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携帯に新規参入の楽天・三木谷氏「リーズナブルな価格、総力を上げて取り組む」

 総務省が進めていた1.7GHz帯と3.4GHz帯における携帯電話用の周波数の割当について、既報の通り、電波監理審議会からの答申を受け、開設計画が認定された申請4者に対し、認定書が交付された。

1.7GHz帯と3.4GHz帯における携帯電話用の周波数の割当を受けた4者(5社)の代表。中央は野田聖子総務大臣

 4月9日午後、総務省の大臣室で行われた交付式には、NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏、KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏、沖縄セルラー 代表取締役社長の湯淺英雄氏、ソフトバンク 代表取締役社長の宮内謙氏、楽天モバイルネットワークの親会社で、楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が集まり、野田聖子総務大臣からそれぞれ認定書を手渡された。

大臣室に入る各社の代表
一列に並んで認定書の交付を待つ。
NTTドコモ 代表取締役社長の吉澤和弘氏
KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏(沖縄セルラーの湯淺氏も同様に認定書を受け取っている)
ソフトバンク 代表取締役社長の宮内謙氏
楽天モバイルネットワークの親会社で、楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

 認定書の交付式を終えると、各社の代表は短い時間ながら個別に囲み取材に応じた。

楽天の三木谷氏

 楽天の三木谷氏はまず、「国民の皆様の有限な資源である周波数帯域を使わせていただけることになり、しっかりとしたサービスを、便利でリーズナブルな形で提供できるよう、精一杯、総力を上げて頑張っていきたい。グループ(楽天)のサービスの会員がたくさんいる。複合的に絡めながら、より利便性が高い、そしてリーズナブルな価格、快適な接続を実現できればと思う」とコメント。

楽天 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏

 ローミングについては「新規参入で、全国バンドでの展開で、当初の段階では(ローミングで)接続する必要があると思っている。そうした中で、自前のネットワークをしっかりと構築していく」とし、当初はエリアの補完策として、ほかのMNOのネットワークにMNOとして接続する国内ローミングを利用する方針を改めて示した。

 改めて感想を聞かれ「嬉しいですね。まず我々を信頼して、このような認可をしていただいたことに大変嬉しく感じるとともに、責任も感じている。しっかりとやっていきたい」と語った三木谷氏。“一部条件付き”と各紙で書かれていることについては「条件付きというのは、ファイナンス(財源確保)をしっかりする、自前のネットワークを中心にするといったことで、それは元々の予定通り。しっかりとやっていく」と、想定内のことと語っている。

 サービスの価格帯について聞かれると、「実際のサービスインは1年半後。(免許の交付で)我々を選んでいただいたということは、価格だけではなくさまざまな競争が必要だということで選んでいただいたと認識している。価格を含めて総合的なサービスを、1年半の間にしっかりと作っていきたい」と答え、詳細は、これからの市場の推移もみながら決めていくとした。

3キャリア社長の反応は

 既存3キャリアの社長への囲み取材では、主に楽天の新規参入について聞かれることになった。

ソフトバンク宮内氏
ソフトバンクの宮内氏

 ソフトバンクの宮内氏は、「いろんな新しい競争が生まれることは脅威」とするものの、日本のモバイル業界にはプラスに働くという考え。価格帯でも攻めてくると予想されると聞かれると、「僕らもブランド戦略ではSoftBank、Y!mobile、最近ではLINEモバイルも含めている。多様なニーズに応えるためには、例えばSoftBankなら50GBでも安く使えて、そこまでいらないならY!mobileとか、そういう区分けでやっている。ほとんどのお客さんは、(データを)使いたい。これからますます動画の時代。そういう意味では、SoftBankブランドは50GBや20GBを中心にやっていく」と回答、“格安”への対抗は、従来どおりブランド別の戦略で対応していく方針を語っている。

 新規参入について楽天・三木谷氏へのメッセージを問われた宮内氏は「ネットワークは非常に重要なもの。特に(東日本)大震災を経験して、本当にライフラインだというふうに思っている。今も、常にネットワークの増強に努めている。ビジネスではあるけれど、どこでも確実につながる世界をつくっていくのが我々、通信事業者だと思っている」とコメントし、ライフラインとしての側面も指摘している。

ドコモ吉澤氏
NTTドコモの吉澤氏

 NTTドコモの吉澤氏は、楽天の新規参入について「この業界は、さまざまな変化がこれまでもたくさんあった。我々は今までも、エリア拡大とか使いやすい料金、使いやすいサービスとかを磨き上げてきた。こういった(新規参入)状況になっても、基本的にはやることは同じ」とコメントする。

 改めて、楽天のサービスは低価格帯が予想されると聞かれると「詳細は我々も分かっているわけではない。ただ今でも、セカンドブランド、MVNOにどう対応していくのかは検討しているところ。今、こうしたものに真正面から対抗しようということはしていないが、今後の対応は、今から検討していく」とコメントしており、対抗策の可能性も示唆している。

 楽天のローミング先として可能性が高いドコモは、この検討について聞かれると「そういった交渉が楽天からあれば、真摯に対応していく。ビジネスとして捉えていきたい」と、前向きな方針を示している。

 ただ一方で、ドコモが卸提供する回線を使うMVNOの「楽天モバイル」については、「同時に、というのは少し違うのかなと思う」と指摘。「MNOとして事業をするということなので、今のMVNOの顧客はマージ(統合)していくやりかたになるのではないか。2つがずっと存在することにはならないと思う」との見方を示した。

 吉澤氏のこのコメントは、現時点ではBIGLOBEモバイル、LINEモバイルという、MNOの子会社のMVNOに対して回線を卸提供しているケースは存在(容認)しているものの、同じ通信方式でサービスを提供する同格・同業のMNOに対し、回線を卸提供することはしないという意思表示だと思われる。

KDDIの高橋氏
沖縄セルラーの湯淺氏、KDDIの高橋氏

 KDDIの高橋氏は、これまで同氏が担当していたサービスレイヤーを対象とした業務の中で三木谷氏と会うことが多かったといい、「業界を盛り上げていければいいのではないか」と歓迎する方針。

 KDDIは楽天と同じ1.7GHz帯の周波数を新たに獲得している。「グローバルのバンドなので、4G、5Gと進んでいく中で、ユーザーの立場に立った“ワクワク”するサービスを提供していきたい」と、優位なバンドであることを喜んでいる様子。

 楽天の参入については「今まで違う領域だったが、非常に柔軟にいろいろなサービスを提供している。見習う部分も出てくるだろうし、サービス・料金をしっかりつくっていきたい。被る部分も出てくるし、お互い、創意工夫だなと思う。(KDDIでも注力している)eコマースもだいぶ時間が経って、ビジネスモデルを変えていかなければいけない面も出てくるのではないか。そこをできるだけ先取りして、強みを発揮していきたい」と、良い競争相手という認識を示している。