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ワンストップで素早く高品質、アドビが「Premiere Rush」Android版を解説

 アドビ システムズは、動画編集ツール「Premiere Rush」のAndroid版アプリの提供を開始したことにあわせ、製品の説明会を開催した。会場は東京・原宿の「Galaxy HARAJUKU」で、スマートフォンの最新モデル「Galaxy S10」「Galaxy S10+」を使ってデモンストレーションが披露された。

 説明会に登壇したアドビ システムズ クリエイティブクラウドマーケティング マネージャーの田中玲子氏は、SNSに動画を上げるといった需要が個人・法人を問わず多くなっており、「いかに高品位に、簡単に上げるかが重要」として、これに対応するために開発されたのが「Premiere Rush」とした。

 「Premiere Rush」のポイントは3つで、1)編集から音声まですべてをひとつでこなせること、2)プロ向けツールの「Premiere Pro」と同じエンジンを使い、プロレベルの動画を制作できること、3)クラウドと連携することでPC版とも連動でき、続きは自宅でするといった、いつでもどこでも編集作業を行えるツールになっていることを紹介した。

 「Premiere Rush」で作成したプロジェクトは、プロ向けツールの「Premiere Pro」で開いて作業を行うことも可能で(逆はできない)、プロが初期段階の粗編集に使うツールとしても有用とした。また「Premiere Rush」のモバイル版(当初はiOS版)を提供して以降、PC版の3倍の数が利用されていることを紹介、「今後もこういう需要が増えていく。外で使いたいという需要がある」とした上で、待望のAndroid版の提供に至ったことや、日本向けの「縦書き」や「集中線」といったモーショングラフィックステンプレートを用意していることも紹介した。

アドビ システムズ クリエイティブクラウドマーケティング マネージャーの田中玲子氏
「Premiere Rush」

 田中氏はサンプルとして入っている動画を使い、具体的な作業手順も紹介。「Premiere Rush」のアプリからカメラを起動すると露出ロック、フォーカスロックといった動画向けの便利な機能が利用できることや、複数の動画の長さや順番を簡単に変えられる様子、タイトルの入力やカラー調整も手軽に行える様子を披露した。

 オーディオでは、AIによる調整機能を搭載するのも特徴。具体的には、人物が喋っている間はBGMの音量を下げる処理を自動で行う「自動ダッキング機能」を利用可能。

 アスペクト比は、SNSなどへの投稿を念頭に、横長、縦長、正方形から選択でき、例えば正方形を選んだ際には、自動的にタイトルの挿入位置が(画面外に飛び出さないよう)調整される。こうした部分は、一般的には手動で再調整しなければいけない部分で、「Premiere Rush」の特徴になっているとした。

アプリからカメラを起動すると露出ロックやフォーカスロックを利用可能
動画の素材を選択しプロジェクトをスタート
各動画の長さや順番をタッチ操作で簡単に変更できる
ノイズ除去
AI処理による自動ダッキングも
タイトルを入力
横長、縦長、正方形を選択できる
横長の状態
正方形にするとタイトルの位置が自動的に調整された

 ほかにもアフレコ、ピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)、フォント選択などが可能なのも特徴。速度調整(タイムリマップ)機能はすでに開発がアナウンスされ、今後搭載される予定であることも紹介された。

 田中氏は「すばやく、クオリティの高いものを作りたいなら『Premiere Rush』。ワンストップでできる」とアピールした。

「Premiere Rush for Samsung」も用意

 アドビとサムスン電子のGlaxyはグローバルでパートナーシップを強化していることもあり、サムスンのアプリストア「Samsung Galaxy Store」では「Premiere Rush for Samsung」が用意され、月額980円(税抜)の有償プランが期間限定で20%オフ(9.99ドル→7.99ドル)で利用できる。

 「Premiere Rush」のAndroid版の対象機種は、Android 9.0を搭載した「Galaxy S10」「Galaxy S10+」「Galaxy S9」「Galaxy S9+」「Galaxy Note9」「Galaxy Note8」「Pixel 3」「Pixel 3 XL」「Pixel 2」「Pixel 2 XL」となっている。

「Samsung Galaxy Store」では「Premiere Rush for Samsung」を用意

動画クリエイターへの道は「1000本ノック」!?

 説明会の後半にはクリエイターによるトークセッションの時間も設けられ、ワンメディア 代表取締役/CEOの明石ガクト氏、SNSアーティストのあさぎーにょ氏が登壇した。

ワンメディア 代表取締役/CEOの明石ガクト氏(左)、SNSアーティストのあさぎーにょ氏(右)

 動画を簡単に投稿できるようになっている昨今、差別化の難しさと問われると、明石ガクト氏は、「マニュアルで操作できるのが大事。テンプレ通りや、AIが作ってくれるとかは、だいたい同じような動画になってしまう。自分らしいものを追求できる道具が必要」と語ると、あさぎーにょ氏は「見せ方はいっぱいある。どんどん出しまくってほしい。こだわる人ほど、最初の一本は、勇気がなくて出せない。出さないと、いつまでたっても自分っぽいものができない」と、躊躇している人に向けたエールを贈る。

 自分のカラーやスタイルが確立している両氏だが、そのコツを問われると、明石ガクト氏は「自分らしい目線や、世界の切り取り方が重要。高いレンズを使ったいいボケや、ドローンを使った映像は、それだけなら似たような映像がたくさんある。その人にしか撮れないものに、人は興味を惹かれる」と指摘する。

 一方、あさぎーにょ氏は「当初、自分らしさを作らなきゃとは思っていなかったが、(反応や評価を見て)私ってこうなんだ、と思った」と、周囲の反応により“自分らしさ”が何なのかを自覚していったことを紹介。「(数を)出していったら、(自分らしさは)自ずと出る」とした。

 司会から「1000本ノック」と評された両氏のスタンス。共通しているのは数をこなして自分らしさを見つけるという点で、「そういうものを常に、10代の頃から助けてくれたのはアドビ。ツールにお金を払うのは嫌だと思う人もいるかもしれないが、自己投資を惜しまずに、払っちゃったほうがどんどん(やりたいことを)実現できるようになる」(明石ガクト氏)と、自身の経験も踏まえて、クリエイティブシーンにおけるアドビの貢献に言及することも忘れなかった。

「その人にしか撮れないものに、人は興味を惹かれる」(明石ガクト氏)
「見せ方はいっぱいある。どんどん出しまくってほしい」(あさぎーにょ氏)
サムスン電子の大越氏からは「Galaxy S10」「Galaxy S10+」のカメラ・動画機能が紹介された