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「ハリー・ポッター:魔法同盟」がついに日本でも登場

3つのゲームの柱、そして開発者が語る想いとは

 米ナイアンティックとワーナー・ブラザース傘下のWB Games San Franciscoは、位置情報とARを組み合わせたスマートフォン向けゲーム「ハリー・ポッター:魔法同盟」について、日本市場向けに提供を開始した。

日本語版のロゴ
PORTKEY GAMES, WIZARDING WORLD, HARRY POTTER: WIZARDS UNITE, characters, names and related indicia © and ™ Warner Bros. Entertainment Inc. Publishing Rights © J.K. Rowling. ©Niantic, Inc. All Rights Reserved (s19)

 2日にはローンチイベントが開催され、ワーナー・ブラザースやナイアンティックの関係者がその想いを披露。質疑応答ではリアルイベントについても質問したので、本記事後半でお届けする。

「死の秘宝」の後の時代

 「ハリー・ポッター:魔法同盟」は、小説、そして映画として世界中で高い人気を得たハリーポッターシリーズを題材にするゲーム。時代設定としては、2010年~2011年に映画化された「ハリー・ポッターと死の秘宝」の後にあたる。

PORTKEY GAMES, WIZARDING WORLD, HARRY POTTER: WIZARDS UNITE, characters, names and related indicia © and ™ Warner Bros. Entertainment Inc. Publishing Rights © J.K. Rowling. ©Niantic, Inc. All Rights Reserved (s19)

 プレイヤーは、マグル(非魔法族)の世界で、魔法生物や魔法界のものなど「魔法の痕跡」の目撃情報が相次いで報告されたことを受けて、魔法界を救うため、「機密保持法特別部隊」に参加する。

ゲームは3本柱でプレイ、街を巡ってアイテムを入手、砦で戦う

 魔法使いとなったプレイヤーは、現実世界の地図に、ハリー・ポッターの世界が重なったマップ上でプレイする。スマートフォンに表示されるマップには、いくつかの場所に「宿屋」「温室」「砦」というスポットが存在している。

【マップと魔法の痕跡とのエンカウント】

 またそこかしこに何らかのアイテムらしきものが落ちており、タップすると魔法界の生き物と、魔法で対峙することになる。このアイテムのようなものが「魔法の痕跡」だ。マップ上には、魔法の痕跡以外にも、魔法薬の材料になるようなアイテムが落ちていることもある。

宿屋

 宿屋では、食べ物が調達できる。食べ物を得ることで、呪文を繰り出すエネルギーを補給できる。さらに闇検知器(ダークディテクター)を設置すれば、周囲にある魔法の痕跡を発見しやすくなる。ナイアンティックのゲームでたとえると、Pokémon GOでのルアーモジュールに似た仕掛けだ。闇検知器は、最大3台まで設置できる。

温室

 温室では、魔法を強化する薬の材料を得られる。薬はフィールド上でも得られることがあり、調合することで、プレイに役立つ効果を発揮できる。

 砦では、友人たちと最大5人まで同時にバトルできる。対戦相手は敵対する魔法使い(コンピューター)で、いわゆるレイドバトルに近い。ただ、事前のプレイでは1対1のプレイとなって、複数のプレイヤーが手分けして敵を倒すという格好だった。

ランドマークも

 現実世界で大型のスタジアムなどがある場所は、ゲーム中、旗が立てられ、特定のゲームができる。

天気も影響

 現実世界の天気もゲームに影響する。かけられる魔法や、調合できる薬の内容に影響するという。

 こうした現実世界との連動は、「ハリー・ポッター:魔法同盟」における柱のひとつと位置づけられている。

声優は……

 ちなみにゲーム中では、声優による音声も収録されており、日本語版は映画版と同じ声優が担当。英語版については、出演者本人ではなくワーナー側公認のボイスアクターの音声が収録されている。

セルフィーでIDを作成

 ふたつめの柱は「魔法使いの潜在能力を悟る」というもの。開発陣は「これが一番大切」と語る位置づけで、セルフィー(自撮り)で、「機密保持法特別部隊」のIDカードを作る機能だ。

 IDでは、自分の顔写真をもとに、いくつかの装飾を施す。いかにも魔法使いらしい先の尖った幅の広い帽子や、ミステリアスな印象を与える眼鏡など、アイテムはさまざま。

 単なるセルフィーとフィルター(カスタマイズ)だけではなく、プレイヤーは劇中の魔法学校であるホグワーツの卒業生であり、いわば“プロの魔法使い”として、魔法界の危機に立ち向かう。そうした自身を表わすアイテム、機能という形だ。

3つの職業

 IDは、これまでのナイアンティックのゲームでも、アイテム、要素の多寡はあれど、類似した機能はあった。

 だが、「ハリー・ポッター:魔法同盟」ではプレイヤーが選べる要素として、これまでのナイアンティックのゲームにはなかったものが採用された。それは職業だ。

 「ハリー・ポッター:魔法同盟」では、闇祓い、魔法動物学者、そして教授という3つの職が用意された。それぞれのスキルツリーは異なり、他の人と異なる属性を身につけられる。これは長きにわたって本作を楽しめるようになる、“やりこみ要素”としての役割もある。

 後述する「魔法使いチャレンジ」(Wizarding challenges)では、異なる職業の人たちとともに挑むことで。チャレンジをクリアしやすくなる、といった場面もあるようだ。

魔法の痕跡

 プレイしはじめると、マップ上には何らかのアイテムが落ちている。先述したように、そのアイテムは「魔法の痕跡」であり、タップすると一人称視点に切り替わり、プレイヤーの行く手を遮る魔法生物など、何者かが現れる。

【主役キャラの1人、ロンを助けようとチャレンジする場面】

 プレイヤーは、画面上に、線で記された魔法をなぞって呪文をかける。ナイアンティックの代表作である「Ingress」における“グリフ”と呼ばれる一筆書きのミニゲームに近い操作感であり、線をなぞるスピードと正確さが瞬時に判定され、魔法の威力が決まる。

 倒していくと経験値が貯まり、プレイヤーはレベルアップしていく。

【ハリーが襲われているところを救出へ】
【ハーマイオニーの救出も】

登録簿でコレクション

 魔法の痕跡をきっかけに倒した魔法生物たちは、「登録簿」に記録される。まるてPokémon GOにおけるポケモン図鑑のような機能だが、こちらは登録簿への記録が増えるとレベルアップし、もらえる報酬も増えていく。

マップ上のスポット

 マップ上には、先述したようにさまざまなスポットがある。これは、ナイアンティックがユーザーとともに作り上げてきたスポット情報をもとにしたもの。

 スポットでは、呪文の力を養ったり、バトルで負傷した際には治癒したりといった効果を得られる。温室のような場所を巡ることで、魔法薬を調合するための材料も揃えられないという形になっており、自然と街中を巡りたくなる仕掛けだ。

 スポットの数、場所については、Ingress、Pokémon GOといった既存のナイアンティックのゲームにおけるスポットとまったく同じではなく、ある程度、「ハリー・ポッター:魔法同盟」ではカスタマイズが施されている。

 たとえばIngressでは都市部、特に東京の中心部ではポータルと呼ばれるスポットが密集している場所がある。こうした場所は「ハリー・ポッター:魔法同盟」ではある程度、バランスを取った形になっているという。バランスという意味では、郊外、地方でも十分楽しめる形に仕上げられているという。

ソフトバンクがスポンサーに

 2日の発表会では、ワーナー・ブラザース ジャパン合同会社の高橋雅美社長兼日本代表は、今後、パートナーとの提携もあるとコメント。IngressやPokémon GOと同じく、スポンサードされたスポットが今後登場する形になり、その第一弾として、ソフトバンクがオフィシャルパートナーになる。

砦で「魔法使いチャレンジ」

 スポットのひとつである砦(Fortress)では、友人と最大5人まで同時に「魔法使いチャレンジ」へ挑める。これは、死喰い人(デスイーター)や、吸魂鬼(ディメンター)といった強敵と戦う、リアルタイムマルチプレイバトルだ。

【魔法使いチャレンジその1】

 戦う際には、「魔法の痕跡」のときと同じく魔法をなぞって呪文を唱えていったり、魔法薬(ポーション)で自らの力を強化したりして、勝利を目指す。勝利すれば、よりレアな報酬を得られる。

【魔法使いチャレンジその2】

VRで魔法世界へアクセスできる「ポートキー」

 劇中でも、移動に使う魔法の道具として登場した「ポートキー」。今回、プレス向けに披露された場面ではブーツの形をしたポートキーを使える形になっていた。

 ポートキーを使うと、VRで、魔法界へアクセスできる。魔法界にあるダイアゴン横町のボーガン&バークスといった店舗を訪れたり、オリバンダンの杖の店、ハグリッドの小屋、ホグワーツの先生の部屋に入れたりする。

 VRで360度、魔法界の特徴的な場所が描かれるとのことで、ファンにとっては「ハリー・ポッター」の世界をこの上なく体験できるコンテンツだが、ゲームをプレイする上でもさまざまな貴重なアイテムを入手できる機会になる。

 ポートキーは5kmほど歩けばアンロックされるとのことで、現実世界で移動することを促す仕掛けでもある。

大災厄の謎に挑みコミュニティで繋がる

 魔法界の危機に立ち向かうという本作では、今後、謎に包まれた場面に出くわすことがある。危機をもたらす「大災厄」の裏で、何が起きたのか解明していくが、しかしプレイヤーが出くわす謎とその答えは、必ずしも時系列順に見つかるわけではないという。

 他のプレイヤーが、自分と異なる物語の断片を見つけることがある。これは、プレイヤー間のコミュニティで付き合わせなければわからないことで、他のプレイヤーと力をあわせてプレイすることを促進する仕掛けでもある。

 ナイアンティックが手がけるゲームの大きな特徴は、オンラインそして現実で人々を繋げる、つまりコミュニティを生み出すという点にある。

 だが、これまではどちらかといえば、ユーザー同士の自然発生的な取り組みに委ねてきた。最近になってようやくIngressの公式コミュニティ(といっても掲示板のような形でシンプルなものだ)が設立されたが、「ハリー・ポッター:魔法同盟」では先述した「砦」そして「大災厄の謎」という点が、そうしたコミュニティ形成の仕掛けと言える。

開発者が語る「ハリー・ポッター:魔法同盟」

 ナイアンティック側で、開発をリードしたエグゼクティブプロデューサーのジョン・ヴィフィアン氏は、もともとナイアンティックが、創設者のジョン・ハンケ氏自身の子供がゲームに夢中になり、自宅にいることが多いことをきっかけに、人々を外へ動かすという理念のもとに設立されたことを紹介。ナイアンティックでは、現実を探検する、そして体を動かし、他の人たちを交流するという価値をもたらしてきたと語る。

ジョン・ヴィフィアン氏

 ヴィフィアン氏は「6年ほど前、とあるプレイヤーから『2ブロック先に郵便局があるなんて気づいていなかった。ゲームをプレイしてようやく知った』と言ってくれた。これは本当に嬉しかった」と振り返る。このプレイヤーは、おそらくIngressのエージェントであり、ナイアンティックがもたらしてきた体験を端的に示すコメントだ。

 一方、ワーナー・ブラザース側となる、WB Gamesのジョナサン・ナイト副社長兼スタジオヘッドは、両社の初会合について「あんなにうまく進んだことはなかった」と当初から両社間で意気投合してきた様子を紹介。

 魔法同盟の開発にあたっては、WB側でゲームデザイン、ユーザー体験、アートワーク、サウンドデザインを手がけてきた。

 一方、ナイアンティックはARに関する部分を引き受けたようで、ナイト氏はナイアンティックについて「プラットフォームとしてこのカテゴリーではトップ。たとえばカメラの実装は次世代レベル。リアルワールドの環境を計測する技術、3D、画像もハイレベルで優れている」と評価。

ジョナサン・ナイト氏

 高度なAR技術と、世界観を忠実に再現するデザイン性を組み合わせることで「リアルな世界と魔法使いの世界の境界が薄い。それを実現する。ファンは、魔法使いだという意識がある。そういった皆さんが世界の主人公になれる」とナイト氏。プレイヤー自身が魔法使いという体験をとことん楽しめる環境を提供することが「ハリーポッター魔法同盟のエッセンス」とアピールする。

 そんなWB Gamesでは「ポートキーゲームス」という新たなゲームレーベルを設置したという。ナイト氏は「ポートキーゲームスで手がける作品は、全てプレイヤーが主人公であり、JKローリングの魔法の世界がベースになる」と説明。これは魔法同盟だけではなく、引き続き新たな作品作りに取りかかることを示唆するコメントと言えそう。

 グーグルから飛び出し、位置情報とARを組み合わせたナイアンティックは、3年前の2016年夏、日本発の「ポケットモンスター」とのタッグによって、世界的なヒットを生み出した。そして今回、長きにわたり映画界をリードしてきたワーナー・ブラザースとともに開発された「ハリー・ポッター:魔法同盟」は、熱いファンを心から楽しませようとする仕上がりとなったことは間違いない。

 あえてシンプルな仕様でローンチすることを考えなかったのか? という筆者の問いかけに、ナイト氏は「ゲームの構造が(ステップを踏む流れで体験するため)段階的。当初はシンプルで、プレイするうちにいろんな機能が使えるようになる。我々も、ファンがいろんなゲームを貪欲に楽しみたいということに気づいた。だからこそ、ローンチの段階でプレイできる要素をたっぷり用意することは重要だったし、これからもどんどん新しい機能を追加していきたい(So it was important to us to have a lot to do at launch and there's more to come.)」とコメントし、長く楽しめるコンテンツへ育てていく姿勢を見せた。

リアルイベントは「数日以内に」

 これまでナイアンティックのゲームでは、Ingressにおける「アノマリー」「ミッションデー」「ファーストサタデー」、Pokémon GOにおける「コミュニティデイ」や横浜やシカゴなど世界各地での大規模なイベントが開催されてきた。果たして「ハリー・ポッター:魔法同盟」ではどうなるのか。

土合氏(左)と川島氏(右)

 ナイアンティックの川島優志氏は「(記者に対して)所属は決めましたか? グリフィンドール? スリザリン? (記者がまだ決めていないと回答すると)所属はとても大事です。ナイアンティックは、確かにリアルイベントを大事に考えています。非常に近い、時期に発表できるんじゃないかなと思っています……具体的なところは、数日、お待ちいただければ発表されるかなと思います」と説明。

 ワーナー・ブラザースの担当者である土合朋宏氏も「絶対おおって言うと思います」と述べ、驚きをもたらすことを予告した。