアが描かれ、仕事を体験する子どもはできるだけ少ない基地局数で高いカバレッジを目指す。

 本稿中では、キッザニア東京の施設を扱っているが、キッザニア甲子園でもまったく同じ体験が楽しめる。

オープニングセレモニー

 KDDI 取締役執行役員常務の森田圭氏があいさつの場に登壇。同氏は「あらためて自分たちの仕事を見つめ直す機会になった」と語る。

KDDI 森田氏
KCJ GROUP 圓谷氏

 加えて、「私達の通信は、暮らしや生活、ときには命をつなぐ。安定した通信を提供するという社会的責任の大きさを考えさせられた」と森田氏。

 さらに子どもたちにも通信の大事さ、通信という重い社会的責任に触れてもらえれば意義があるとコメント。

 KCJ GROUP 代表取締役社長の圓谷道成氏は「5G元年とも言われる、今年にやりたかった。間に合ってよかった」とコメント。新型コロナウイルスの影響によりオープンが当初予定よりも遅れたものの、2020年中のオープンに間に合ったことに安堵を漏らした。

 「今の子ども達は5Gが当たり前の世界で育っていく。5Gで変わる世界や社会をイメージしてもらうことに加えて、5Gで変わる世界をぜひ牽引していってもらいたい。新ビジネスを考える力を学んでいってほしい」と思いを語る。

 オープニングセレモニーでは、ARで映像が楽しめる「XRドア」や実際の5G通信で「Facetime」経由でキッザニア甲子園の子どもと会話をするパフォーマンスが披露された。

通信エリア設計士

 基地局の模型は、ビル局、コンクリート柱局、電柱局の3種類が用意されている。実際の基地局と同じように鉄塔局は1局でカバーできるエリアが広く、電柱局は最も狭い。

 カバーエリアは、基地局を中心に円状に再現されているが、同時に3つ以上の円が重なるとセル間干渉として、赤い網掛けが出現するなど、かなり凝った作りとなっている。

ビル局
コン柱局(奥側)
電柱局(左手奥側)
干渉が起きている

 オープン初日の今日、キッザニア子供議会のまーすけさんとセレスさんが、実際に通信会社パビリオンを体験した。

 実際にエリア設計の仕事に入る前に「モバイル通信とは何か」という説明がなされる。ちなみにこの説明は5Gの前に4Gから始まる。スマートフォンの広がりとともに4Gが普及していったことが紹介され、5Gの特長である多接続・低遅延などに子どもたちは真剣に聞き入る。

 通信会社パビリオンを担当する、KCJ GROUP事業開発本部 コンテンツ部 アシスタントマネージャーの小寺恩氏は「通信会社というテーマは難しかった。実体のないもののためどう(子どもに)説明したらいいか悩んだ」という。

 そうした中で、通信のことを調べると、基地局の種類の多さを知り「こうしたことを伝えたら、身近に感じられるのでは、ひいては未来のことを考えてくれるのでは」というところから行き着いたアイディアだと語る。

基地局を置いてシミュレーション

 モバイル通信に関わる説明が終わったところでいよいよ仕事が始まる。今回はあくまで報道陣に向けたデモで、実際にはさらに作業工程が増えるという。

 今回、仕事した子供は2人だったが、実際には最大6人でひとつの街に5Gエリアを構築することになる。

 アルファベットで区切られたそれぞれの設計士の手元には、ゲージがある。これは、自分のエリアのカバレッジを把握するためのもので、100%になると黄色に光るようになっている。

 ここで子どもたちは、自分の思い思いに基地局を設置していくのだが、実際のエリア設計さながら、いかに少ない基地局数で――つまり、基地局建設コストを下げてカバレッジの向上を目指すかという手腕が問われる。

 さらに、前述のセル間干渉にも気を配りながら、配置する基地局を選ばなくてはならない。少々難しそうな印象も受けるが、子どもたちはめいめい楽しそうに声を上げつつ、基地局を設置。

 ビル局とコンクリート柱局は指定の場所にしか配置できないが、電柱局にその制限はなく、自由に配置できる。こういったところを見ると、大人でも楽しめそうなちょっとしたパズルに近い印象だ。

5G普及後の世界を思い描く

 一通り、基地局の配置が終わると、あらためて、シミュレーターの横にある街の地図で、自分たちが配置した基地局計画によるエリアカバレッジを確認できる。

 ここでさらに、5Gで街や生活がどのように変わるのかということも紹介される。たとえば、自動運転やコネクテッドカーによる道路情報の共有、ドローンによる宅配便の配送などだ。

移動基地局車(写真中央付近)

 ちなみに、シミュレーションに用いる街には大きな公園が存在しているが、ここで野外ライブが開かれる映像が挟まれる。しかし、公園はエリア化されていない。指導役の女性の「この映像を別の会場や住宅街に配信するには……」という声とともに「移動基地局車」の模型が登場。

 無事に公園を5Gエリア化。低遅延で高画質なイベントの映像を遠隔地に届けられた、というところで無事に仕事が完了する。

 終了後には、エリアカバー率や使用した基地局数などのリザルトがもらえる。

 体験した2人は、「最初は難しかったが、楽しかった」と満足げな表情を浮かべる。最後に映し出される5Gで実現する未来に対しても、「ドローンを利用した宅配便などがより手軽になってくれそう」と期待を寄せていた。近い将来、彼らが人生の岐路に立ったとき、この日の経験を思い出すときが来るのかもしれない。