ニュース
ドコモ、誤差が数cmの位置情報を法人向けに提供へ
コマツが建機のIoT化に活用
2019年5月28日 19:38
NTTドコモは、測位衛星の情報と地上の固定局の補正情報を組み合わせ、誤差数cmという高精度で測位できる技術を実用化し、「GNSS位置補正情報配信基盤」として法人向けに10月1日から提供する。
同基盤は、2019年3月から検証を行っていたもので、技術検証で一定の成果をあげることができたとして、実用化が発表された。
今回の「GNSS位置補正情報配信基盤」は、端末が直接受信するGPSやみちびきなどの測位衛星の位置情報に加えて、地上の固定局が測位衛星から受信したデータなどを補正情報として端末に配信することで、端末上で両方のデータの演算・処理を行い、高精度の位置情報を得るというもの。
補正情報のために、端末側とは別に測位衛星から情報を受信する地上の固定局は、国土地理院が全国に設置している約1300局の電子基準点に加えて、ドコモが独自に設置する固定局を利用する。補正情報は配信用サーバーに集められ、ドコモの携帯電話ネットワークを通じて端末に配信される。
実験では、高さ(高度)を含めてプラスマイナス2cm以内という高精度な測位に成功した。
建設機械や農業機械などをはじめ、後付けでIoT化を図る分野でも、高精度な位置情報が求められているとしているほか、インフラ機材の低価格化により、高品質ながら利用価格を抑えたサービスになるとしている。
ドコモでは今後、端末側の演算処理およびコストを削減するために、クラウド上で測位演算を行う「クラウドGNSS測位」についても導入の検討を進め、用途に応じた精度・コストのバリエーションを拡大しながら、既存製品のIoT機器化の動きを加速していくとしている。
コマツは、すでに稼働している建機をIoT化し、施工現場のデジタルトランスフォーメーションを推進するプロジェクトを大々的に発表しており、現在は国内で稼働する20万台の油圧ショベルのうち2%にとどまるという建機のIoT化について、本格的な取組を開始する。既存の建機のIoT化キットに、今回の「GNSS位置補正情報配信基盤」を組み合わせて採用、日本国内で、高精度な位置情報によるオペレーター支援システムなどに活用していく。
IoT化キットの試験導入は2019年10月からで、2020年4月から本格的な販売を開始、初年度で1万台程度への搭載を見込む。なおコマツは海外でも、建機のIoT化キットを展開していくとしている。
第一次産業のIoT化を推進
28日に開催された記者向けの発表会では、NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏が登壇、「高精度位置情報を活用する市場を活性化していきたい」と意気込みを語ったほか、クラウド測位演算など今後の技術の開発を進めていくことも明らかにした。
NTTドコモ 執行役員 IoTビジネス部長の谷直樹氏は、パートナー企業と取り組むIoT事業のアセット(資産)に高精度な位置情報サービスが加わることで、さらなるIoTの拡大や付加価値を提供できるとした上で、今回の事業化は最初のステップにあたり、今後は建機や農機などの産業領域だけでなく、クラウド測位演算を実用化することでさまざまな業界に高精度な位置情報サービスを提供できるとした。
準天頂衛星システム「みちびき」を開発し、現在は次世代システムの開発に着手しているというライトハウステクノロジー・アンド・コンサルティング 代表取締役社長の前田裕昭氏は、インフラ機材の低価格化や端末側の低価格化・低消費電力化、通信ネットワークの高速化などさまざまな技術の進歩とその相乗効果で、「爆発的な利用シーンの拡大が見えてきた」と高精度位置情報システムの背景を語る。自動運転での活用のほか、建機、農機では人材不足を補う技術として需要があるとし、また今後はクラウド測位に加えて、ネットワークで完結する「エッジ測位」も視野に入れてシステムを開発していることを紹介、「日本が抱える諸問題の解決に寄与していきたい」とした。
コマツ 代表取締役社長(兼)CEOの小川啓之氏は、「世界規模で事業環境が変化している」としたうえで、中期経営計画で建設現場のデジタルトランスフォーメーションを推進していくとしたことを紹介、建機のデジタル化で安全性や生産性の向上を図り、「労働力不足などの社会課題の解決を、先頭を切って行っていく」と意気込みを語っている。