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テクノロジーを活用した台湾のコロナ対策とは、LINE DAY 2020基調講演
2020年9月10日 13:32
LINEは10日、「LINE DAY 2020」内で基調講演「New Normal×Technology」を開催した。LINE代表取締役 CWOの慎 ジュンホ氏と台湾デジタル担当大臣のオードリー・タン氏が会談し、LINEなどのテクノロジーを活用した台湾でのコロナ対策などが語られた。
台湾で行ったコロナ対策
コロナ禍の中でのテクノロジーは「早い、公平、楽しい」という3つの役割を担っていると話すのは、台湾デジタル担当大臣のオードリー・タン氏。武漢からの「コロナウイルスの危険性がある」というSNSの投稿を確認してすぐに台湾の医療機関が、武漢からのフライト搭乗者の健康状態を確認したという。
国民が不安を抱き始める前にテクノロジーが活用されるべきという思いがあり、毎日メディアで情報発信を行ってきた。また、質問を受ける相談ダイヤルを設置。これらは、台湾人の感染者がいなかった1月に実施した。
これらが実施できたのは、2003年のSARS流行以降、毎年訓練を実施してきたからできたことだという。
そして、マスクに関しては国民平等に行き渡らせるシステムを作ることが大切だと語る。台湾ではホワード・ウー氏とフィ・ウェンチァン氏が開発した医療用マスクマップを活用し、どの薬局にマスクがあるのかを共有できるようにした。また、薬剤師の勤務シフトと予定表の情報も公開し、これらの情報が30秒単位で更新されるようにした。
マスク配布には、国民99%が保有している健康保険証を活用。保険証をかざすことで、1回につき2週間分のマスク9枚(子供は10枚)を入手できる。マスクマップもリアルタイムで更新する。
台湾疾病管制署のLINEアカウントでは、GPS機能を利用しどの薬局にマスクがあるかをチャットボットで返信する。自分自身で探し出すことが難しい高齢者でも、LINEのチャットボットですぐに探し出せるという。
民間企業との協力
台湾では、ロックダウンではなく国境での隔離を主要なコロナ対策としている。台湾外から戻ってくる人には、必ず14日間の隔離生活を実施してもらったが、隔離する場所を高級ホテルなどが無償で提供してくれたという。また、隔離者には1日約33米ドル(約3500円)を支給し、隔離者に協力をお願いした。
また、IT企業ではHTCやAIチームDeepQがLINEと連携し、自宅隔離者のチャットボットを1カ月程度で開発。体調などのヒアリングと精神面のコントロールを行った。また質問をチャットボットが24時間答えることで、担当者の勤務時間の減少や隔離者のメンタルケアにつながってきたとコメントする。
これらに対し、LINE代表取締役 CWOの慎 ジュンホ氏は、「どのように問題意識を持ち、どのようにリソースを調達して、どのように解決案を出すか」という動きを迅速に台湾政府は行っていると分析する。
LINEでは、全国調査での健康調査や自治体と連携した「パーソナルケア」の取り組みを行ってきた。
民間企業だけでなく日頃から政府機関や自治体と連携しておくことでスピード感ある取り組みができるのではと感じると話す。
台湾ではインフォでミックに活用できるのではないかと感じる。デマ情報が配信される場面で、SNSであれば全体に公開されるため誰かがスパムとして通報できる。一方LINEではクローズドな空間であるため、デマがどこまで世間に広まっているかわからないという。
LINE台湾では、CSRの一環として、噂の話が本当かどうかファクトチェックができるという。怪しいURLが送られてきても、「LINE Fact Checker」アカウントに発言を転送することでチェックできるため、発言の自由と通信の秘密を守りながらファクトチェックができる。また、画像や動画などはトレンドマイクロと連携し、不正なものかどうかコンピューターが自動で解析する。
コミュニケーションツールのLINEがファクトチェックやセキュリティ企業と連携することは、インフォデミックを抑制する上でとても大切だという。
これらの取り組みはタイのLINEでも実施されており、官民協力してパンデミックとインフォデミックに戦っている。これらの取り組みは、今後のいいモデルケースになるだろうとコメントした。
LINEの慎 ジュンホ氏はコミュニケーションツールとして、正しい情報をどのように伝達するかが重要な課題だと考えているとし、LINE MEWSなどで迅速に正確な情報を伝えるなどで取り組んでいるとする。また、社会活動の変化で「コミュニケーション自体が分断される可能性」が出てきたため、どのように乗り越えるかもLINEの課題の一つだと認識している。
AIの活用
AIは人間をアシストするものだと考えている。大切なことはユーザーと価値観を一致させること、相互責任を果たすことだという。
例えば個人情報をなによりも大切にしたい場合は、AIも同じ考えを持つべきであるし、AIが判断したことの理由をユーザーに説明する義務がある。アクション1つ1つについて一貫した価値観で動いていることを証明する必要があるという考えを示した。
慎 ジュンホ氏は、AIはテクノロジーの観点から入っていくと、「人のため」「新しい価値」ではなく、社会問題を起こしたり、良いところより弊害を起こしやすい部分があると語る。LINEでは、ユーザーにとってどのように便利になるか、新しい価値を提供できるかを考えていかなければならないと考えている。
今後は、医療従事者の負担軽減のための研究開発を進めている。また、AIによる行政手続きの効率化を行い、より住みやすいスマートシティの構築を目指している。
この取組みに対し、オードリー・タン氏は、1つの問題に対して1つの解決法のみ提供するのではなく、ユーザーに選択肢を与えるなど、ユーザーに望まれる改革をすることが大切だという。そのうえでLINEがベンダーでなくプラットフォーマーになるという考えを貫けば、市民のより高い創造性引き出せるという。
アジアの企業として「New Normal」でどのようなビジョンを持てばいいか
LINEの慎 ジュンホ氏は、オンライン化で効率化を図っていく中で、効率化の頂点にあるのが「AI技術」の基盤だという考えを示した。特にコロナ禍のこれまでなかったような場面では、技術の重要なところで「AI技術」が先端的に重要化されるという。
現在「AI技術」は大手企業が主導権を握っており、大手企業が技術を独占してしまうことを危惧しているという。LINEでは、「AI技術」が公平的に使われるように、貢献していきたいとしている。
また、慎 ジュンホ氏はNew Normalな社会の中で、「新しい問題を自分の手で解決したい」・「解決に参加したい」・「貢献したい」という精神的な面も大事になると語る。
オードリー・タン氏は、テクノロジーが高齢者、定年退職した方を社会に戻す手伝いをするべきだと考えている。定年後の時間があるユーザーを技術がアシストすることで、より社会に貢献できる可能性があるとの考えを示した。
最後に慎 ジュンホ氏は、オードリー・タン氏との対談を終え、国は違えど「精神的な社会を迎えたい志」は同じであると感じたという。また、LINEは日本だけでなく台湾やタイでも社会インフラの一つとなっており、LINEを通じて多くの国で交流ができる材料の一つになればいいとコメントした。