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もし本当に「Yahoo!とLINEが経営統合」したらどうなる?――クロサカタツヤ氏に聞く

 13日夜、「ヤフー(Yahoo!)とLINEが経営統合する」と日経新聞が報じた。もし本当に経営統合するなら、なぜ、このタイミングで、どんな効果を狙ってのことか。

 総務省の有識者会合メンバーなどを務め、モバイル業界の動向に詳しい株式会社 企(くわだて)代表取締役のクロサカタツヤ氏に聞いた。

経営統合する、その理由は?

 現時点では両者とも経営統合の事実を認めておらず、また規制当局の承諾を得る必要もあるため、あくまで「仮に統合するとしたら」という話ですが、コンテンツに強いヤフーと、コミュニケーションに強いLINEで、両者はもともと棲み分けはできており、シナジーが期待されるところです。

 一方で、このところ信用スコアやコード決済で対決する局面が増えていました。どちらも日本市場を主戦場としている以上、無駄な競争をするよりは一本化で相互補完により寡占を狙うべく、大同団結を目指したのではないかと思います。

背景にあるものは?

 ネット広告(運用型広告)が広告不正(アドフラウド)やプライバシー意識の高まりで成長鈍化しつつある中、ヤフーは新たなビジネスモデルと成長機会を求めていたはずです。

 今後、AIによる予測を前提とした各種サービスの最適化が付加価値の源泉となっていくなか、コミュニケーションサービスが生み出した大量のデータを保有するLINEは、ヤフーにとって魅力的なデータホルダーに見えたのではないでしょうか。

 反対にLINEの立場からすれば、成長余地や収益性に課題があり、「今こそ売り時」と考えてもおかしくない状況です。

一般ユーザーにはどんな影響?

 当面は独立した状態で進むと思いますが、おそらく現在競争関係にある信用スコアやコード決済は、早々に相互運用から統合に向かうのではないでしょうか。

 また両者が組織として一元化することで獲得できるデータを使い、LINE Clova(クローバ)などを用いた新しいAIベースのコンシューマーサービス(スマートハウス、スマートテレビ、ネット通販など)を開発すると考えられます。

対GAFAとしての効果は?

 これまで日本には「既存サービスをネットで縮小再生産した」事業者は多かったものの、ネットによって社会構造を変革するような事業者はほとんどいませんでした。両者にはそうした潜在能力があり、日本社会のデジタルトランスフォーメーションの大きな推進力になるかもしれません。

 ただ、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの米国IT大手)もすでに日本市場へのカスタマイズを着実に進めており、GAFAのシェアを奪回するようなことはこの統合だけでは困難です。仮に経営統合が実現したとしても、さらなる大型の追加投資を重ね、事業開発をスピードアップさせることが急務でしょう。