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「楽天市場のシャオミ公式店」はホンモノだった、楽天と運営元に聞く

 3月、楽天市場のシャオミ(Xiaomi)オフィシャルストアがオープンした。15日に予定されていたグランドオープンは商品の入荷が遅れ、延期となったとのことだが、これまでAmazonだけで販売されてきたシャオミのスマートフォン「Mi Note 10」が取り扱われるなど、ユーザーにとってはシャオミ製品を、これまで以上に入手しやすい環境が整えられたことになる。

 一方、同サイトについては、シャオミの公式ではないのでは? と指摘するユーザーの声もSNS上で見受けられる。またサイト内には「楽天市場から指定を受けた委託先である株式会社Dreamworksが、当店の店舗運営業務を行います」とあり、ユーザーからすると、なにやら店舗運営の構造がわかりにくい恰好だ。

楽天市場のシャオミオフィシャルストア

 そこで本誌では、シャオミの広報担当者、DreamWorks、そして楽天に質問。その結果、さまざまな指摘や運営側のミスはあれど、シャオミオフィシャルストアそのものについては、その名の通り“公式”ということがわかった。一方、注文したユーザーからは予想外の商品が届き問題になったことも判明した。

「シャオミと楽天が話をした」

 楽天広報部によれば「シャオミが楽天市場へ公式ショップを出店する上で、楽天とシャオミ(本国側)が話をした」という。そして、DreamWorks社が楽天と出店契約を交わし、公式ストアとして運営することになった。

 まさにサイトの記述通りの内容だ。どうしてそういった契約形態になっているのだろうか。ヒントが、楽天市場のグローバル版サイトにあった。

【お詫びと訂正 2020/3/19】
 楽天広報のコメントとして「楽天とシャオミが契約した」としておりましたが、楽天・シャオミ間は交渉で、契約主体はDreamWorks社との関係が正しいとのことです。お詫びして訂正いたします。

海外事業者はパートナーと契約

 楽天市場のグローバル版からは、日本版の楽天市場へ出店を考える海外事業者に向けた案内がある。そこには「日本語能力」「日本の法律へ準拠した商品の販売」「出店時の経費シミュレーション」などが紹介されており、詳細は別途、問い合わせるよう記載されている。

 そうした記述のなかには「米国か日本に法人がない場合、楽天が承認したサービスパートナーと契約する必要がある」という表現がある。つまり、海外メーカーが楽天に出店する際には、直営ではなく運営代理を担う企業が存在することが必須となっているようだ。

 事実、今回のシャオミだけではなく、他のスマートフォンメーカーの楽天市場店でも同様の形態が見受けられる。たとえばファーウェイの楽天市場店も、ファーウェイ日本法人ではなく、他の企業が運営を担っている。スマホ以外の分野で、海外メーカーの文具などを扱う“公式ショップ”でも同様の形になっているところもあった。

 そしてDreamWorksも、シャオミだけではなく、OPPOの楽天市場店の運営代理も担当している。

 ちなみにSIMフリースマホを販売する「goo Simseller」の楽天市場店はNTTレゾナント自身が運営する。

DreamWorksは日本へ進出する企業をサポートする存在

 大阪に拠点を置くDreamWorksは、海外から日本市場へ進出しようとする企業に対し、オンラインショップの運営サービスを展開している。同社では「越境ECプラットフォームを目指す」としており、いくつかの楽天市場店(筆者が確認したものは10店舗程度)を運営している。

 その中でも大手企業と言えるものが、先述したOPPO楽天市場店であり、直近ではシャオミ楽天市場店ということになる。

 なぜそうした中国メーカー自身が自社内の部署で運営しないのかと疑問に思われるかもしれない。理由のひとつが先に述べた楽天側の方針だろう。だが、現実的な課題としても、海外企業にとって日本でECサイトを運営しようとすれば、日本のユーザーにあわせたノウハウを獲得する必要がある。

 そのノウハウの獲得、あるいは実運用にかかるコストを自社内ではなく外部委託でまかなう、という発想は、サイト運営だけではなくコールセンターなどさまざまなジャンルを含めれば、日本企業でも決して珍しい話ではないだろう。そして、楽天市場におけるサイト運営にかかわるノウハウや、実稼働にかかる部分を受託事業として提供する企業のひとつがDreamWorksということになる。

シャオミとの関係

 DreamWorksの林雅志社長によれば、今回、シャオミの本国側と交渉した上で受託契約に至ったという。林氏は「他国へ進出する際、現地ユーザーに向けて、現地の通販モールを通じて提供しようとしても運営のスキルがない、というのはよくある話です。いきなり楽天市場店を運営できるかと言えば難しいところもある。得意なところがあれば、そこに任せるという形」と語る。

 日本にあるシャオミの拠点がどの程度の体制か、参入から3か月程度した現在、その全容は明らかにされていない。ただ、2019年12月の「Mi Note 10」発表会では、同機種について日本語で説明できるスタッフがおらず、日本国内の体制が未成熟であることをうかがわせた。そうした状況から3カ月足らずでスピーディに楽天市場内で店舗運営する体制を整えるなら、外部への委託は、有力な選択肢のひとつに思える。

 一方、シャオミのオフィシャルストアには、運営代行者だけではなく販売元として香港に拠点を置くという企業「HONG KONG SPEED-TRADE NETWORK TECHNOLOGY(スピードトレード)」の名前も記載されている。この企業は、林社長によればDreamWorksの香港法人だ。聞けばなるほどと思うが、こうした記述はユーザーにとってはわかりづらさを感じさせる要因のひとつだろう。

4者の関係は一般ユーザーにわかりづらい

 楽天広報の説明と林氏の説明をあわせると、シャオミが楽天市場出店に向けてまず楽天と交渉。そしてDreamWorksがシャオミと香港において契約を交わし、ショップが開設されることになった。DreamWorksではシャオミの日本拠点ともコミュニケーションしていると林氏は説明し、「一部で『日本のシャオミが楽天のオフィシャルストアを知らない』としたそうだが、シャオミ側に確認したところ、そうした発言はしていないと聞いている」とした。

 ちなみにシャオミの日本における広報担当者に質問中だが、本国からまだ回答がないとのこと。

配送された製品、トラブルはなぜ起きた

 シャオミの楽天市場店自体は、DreamWorksや楽天の説明を踏まえると、確かに公式なものと言える。

 しかしユーザーからは、国内版製品が存在するにも関わらず、海外版が送付されたり、無線通信を使う製品ながら技適マークがないといったものが届いた、という報告が挙がっている。

 これらの報告が事実とすれば、日本での通販サイトの運営ノウハウがあるとうたうDreamWorksという存在がありながら、なぜこんなトラブルが起きたのか。

 DreamWorksの林社長によれば、原因は人為的なミス。商品が倉庫に届いてない状態でプレオープンしてしまい、販売中という状況になってしまっていた。さらに入荷した商品もたとえば日本語版の取り扱い説明書が入っていると思っていたものが、実際には入っていなかった。林氏の説明を踏まえると、シャオミとの初めての取引による焦りが生んだ運営上のミスのようで、同氏は「誤った商品の掲載は3月16日付で取り下げた。入荷体制の見直しと再発防止に努力します」とした。

 なお、サポート体制として1週間以内に理由なしで返品できるほか、15日以内であれば交換できるという。今回もそうした対応を進めるとのことで、19日からユーザーへのフォローを始めた。

 ちなみに楽天によれば、一般論として、技適マークがついていない商品自体、楽天市場で販売することは規約上問題がない。しかし、そうした商品を国内で利用すると法令違反になる可能性がある、という点は、ユーザーがきちんと認識できるよう、店舗側がわかりやすいコミュニケーションをすることを必須としている。もしわかりやすい案内がなければ、楽天の規約違反になる。楽天広報では「海外企業の公式ショップの出店が今、増えている。弊社としてもユーザーが法律違反することは避けるべきと考えている」と語り、楽天市場の品質という面でも運営に注力する方針だという。

トラブルのフォローと混乱避ける仕組みを

 ネット上での指摘が挙がった直後から取材を進め、いまだシャオミ自身からのコメントは得られていないが、楽天とDreamWorksの説明からすると今回発生したのは、問題がある商品をユーザーへ渡したというトラブルだ。そのなかで、楽天市場と海外企業の関係性のわかりづらさがさらなる混乱を招いたようだ。ただ楽天側の方針は、いわばグローバル企業のローカライズを促す内容とも言える。

 いくつかの要因が重なって、「シャオミオフィシャルストア」へ疑いのまなざしが注がれたことになるが、DreamWorksには引き続きトラブルに遭遇したユーザーへの真摯な対応と、今後の再発防止に期待したい。また楽天には、メーカー直販のような「公式ストア」について、たとえばいくつかのSNSで採用されている“公式”を示すバッジの導入のように、同様の混乱が起きづらくなるような仕組みの導入など、なんらかの改善が図られると嬉しいところだ。