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事業会社は「独立自尊であるべき」、孫氏が語ったソフトバンク上場の背景

ファンド投資の成功例を日本展開する際の受け皿にも

 ソフトバンクグループ(SBG)は、2017年度第3四半期の決算を発表した。説明会にはソフトバンクグループ 代表取締役会長兼社長の孫正義氏が登壇し説明を行った。同社は決算発表と同時に、通信事業を手がける会社であるソフトバンク(SB/SBKK)が株式上場準備を開始したことも明らかにしている。決算説明会ではSBGの戦略の中で、SBKKが上場する背景なども語られた。

 SBGの連結決算(累計)は、売上高が前年同期比4%増の6兆8113億円、調整後EBITDAが前年同期比3%増の2兆563億円、営業利益は前年同期比34%増の1兆1488億円、当期純利益は前年同期比20%増の1兆149億円だった。純利益については、過去の大型の株式売却やデリバティブ損失、米国の税制改革などの会計上の影響を除く「実質的な伸び」は前年同期比39%増の6745億円になるとしている。

ソフトバンクグループ 代表取締役会長兼社長の孫正義氏
決算の概要

スプリント

 米国のスプリント事業については、コスト削減が進み、税制改革による一時的なメリットを除いても黒字になったとしたほか、5Gの規格に2.5GHz帯が組み込まれたことで、2.5GHz帯について米国で最も多くの帯域幅を持つスプリントが今後の展開を優位に進められ、2019年の前半にも5Gを展開できるとした。

 孫氏は、日本でも展開している2.5GHz帯が5Gに最適という見方を示し、「ミリ波帯(30GHz帯以上)を世の中のほとんどのキャリアが使おうとしているが、(面展開が難しく)ほとんどホットスポットのような状態。モバイルのネットワークとしては、あまり使い物にはならない」とし、加入者数が比較的少ない事もあって、スプリントは2.5GHz帯を5Gで最大限に活用できることをアピール。「ネットワークの逆襲がいよいよ始まる」と技術面でも反転攻勢に出る姿勢を示した。

 なお孫氏はスプリントに関して、「単独なのか、提携していくのか、いろんな選択肢を検討していく」「合従連衡があるとしても、なんらかの形で米国市場の重要なインフラに継続して関わっていく」などととしており、事業を売却する可能性が残っていることを引き続き示唆している。

ソフトバンク・ビジョン・ファンド

 SBGとしての戦略の多くは、グローバルで投資活動を行うソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)と連動しており、ここからはSVFの取り組みについて語られた。前回の決算説明会では約20社に投資していることが紹介されたが、今回までの3カ月のうちにさらに6社を追加、いずれもユニコーン(未上場の超優良ベンチャーの俗称)を選りすぐって投資しているとした。

 さらに米UBERへの8000億円の出資も完了し、筆頭株主になったことを報告。SVFが、このような通常のベンチャーキャピタルでは実行できない大型の投資を実施できるとしたほか、ライドシェアビジネスでは中国などでの投資を含めて、グローバルでさまざまな企業の筆頭株主になっていることを紹介。「自動車は、交通機関としての部品に過ぎない。プラットフォーマーがより多くの価値を持つ」と持論を展開し、ライドシェアビジネスの拡大を背景に「交通機関のプラットフォーマーになる」という構想を示した。

「群戦略」は創業前から一貫した戦略

 SVFの構想と実際の投資が実行されるにつれ、各分野の優良企業が集結しているSVGの「群戦略」は、多くのIT企業が30年で成長のピークを迎えてしまうという通説に対する、孫氏なりの回答という。孫氏は、19年前に孫氏が群戦略を語っている動画を紹介し、「群戦略とは結果論で言っているのではなく、あれから20年をかけて、意図して作ってきたもの」と強調する。

 戦後に日本で起こった財閥経営は、グループシナジーのために足を引っ張り合い、現在のグローバル競争では優位性が無いと両断。PC関連で多い、専門分野に集中する企業経営は、「30年の戦いなら正しい戦略」というが、孫氏は「30年競争ではなく300年競争で1位になりたい」という。

 孫氏は、こうした近年になって結実したSVFの構想と実行力を踏まえ、「ソフトバンクとは?」という自問に対し「戦略的持株会社」であると回答する。

SBGは戦略的持株会社とした

事業会社は独立自尊

 孫氏はSBGが「戦略的持株会社」であるということから、ソフトバンク株式会社(SBKK)の株式上場について、「小さな次元で、ちょこっとメリットを得ようとしているのではない。オペレーティングカンパニーは独立自尊であるべき」と、上場の準備にはいった背景を説明する。この考え方は、SVF傘下のほとんどの企業にも当てはまる。孫氏は「SBKKは自律的で機動的な成長を行っていけるように」ともしており、投資家はこれまでのようにSBGを通じてではなく、SBKKに直接投資が行えるようになるとした。

 そのSBKKの第3四半期の国内通信事業については、上場を念頭に、顧客獲得などの先行投資を拡大しており、減益になったことなどが解説された。

 孫氏はまた、今後のSBKKを「Beyond Career」(ビヨンド・キャリア)というキーワードで表現。特に、SVFがグローバルで投資している優良ベンチャーの成功例を日本国内で展開する際、SBKKやヤフーが受け皿となってジョイントベンチャー(JV)を作ることで導入を促進していくという戦略が示された。

 SBKKの拡大した顧客基盤を深掘りしていくという位置づけで、「JVを続々と作っていく。今、いくつも準備している」と孫氏は語り、海の向こうの出来事だったSVFの取り組みが、ソフトバンクのユーザーにも関係のある取り組みになることが紹介された。

 孫氏は一連の群戦略が、財閥経営とは似て非なる戦略であるとし、「私なりに作った、私なりの答え」と、“300年の大計”が完成に近づいていることを示した。

LINEモバイルは“3つ目のブランド”に

 質疑応答の時間には、上場に当たっての規則などから、SBKKの上場の申請前に詳細を回答することはできないとあらかじめ案内されたが、社長は宮内謙氏が続投する方針であることが明らかにされた。

 ソフトバンクが株式の過半数を取得する予定のMVNOの「LINEモバイル」については、宮内氏は、「LINE」が広く浸透したサービスであることなどを念頭に、「マーケティングなどでも連携していく」と方向性を示したほか、「ワイモバイルはブランドとしてきちっとしたポジショニングができた。LINEモバイルが加わったことで、3つ目のポジションを作っていけるのではないか」と語り、LINEモバイルがソフトバンクの3つ目のブランドになることを示唆した。

 LINEモバイルについて、具体的な連携方法について質問が及ぶと、孫氏は「もっともっとやっていきたい。攻めのブランドだ」と概念を回答、詳細は語られなかったが、柔軟に利用していく方針が示されている。

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