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アップルが「iOS 13」を発表、iPad向けは「iPadOS」に
iTunesアプリが廃止、Apple Music/Apple TV/Podcasts」の3つへ
2019年6月4日 08:55
アップルはアメリカのカリフォルニア州サンノゼで毎年恒例のWWDCを開催し、その基調講演でiOS 13やmacOS Catalina(10.15)など今年秋に登場する新しいOSや製品を発表した。
WWDCはアップル自身が毎年6月頭前後に開催している、開発者向けのカンファレンスイベント。開発者向けの数百のセッションが提供され、世界中から抽選で選ばれたアプリ開発者などが参加しているが、初日最初の基調講演では次期OSが発表されるのが恒例になっていて、新ハードウェア(主にプロ向け製品)が発表されることもある。
ここでは基調講演のストリーミング映像などから、今回発表されたモバイル関連のトピックスをピックアップしてレポートする。
iOS 13、7月にパブリックベータ
モバイル関連ではiOS 13の概要が発表された。正式版の登場は今秋予定だが、パブリックベータが7月に提供される予定。
ちなみにベータ版は主にアプリ開発者が秋以降の新OS向けのアプリを先取りで開発するために提供されるもので、アプリ互換性やOS自体の安定性(特に初期リリースは不安定なことが多い)に問題があるため、一般ユーザー向けのものとはなっていない。
iOS 13の対応機種
iOS 13はiPhone SE/6s以降のiPhoneと第7世代以降のiPod touch向けに提供される。iOS 12に比べると、iPhone 5s/6のサポートが打ち切られた。アップルではiPhoneのシステムメモリ容量を非公表としているが、筆者が過去ベンチマークアプリで調べた情報をもとにすると、今回の対応は1GBのモデルが切り捨てられ、2GB以上のモデルのみの対応と言える。
iPad OSが登場へ(詳細は後述)
なお、この世代からiPad向けのiOSは「iPadOS」(現状ではナンバリングなし)となり、基調講演でも別々のものとして紹介された。
iPadOS固有の新機能については後述する。iPadOSはiPad Air 2/mini 4以降のモデルに提供される。iOS 12に比べると、やはり1GBメモリモデルが切り捨てられ、iPad Air(初代)やiPad mini 2/3がサポートされなくなっている。
iOS 13、パフォーマンスを向上
iOS 13では各種パフォーマンスが大幅に向上する。iOS 12比でFace IDによるアンロックは最大30%高速化するという。
アプリのアップデート時のパッケージ方法が新しくなり、アップデート時のサイズも最大60%小さくなる。さらにアプリ起動が最大で2倍高速になるという。
ダークモードも
iOS 13では新機能として「Dark Mode」(ダークモード)が追加される。これは画面上に表示されるUIを黒ベースの暗い色調にするというもの。
暗い場所で利用するときに目への負担を軽減する効果などがある。また、有機ELを採用するiPhone X/XSシリーズでは消費電力低減の効果もある。
すでにiOSアプリでもTwitterの公式クライアントのように、個別にダークモードをサポートしているアプリがあるが、iOS自体がダークモードをサポートすることで、開発者がダークモード対応アプリを開発しやすくなり、ユーザーは対応アプリのダークモードへの切り替えを一括で行なえるようになる。
ちなみにMacではダークモードは2018年リリースのmacOS Mojaveが導入済み。ダークモードへの切り替えはコントロールセンターなどで手動でできるほか、時間帯設定も行なえる。
Sign in with Apple
プライバシーとセキュリティ関連機能も強化される。ユニークなところでは、さまざまなオンラインサービスが導入している、FacebookやGoogleのアカウントを使ってサインインする「Sign in with Facebook」や「Sign in with Google」といった機能、これのアップル版が提供される。
こちらは単にApple IDでサインインできるというだけでなく、オンラインサービス側に個人情報を提供せず、メールアドレスですらユーザー×サービスごとに独自のランダムなメールアドレスを作成することも可能になっている。
HomeKitにホームカメラ機能
HomeKitではホームカメラ機能が拡張され、iCloud上に映像を保存する機能も提供される。
ホームカメラからの映像はiCloud上では保存期間に上限があり、200GB以上のプラン限定となるが、ストレージプランの容量を消費しない仕様となっている。対応カメラのメーカーとしてはNETATMO、Logitech(日本国内ではロジクール)、eufy security(Ankerのブランドのひとつ)がアナウンスされている。
Siriの強化
Siriも強化され、発声エンジンにニューラル技術が導入され、より自然な発音が可能となった(基調講演では英語のみ公開)。
iOS 12で導入済みのSiriショートカットも強化され、アメリカなどで発売されているスマートスピーカー「HomePod」は家族の声を学習し、個人に対応したメッセージやカレンダーなどの機能を提供できるようになった。
また、左右分離型ワイヤレスイヤホンの「AirPods」は、3月に発売された新モデルでタッチ操作なしに「Hey, Siri」の呼びかけでSiriを起動する機能に対応したが、AirPodsのSiriはさらに強化され、たとえばメッセージ受信時にメッセージ内容を読み上げる機能が追加されている。こちらはサードパーティのメッセージアプリにも対応するという。メッセージは読み上げ後、Siriを使って返信なども行なえる。
iOS標準アプリも強化
マップアプリはいわゆるストリートビュー機能が3D化し、より高精度にもなっている。お気に入りの場所「Favorites」やこれから訪れたい場所「Collections」といった機能も強化されてる。
カメラ・写真関連も強化された。最新モデルが対応しているポートレートモードには新しいライティングモードが追加されている。
「写真」アプリのUIは大きく変更され、機械学習などによって過去の写真を探しやすくなった。また、サムネイル状態でも動画やLive Photosが自動再生されるようになっている。編集機能も強化され、編集項目が増えたほか、動画も色調や回転、クロップといった編集が簡単にできるようになっている。
オリジナルの顔モデルを作るMemojiは、カスタマイズパーツが増えたほか、自動でステッカー(スタンプ)を作れるようになった。このステッカーは標準のメッセージやメールだけでなく、サードパーティアプリでも利用できる。
「リマインダー」アプリも大きく刷新される。Siriによる学習などでより簡単にリマインダーを作れるようになったほか、写真やスキャンした書類などを追加したりスマートリスト機能も追加されている。
「ヘルス」アプリやHealthKitも強化される。新たにサイクリングのトラッキングが可能になるほか、過去の履歴もより見やすくUIが変更される。「iPhoneを探す」と「友達を探す」の2つのアプリは1つに統合される。
連携ハードウェアとしては、PlayStation 4とXbox One SのワイヤレスコントローラーをiPhone/iPad/Apple TVで利用できるようになっている。
マルチタスク機能が強化されたiPadOS
基調講演ではiPad向けのiOSは「iPadOS」としてiOSとは別に紹介された。ベースはiOSとなり、iOS 13の新機能はiPadOSにも搭載される。ここでは基調講演で紹介されたiPadOS独自の機能をピックアップしてレポートする。
iPad独自の機能としては、アプリのミニウィンドウをオーバーレイ表示する「Slide Over」と2つのアプリを左右に同時表示する「Split View」のマルチタスク機能が強化された。
Slide Overのアプリ切り替えが左右スワイプやスイッチャから行なえるようになっている。Split Viewでは同じアプリを2つ開き、別々の書類を編集したりといったことも容易になっている。
ホーム画面自体も刷新され、ホーム画面の左側にウィジェットを表示できるようになったほか、ホーム画面に表示できるアイコン数も増えている。
iOSではデバイスの画面サイズや解像度に合わせてUIが変わる仕様なため、どのモデルでどのような表示になるかは不明だが、アップルの公式Webページに掲載されている画像では、最新のiPad Proとおぼしきデバイスで、横6個×縦5個のアプリアイコンが並んでいる。ちなみにiOS 12ではどのiPadでも横5個×縦4個までのアプリアイコンしか表示できない。
Apple Pencil関連ではツールパレットのデザインが変更されている。スクリーンショットに書き込むマークアップ機能も強化されていて、Webページやメール、各種書類など縦長のコンテンツは画面外を含めた縦長のまま、書き込みができるようになっている。
iPadをMacのサブディスプレイに
同時発表の次期macOS Catalinaと連携し、無線・有線接続でiPadをMacのサブディスプレイのように使える「Sidecar」という新機能も発表された。Mac側のアプリが新機能に対応していれば、iPad側ではiPadアプリのように扱うことが可能になり、Apple Pencilを利用することもできる。
iOSデバイスをパソコンのサブディスプレイとして使うためのサードパーティアプリはすでに存在するが、これに似た機能をアップル自身がiPadOS標準機能として取り込んだ形となる。
iPadでのテキスト関連のUIも
テキスト編集関連のUIも強化されていて、カーソル移動や文字の選択、コピー&ペースト、Undoといったジェスチャ操作が簡単になっている。とくにUndoは従来、「iOSデバイスを振る」というジェスチャに割り当てられていて、iPadではこれが困難かつ危険だったが、これが3本指スワイプに変更されている。
ソフトウェアキーボードはミニキーボードを好きな位置にフロート表示できるようになった。日本語キーボードではどうなるかは不明だが、基調講演や公式WebページではiPhone向けの英語キーボードをスワイプして入力できる「QuickType」がiPad上でフロート表示されていた。
さらにフォントマネージメントがiOS/iPadOSに導入され、カスタムフォントをインストールできるようになっている。
ファイルアプリ
iPhone向けのiOS 13でも同様に強化されるが、「ファイル」アプリの強化は、とくにiPadOSの新機能として詳しく紹介されている。
ファイルアプリはiCloud対応フォルダなどにあるローカルおよびクラウド上のファイルを操作するためのアプリ。iPadOSではmacOS風のカラム表示が可能となり、深いフォルダ階層でもナビゲーションしやすくなった。
iCloudドライブはフォルダ共有にも対応している。また、ファイルアプリからUSBストレージやSDカード内のファイルを扱えるようになっている。
Safariのダウンロードマネージャー
あわせてSafariにはダウンロードマネージャー機能が追加されていて、さまざまなファイルを「ダウンロード」フォルダに保存できるようになっている。また、iPadOS版のSafariは、モバイル版デザインのWebページではなく、パソコンに近いWebページを表示するように変更されている。
このほかダークモードなどiOS 13の機能は、基本的にiPadOSにも搭載される。
watchOSは単体動作アプリがより使いやすく
iOS 13とiPadOSと同時に、watchOS 6も発表されている。watchOS 6はApple Watch Series 1以降に提供される。
恒例の新しいウォッチフェイスやコンプリケーション(ウォッチフェイス上に配置するミニウィジェット)追加で利便性やカスタマイズ性が向上している。
新機能としてはApp StoreアプリがApple Watch上にも登場し、iPhone抜きでアプリを追加することも可能になった。また、オーディオブックアプリや計算機、ボイスメモなどのアプリも追加され、リマインダーアプリもデザインが刷新されている。
Siriも強化されていて、アップルが買収したShazamの技術により、周囲で流れている音楽の曲名を検索できるようになっている。また、Siriになにか質問したとき、Webページの検索結果をApple Watch上で見やすくなっている。
日々の運動などを記録する「アクティビティ」も強化され、自身の最新の傾向が見やすくなっている。とくに従来はiPhone側のアプリでも見にくかった長期の傾向が見やすくUIデザインが刷新されている。また、サイクリングのトラッキングも可能になっている。
健康関連の新機能としては、周囲の騒音を記録し、長時間騒音の激しい場所にいるときなど、聴力に悪影響を及ぼす可能性があるときに警告を発するようになった。騒音を測定するアプリやコンプリケーションも用意される。
macOSはiTunes廃止の一方でiOS/iPadOSとアプリ開発の共通化など連携を強化
Mac向けのOS、macOSも次期バージョンとなるmacOS Catalinaが発表された。
モバイル関連では前述のiPadをサブディスプレイにする「Sidecar」機能が追加されたほか、従来、iOSデバイスとの同期に利用していたiTunesアプリが廃止され、「Apple Music」、「Apple TV」、「Podcasts」の3つのアプリに分割されるという大きな変更が加えられている。
iOSデバイスとMacの同期は、クラウド経由が基本となる。ローカル接続で同期したい場合は、iOSデバイスを接続すると「Finder」(macOSでファイルを操作するための標準UI。Windowsのエクスプローラーに相当)のサイドバーにiOSデバイスが表示されるので、同期操作はそちらで行なうようになる模様。
開発者向けには、iOS/iPadOS向けアプリとmacOS向けアプリを同時に作れるようになる「Project Catalyst」という新しい技術も紹介された。従来から開発キット(Xcode)でiOS/iPadOSアプリを作る際、iPhoneとiPadを同時に作ることができたが、これにmacOSが加わり、アプリ書き出し時にMacのチェックボックスをチェックするだけで、Mac向けアプリが作れるようになる。
もちろん、macOS向けにプログラムコードを書き換えないと正常に動作しないことがほとんどだと思われるが、この書き換えも比較的容易に行えるようで、WWDCの基調講演では、レースゲーム「Asphalt 9: Legends」を最初の1日でMac上で動作させられたというゲームロフト社のコメント、Macのネイティブ機能を含むMac版クライアントを数日で動かせたというTwitter社によるコメントが紹介されていた。
ちなみにTwitterのMac版公式クライアントはかつてMac版App Storeでも提供されていたが、現在は提供されていない。今後、Mac版クライアントが実際に提供されるかは不明だが、同コメントでTwitter社は「1つのチームが効率的にiPhone版、iPad版、Mac版のTwitterを管理できる」としている。
このほか、iOSで導入されている「スクリーンタイム」がmacOSにも導入される。さらに「Find My」(Macを探す)機能も強化されていて、紛失したMacがスリープ中でもBluetooth通信を行ない、近くにあるiOS/iPadOS/macOSデバイスから位置情報を取得し、場所を検索できるようになる。このときの通信データは暗号化され、アップルを含む誰もが個人を特定できないようになっているという。
Mac関連ではプロフェッショナル向けのデバイスとしてMac Pro、Pro Display XDRが発表された(いずれも秋発売予定)。モバイルデバイスの新製品は発表されていないが、Apple Watch向けのバンドは「Summer Watch Bands」としてスポーツループとスポーツバンドに新色が追加されている。
Apple TV向けのtvOSも新バージョンとなる。こちらはマルチユーザーをサポートし、iOS/iPadOS同様にPS4やXbox One Sのゲームコントローラーをサポートするなどの機能強化がなされている。