ニュース

総務省、競争ルールの検証に関するWGを開催――MNP円滑化や頭金表示問題など議題に

 総務省は12日、「競争ルールの検証に関するワーキンググループ第11回」を開催した。

アクション・プラン

 同会合の中では、先般発表されたアクション・プランの内容についてあらためて説明された。同プランはモバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたものとされており、3本の柱を軸に取り組んでいく。

 第1の柱では「分かりやすく、納得感のある料金・サービスの実現」、第2の柱では「事業者間の公正な競争の促進」、第3の柱を「事業者間の乗り換えの円滑化」としている。

 今後の進め方として、同検討会では必要に応じて公正取引委員会や消費者庁とも連携しつつ、取組の内容を毎年検証。必要に応じて取り組みの見直しや追加対策を講じる考えを示した。

 野村総研の北俊一氏は、アクション・プランに定められる「改正事業法の着実な執行」について同氏のもとに違反の潜脱行為につながるような報告が多数あると明かし「頭金やクレジットカード、携帯保証を利用したものなど、巧妙なもの、モラルが問われるようなものが多数ある。こうしたことで公正な競争が阻害されないよう、随時ガイドラインを見直していくべき」とした。

 また、その上で「このような行為が減らない原因を同時に検討しなければ、イタチごっこになるのでは。『消費者保護ルールの在り方に関する検討会』とも連携しつつキャリアと代理店との関係性、代理店ビジネスの在り方についても検討できれば」と語った。

MNPガイドライン

 MNPガイドラインの改正について、総務省ではパブリックコメントの受付けを開始した。期間は11月3日~12月8日までの期間。

 ガイドラインの改正案では、MNP手数料をWeb手続きは無料、店頭や電話では税別で1000円以下に制限される。また、Web手続きにおいては手続きのページをユーザーがわかりやすい場所へ設置、ページ構成も分かりやすく簡便なものとし、受付時間を原則として終日とするよう求めた。

 また、MNPを利用するユーザーへの引き止め行為の禁止やMNP予約番号の取得についても不必要に長時間をかけることがないよう表示方法などを工夫すること、転入先の業者についてもMNP予約番号の有効期限の長さについて合理的なものとユーザーが認識できるようにするようにとしている。

 改正ガイドラインは令和3年4月1日から適用されるよう求めている。

タスクフォース設置へ

 円滑なキャリア移行の環境を実現するため設置される「スイッチング円滑化タスクフォース(仮称)」では、eSIMの促進やSIMロック解除の一層の推進に加えてキャリアメールの持ち運びについても検討される。

 これについて、東京大学大学院の相田仁教授は「MNPが制度化されたときにも検討されたが、メールの場合は受信できればいいのか、送信も元のアドレスから可能にするのか。キャリアメールには「@docomo.ne.jp」など各社独自のドメインが使われている。MNP後も元のメールから送信するのでは迷惑メール対策などの観点からも問題がある。モバイルのみではなく広くインターネット関係者に意見を訊くべきではないか」とした。

 また、神奈川大学の関口博正氏は「キャリアメールの移行が乗り換えを円滑にするツールとしてどれほどの効果があるのか。キャリアメール以外のメールが普及し、そのものの存在意義も以前に比べて低下しているのではないか。実現に必要な開発コストとニーズを慎重に検討するべき」とコメントした。

頭金表示

 検討会では、携帯電話業界における頭金表示の是非についても言及された。一般的に頭金とは、売買契約の成立時に販売価格の一部を支払うある程度まとまった金額を指し示す。

 一方、携帯電話業界においては、販売代理店が独自に販売価格に上乗せした金額を頭金とする慣例があり「頭金0円」が必ずしも他店舗より安いとは限らないと総務省が注意喚起しており、消費者庁と連携して不適切な表示がないように是正していくとしている。

 これに対して、野村総研の北俊一氏は「頭金があるのは主にドコモショップで他社のショップではあまり見られない。携帯端末の再販価格は自由であり、頭金がないと代理店は端末販売によって粗利が得られない状況になっている。独禁法や代理店とキャリアの関係、これらも含めて今後検討されていければ」とコメントした。