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総務省「モバイル研究会」第18回、分離プラン時代のSIMロックのあり方などを議論

 総務省は9月11日、「モバイル市場の競争環境に関する研究会」(モバイル研究会)の第18回を開催した。

 先般の電気通信事業法改正や関係省令の整備などにあたっては、これまでにモバイル研究会で取り上げられてきた「通信料金と端末代金の分離」「通信契約を前提とした端末割引の規制」「解約金の上限設定などによる期間拘束の是正」といった内容が盛り込まれた。

 改正電気通信事業法の施行を10月に控え、これらの議論が一段落したタイミングである一方、新制度にあわせて各社が発表したプランやサービスを踏まえた評価や、商用サービスの開始が近付く5G時代に向けた制度整備などが次のテーマとなる。

 第18回の議題は、「通信料金と端末代金の分離と端末購入プログラムについて」と「5G時代のネットワーク提供に係る課題などについて」の2点。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、テレコムサービス協会 MVNO委員会に対してヒアリングを行った後、構成員による討議が行われた。

 会合の冒頭では、2年ぶりの就任となった高市早苗総務相が、モバイル市場の競争促進のためにはより一層の取り組みの強化が必要だとコメント。特に、SIMロック解除に関するルールの見直しは早急に進める必要があるとした。

新たな端末購入プログラムやSIMロックについて

 前半では、法改正に向けて各社が発表した新たな端末購入プログラムの是非や、その中でキャリアによる端末の単体販売が選択肢として表に出てきたことに伴うSIMロック関連の各社の対応が問われた。

NTTドコモ

 前提として、10月に向けて出揃った各社の端末購入プログラムのうち、NTTドコモの「スマホおかえしプログラム」のみ、端末単体での購入者には提供しておらず、端末の購入時点ではドコモ回線を利用しているユーザー向けのサービスであるという違いがある。

 SIMロックに関しては、割賦未払いでの端末の持ち逃げ対策や在庫端末の盗難対策といった観点から、基本はSIMロックを実施し、必要に応じて解除を行うという姿勢。

 回線契約と結び付かない端末単体での購入者に対しては、割賦販売を行わず一括のみの対応としているため、「他社回線で使うために端末だけを買ったが、100日間はSIMロックを解除できず使えない」といったケースは発生しない運用となっている。

KDDI

 KDDIも同様に、割賦販売時のリスクなどを考慮すると最初からSIMロックをかけずに販売するという対応は考えにくいとの見解を示した。

 傍聴者向けの資料では非公開となっていたが、構成員に対して割賦販売時の初回請求時の未払い発生率を開示し、慎重な対応をとる理由を説明。参考までに、資料に目を通した北構成員からは思いのほか高い数値であったことを伺わせる反応があった。

 総務省側が示したSIMロック解除ルールの見直し方針には、割賦販売であっても、過去に購入履歴があって支払いに問題がなかったユーザーや通信契約を解約するユーザーに対しては100日以内であってもSIMロック解除に応じるべきではないかという内容が含まれている。これに対しては、利用状況を問わずキャリアが一定のリスクを負うことから、一律にSIMロック解除を行うのではなく未払いや詐取防止の取り組みを含めて検討すべきだと反論する。

ソフトバンク

 前回(第17回)のモバイル研究会はソフトバンクの「半額サポート+」が発表された翌々日に行われ、同サービスに関する意見があった。

 前回指摘された点について、必要な部分は是正していくとあらためて説明。ただし、同サービスは改正電気通信事業法やSIMロックガイドラインなどの現行法規制との整合性を確認した上で設計されたものであり、ルール内での創意工夫や企業努力に対して“潜脱行為”と解釈されては一企業として不利益を被ると語気を強める。

 SIMロック解除に関しては、端末代金の完済を待たずに購入から101日間以降なら解除できるルールとなっている現状を、ユーザーの利便性を重視して既に事業者が少なからずリスクを負っている状況だと説明。一方で他社ユーザーが半額サポート+を事実上利用しにくい状況となっていることには一定の理解を示し、100日間待たずに利用できる何らかの方法を検討していくとした。

構成員の意見

 構成員からの意見や質問はSIMロック関連に集中。「高額商品の割賦販売でも、携帯電話のSIMロックに相当するような抑止手段がない分野はある」(大橋氏)、「キャリアのリスク回避のためのSIMロックなのであれば、(店頭での)解除手数料という負担をユーザーに強いるのはおかしいのではないか」(長田氏)といった意見が上がった。

 SIMロック解除に一律で応じる、あるいは最初からSIMロックをかけないという対応の可能性を問う質問に対しては、ヒアリングの回答内容に補足する形で負担の大きさを再度説明。ソフトバンクは、「SIMロックがかかっている端末ですら、たとえばA社の人気機種では過去にかなりの額の被害が出ている。許容できるリスクではない」とする。

5G時代のMVNOやeSIMについて

 「5G時代のネットワーク提供に係る課題などについて」が議題となる後半の会議では、楽天モバイルとテレコムサービス協会 MVNO委員会に対してヒアリングが行われた。

 具体的には、MVNOへの5Gの円滑な提供、MNOとMVNOの競争環境の整備、eSIMの普及に向けた対応の3点が両者に対するヒアリング項目となっている。

楽天モバイル

 MNO参入を控える楽天モバイルの説明は、前半の議題(MNO3社に対するヒアリング内容)に近い内容が大半を占めた。

 はじめに同社の方向性として、「今後の携帯事業のメインはMNOにシフト」(原文ママ)、MVNOサービスの提供や新規受付も継続するが、自社回線への移行を推奨していくと説明。5Gサービスの開始時期は2020年6月を予定する。

 楽天モバイルの主張としては、SIMロックの禁止、販売済のSIMロック端末の無条件解除、キャリアが販売する端末を各社主要バンドに対応させること、MNP予約番号の24時間発行、MNP手数料の無償化(全利用者が負担)などを提案。

 eSIMに関する取り組みとして、9月に発表した独自端末「Rakuten mini」を紹介。今後も継続的にeSIM対応端末を提供していくとアピールした。

MVNO委員会

 前回までのモバイル研究会では、MNO各社が5G商用サービス開始時に早い段階でMVNOへの提供も行う方針であることが明らかになった。

 MVNO事業者などから構成されるMVNO委員会は、早期の5G提供を歓迎するとともに、実際に5GのMVNOサービスを提供するには半年程度の検討・準備期間が必要だとして、提供条件や技術仕様などの情報の早期提供を望む。

 また、5Gにおける接続料の算定方法にも言及。4Gの設備を活用するノンスタンドアローン(NSA)方式となる初期段階では現行の接続点や課金方式を踏襲することに一定の合理性があるとした。

 将来的にスタンドアローン(SA)方式に移行する際には、従来の相互接続点(POI)を介した水平分業型に限らず、APIによる垂直分業やMVNO自らがネットワークスライスを運用するケースも想定され、4GやNSAまでとは別の考え方が必要になるのではないかという見解を示した。

 eSIMの普及に向けた課題のひとつとして、現行の法制度では音声通話が可能な携帯電話回線の契約を行うには、非対面販売の場合はSIMカードや端末を転送不要郵便物、本人限定受取郵便などで送ることも本人確認のプロセスの一部となっている。

 このため、現状ではオンラインで手続きが完了するeSIMサービスとして提供できるのはデータ通信のみ。より需要の高い音声SIMの提供を実現するため、eKYCのようなオンラインで完結する本人確認方法を認めるよう要望した。