ニュース

公取委、「携帯電話分野に関する意見交換会」が終了

第3回はアンケート調査を分析、“好み”と乖離する消費者の行動を指摘

 公正取引委員会は、携帯電話分野の競争政策上の課題や考え方を整理する「携帯電話分野に関する意見交換会」の第3回を開催した。今回が最終回で、今後は第1回からの内容をまとめた報告書が公表される予定。

 第3回のテーマは「消費者アンケートの分析を通じた競争政策上の課題について」。消費者行動の傾向が分かるような質問を中心に、Web上で2000人を対象にアンケート調査が実施され、結果が意見交換会の場で議論された。

 公正取引委員会の事務局からは冒頭、「~するべきだとか、どういう行動が正解かを探る議論ではない」と説明された。十分な競争に必要な「消費者の選択」が機能しているかどうかや、選好(好み、より好み)と実際の選択に乖離がある場合に、なにが要因になっているかを知る手がかりとして、今回のアンケート調査が実施されたことが示された。

「理解できた」の自覚と実態に差

 アンケート調査の内容は大まかに、契約について説明されたかどうかや、契約内容の理解度、中途解約の違約金の理解、MVNOのプランとの価格差の認識、月額と年額で示された場合で回答の傾向の差がある、といった内容。

 例えば契約内容については、丁寧に説明を受けて、「理解できた」と回答する消費者が多いにもかかわらず、2年契約の中途解約の違約金については金額を知らないと回答する割合がMNOでは過半数になるなど、実態と乖離がある点が示された。

気に入るはずのプラン、選べていない?

 また、どのくらい安くなるとMNOからMVNOに乗り換えるかという質問では、月額で例を示す場合と年額で例を示す場合で、結果が異なることが明らかになった。

 例えば月額表示で最も多く回答されたのは月額3000~4000円の値下がりで乗り換えるというもの(16.9%)で、これは2年間では7万2000円~9万6000円に相当する。一方、年額表示で質問した場合、2万4000円~4万8000円値下がりすると乗り換えるという回答が最も多く(17.8%)、これは月額に換算すると1000~2000円に相当する。

 ほかにも、MNOのユーザーに対し、「これから新規に契約する」という前提で聞くと、MVNOで一般的な、端末は一括支払いでサービスの月額料金を抑え、“2年縛り”が無いというプランが6割以上に支持されるものの、現実ではMVNOのシェアが約10%に留まっていることなどから、各社による囲い込み(ロックイン)施策が大きく影響していることが指摘された。

“契約の設計”を注視

 集まった有識者からは、アンケート調査の規模や回答者の属性、実態を反映しているかどうかなどがまず聞かれ、最終的にも、この日示された調査結果だけを元にして何か提言をまとめることは困難と、口をそろえた。もっとも、これは事務局も想定しており、調査結果を通じて、消費者の理解度や選好と実態に乖離がある点を公正取引委員会として注視していると、対外的に示す狙いがあったとみられる。

 有識者からは、消費者が合理的に行動するのは競争環境の前提としながらも、(消費者は必ずしも合理的に行動しないという)行動経済学などの議論を踏まえ、実際に契約内容の理解が難しい場合、「消費者が誤導されそうな契約設計」は改善すべき、との意見が聞かれた。

 また、店頭での説明が“丁寧すぎる”などの観点で、消費者がさまざまな手続きを面倒くさいと感じ、そうした、時間がかかるなどのある種の“不利益”を避ける行動(契約を変更せずMNOを使い続けるなど)も、非合理的とはいえないという指摘もあった。

 いずれにしても、公正取引委員会としては消費者の選好と行動の乖離を、契約の設計や例示の仕方で助長していないかどうか、それが公正競争を阻害していないかどうかに注目している模様だ。

 今回の意見交換会は、2016年の議論のフォローアップと位置づけられている点に変更はなく、報告書がまとめられて区切りがつくとみられる。ただし、委員会の中での問題意識は強いようで、今後の公正競争を監視する取り組みの土台になっていくものと思われる。