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デモで明らかにされたSnapdragon 845の省電力性能

 クアルコムが2月5日~8日にかけて実施したイベント「Snapdragon 845 Benchmarking Workshop」の模様は別記事でご紹介した通りだが、あわせて同チップセットの特徴がわかるデモも披露された。

大幅な省電力化を実現したSnapdragon 845

 高い処理能力と省電力という両立が難しい課題について、大変興味深かったのは、Snapdragon 835との動画再生時やベンチマーク実行時の電力消費量のモニタリングのデモだ。動画再生では、Snapdragon 835が平均2000mW以上を消費しているのに対し、Snapdragon 845では平均1600mW程度に改善されていることがわかる。

Snapdragon 835とSnapdragon 845で同じ動画を再生
Snapdragon 845の電力消費量
Snapdragon 835の電力消費量

 さらにベンチマークアプリ「GFXBench」の実行時では、Snapdragon 835が平均3780mW程度を消費するのに対し、Snapdragon 845は平均2950mW程度に抑えられていた。電力消費量のグラフを見ると、波形の山のでき方も異なっており、電力を消費していない谷の部分ではSnapdragon 845はきれいに平らになっているが、Snapdragon 835は途中で負荷がかかっている状況が見て取れる。

GFXBenchを実行
Snapdragon 845の電力消費量
Snapdragon 835の電力消費量

 このデモの結果を見ると、同じ処理をするのであれば、Snapdragon 845はSnapdragon 835と比べて消費電力を20%程度は抑えられるであろうことが想像できる。もちろん評価用の機材を用いたデモであるため、市販モデルでは搭載する部品の構成によってバラつきが出る可能性はあるが、それでも大きな改善であることに違いはない。

 このほか、Snapdragon 845の機能を活用したものとしては、1つのインカメラで自撮りし、瞬時に背景にエフェクトをかけるといったデモや、スマートホームの時代をイメージし、音声でさまざまな機器をコントロールするデモが行われた。Snapdragon 835を搭載してすでに商用化されている端末を使ったものでは、超音波で人の手の動きを感知し、カメラのシャッターを切るデモも披露され、スマートフォンの画面を飛び出してSnapdragonの性能を活用するアイデアが紹介された。

1つのインカメラで人物を認識し、背景にエフェクトをかける
スマートホームを音声でコントロール
超音波で手の動きを感知し、カメラのシャッターを切る

スマホの枠を超えて未来を模索するクアルコムのラボ

オーディオラボでは家庭環境をシミュレーション

 同社では、あわせて音響関連の研究開発を行うオーディオラボを公開。スマートスピーカーの普及が進む中、家庭(キッチンやリビング)で使われる環境を想定した部屋を用意し、そこで電子レンジなどのノイズを出しながら、しっかりと音声認識が行えるかどうかを確認している。

さまざまな機材を用いて認識精度の向上や常時スタンバイ時の省電力化を研究している

 また、一般家庭を想定したテストのほか、担当者曰く「カリフォルニアで一番静かな場所」である無響室でのテストも行い、AIによる音声認識の性能向上を図っているという。こうしたテストの成果は、スマートスピーカーをはじめ、さまざまな音声認識デバイスの性能改善に役立てられる。

1本のサウンドバーだけでサラウンド感を表現
無響室
わざとマイクに風を当てて試験する機材も

 また、VRやARに関する研究開発を行うACG(Advanced Content Group)のラボも公開された。ラボの内装はSF映画に出てくるような宇宙船の内部をモチーフにした遊び心があふれるデザインで、大のSF好きとされる前CEOのポール・ジェイコブス氏の趣味が反映されているという。

 VRゴーグルを使ったゲームのデモでは、ヘッドホンを装着し、スティック型のコントローラーを持って宇宙船の紹介を受ける体験ができたが、映像と音響が遅延なくシンクロしているためか、エレベーターに乗るなどした際にはその浮遊感が得られた。

SFチックな内装のACG(Advanced Content Group)ラボでは、VRやAR、ゲームといったコンテンツの研究が行われている

 スマートフォン用のチップセットの代名詞とも言えるSnapdragonだが、こうしたラボでの研究開発は、すでにその枠を超えて近未来のテクノロジーの可能性を探求する興味深い内容だった。