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ソフトバンク宮内社長、「ギガ単価、80%以上値下げした」
第3四半期決算説明会で示された事業戦略
2020年11月5日 06:00
ソフトバンクは4日、2020年度第3四半期の業績を発表した。同日午後の説明会において、代表取締役社長の宮内謙氏からは同社の成長戦略などがあらためて示された。
説明は、親会社のソフトバンクグループによる株式売り出しからスタート。全体の業績に触れた後、セグメント別の紹介では「法人事業」「ヤフー」「PayPay」そして「通信」という順となり、「Beyond Carrier」というテーマを掲げ、事業の多様化が進んでいる様が明確に示された。
通信事業は堅調
2020年度の同社通信事業はこれまでのところ堅調――そう語った宮内氏。
携帯電話や固定回線を含む通信事業は、端末販売が少し落ち込んだものの、サービスの売上は増加したという。
ソフトバンク全体としても収益の柱が複数育ち、多様な形になってきているが、通信事業だけに区切っても、通信料収入だけではなく、ほかの売上も伸びてきており、多様化してきたことが示された。
1GBあたり80%値下げした
菅義偉総理大臣が就任早々、唱えた携帯電話料金の値下げ論。これにソフトバンクは、ワイモバイルでの20GBプランの発表という形で応えた。
これに加え、今回の決算説明会では、これまで触れられていなかった通信料の「単価」が紹介された。
宮内氏
「2015年度までのホワイトプランは最大7GB。その後、ギガモンスター、ウルトラギガモンスターと大容量化した。動画・SNS見放題を実施し、たくさん通信する方がいっぱいいる。ギガ単価(1GB)も80%以上値下げした」
宮内氏が示した表では、1GBあたりの単価が130円以下とかつてより安価になったことが示されている。
また大容量のソフトバンクブランド、中容量低価格のワイモバイル、低容量低価格のLINEモバイルという3ブランドで展開することもあらためて紹介され、宮内氏は「ユーザーが選べるものがあったほうがいい」とした。
ワイモバイルの20GB「数を伸ばして収入増」
特にワイモバイルブランドの展開で、ユーザー1人あたりからの平均収入はすでに2割減少済みであることも紹介された。
そのままでは通信事業が減収になるのでは? という疑問に同氏は「売上は一時的に減少したが契約数が増えた。契約数を伸ばすことで収入が伸びる。そういう形でやっていきたい」と説明。
ワイモバイルの20GBプラン登場で、ソフトバンクブランドからユーザーが乗り換えたとしても、影響はないとの見方を示した。
ネットワーク設備、今後10年で2.2兆円
競合他社では、KDDIが今後10年で2兆円、5Gや6Gに投資すると表明する中、今回のプレゼンテーションにおいて、宮内氏は「今後10年間で2.2兆円投資する」と、KDDIを上回る投資額を示す。
これは全国各地で、デジタル化が進むことを見据えたもので、投資先は、次世代の通信ネットワーク設備。スマートシティや自動運転などの実現を目指すもので、通信が先端技術の要であり「これをベースにどう成長を描くのかが最も重要」と説明。
その一方で、たとえば成層圏から地上へ電波を発射してサービスエリアを作る「HAPS MOBILE」の開発も進め、途上国などへの売り込みを視野に入れる。
5G基地局、今後5年で20万局設置へ
2.2兆円の投資に関連し、CTOの宮川潤一氏は、急ピッチで5Gの基地局設備の敷設を進めていることを紹介。
5G時代でのデータ通信量はこれまでよりも遥かに大きなものになるとの見方を示し、そうしたニーズに応えるためには「計算してみると、10年で35万局が最低必要」とする。
そして、今後、5年間で20万の5G基地局を立ち上げる方針も明らかにされた。
調達するハードウェアは、従来よりも安価になったものの、「それだけの工事部隊が作りきれるかどうかという課題がある」と宮川氏。高い周波数だからこそ、これまでにない高速大容量を実現する5Gはまた、これまでにない規模の設備投資が必要となることもあらためて示された。
コロナ禍、バネに法人開拓
説明会でいの一番に紹介された法人事業については、新型コロナウイルス感染症の影響で、春先こそ不透明な状況だったものの、テレワーク(リモートワーク、在宅勤務)の伸長で、販売を手掛ける「Zoom」や「Slack」といったアプリの需要が急速に立ち上がった。
宮内氏は「デジタルコミュニケーション」「デジタルオートメーション」「デジタルマーケティング」を「デジタル三大革命」と呼んでいるとのことで、特にデジタルオートメーションが、今後拡がることで、あらゆる作業の自動化が進むと説明し、法人事業が成長する余地の大きさを示す。
また10月下旬に開催されたプライベートイベント「SoftBank World」を初めてオンラインで開催したことで、訪れた人がどのジャンルに興味を持ったか把握できるようになったと説明。
同社の営業スタッフがかつてよりも遥かに効率的な顧客へのアプローチが可能になり、SoftBank Worldのみならず、デジタルコミュニケーションの活用で、営業活動が大幅に増えたことも紹介された。
ドコモ子会社化に
NTT(持株)によるNTTドコモの子会社化について宮内氏は「ちょっと驚いた」と率直に驚きを表す。
その上で、同氏は歴史を振り返り「それぞれが独立する前提があった。本当に完全一体化していいのか。とりわけ東西が基幹線を持っている」と述べ、意見を提出する方針を示す。
宮内氏は「電柱、光ファイバーなど莫大な資産がある。そこが歪められるとえらいことになる。我々も活用させてもらっている。もともと国の資産だったわけです」ともコメント。
同氏の発言は、これから本格的に到来する5G/6G時代において、これまでよりも数多くの基地局が設置されるようになることを踏まえたもの。その基地局に繋がる固定回線(バックボーン回線)をNTT東西に頼らざるを得ない。現在は法律上、NTTドコモと、NTT東西の一体化は禁じられているが、将来的にドコモと東西の距離が接近することがあれば、懸念は現実のものになりかねない。
「単にそうですかと受け止めるだけではなく、今月中には電気通信事業者協会の会長もやっているが会員から結構な声があがっている。公正な競争を歪めることがないのか、懸念はないのか。話し合って議論して、ちゃんと公表したい」と異議を唱える方針を示した。