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mineoの強みは「ファン至上主義」、今春にはもう一機種投入へ

 ユーザーコミュニティとの深い関わりが、解約率を下げるだけではなく、口コミにも繋がり、ユーザーそのものが広がっていく効果がある――そんなエピソードが披露されたのは、18日に開催されたケイ・オプティコムのMVNOサービス「mineo」の記者説明会でのことだ。

ケイ・オプティコムの上田氏(左)

 「格安SIM」「格安スマホ」といったワードでここ数年、ユーザー数が順調に伸びてきたMVNOは、国内に750社あるとも言われる。安さを契機に市場を広げてきたものの、価格競争だけでは行き詰まり、2017年には他社に事業を譲渡するMVNOも登場。価格以外での差別化要素が必要とされる中で、関西電力系のmineoが打ち出したのは「圧倒的ファンファースト」だ。

解約率は0.6ポイント低下、ユーザーの囲い込みに効果

 現在、約90万回線を抱え、MVNO事業者では第4位(シェア8.2%、2017年9月末)に位置するmineo。2014年6月のサービス開始から目指してきた100万回線という目標が、いよいよ今年度末にも達成する見込みとなるが、そのmineoが初期の段階から注力してきたのが、ユーザーとのコミュニケーション。

 その中核になるのが、3周年を迎え、約30万会員に利用される同社運営のファン向けサイト「マイネ王」。契約数の約4割が利用する「マイネ王」では、たとえばmineoの使い方でわからないことがあれば、他のユーザーが答えを出す。またマイネ王を通じて寄せられた要望をヒントに、mineoでは新機能や新たなサービスを開発することもあり、これまで2421件の要望に対し、251件を現実の施策にしてきた。

 ユーザーとの対話はマイネ王だけではない。オフ会として実施されるリアルイベントが定期的に開催され、これまで337名以上のユーザーと直接、意見交換を進めた。

 ユーザーとの共創、ユーザーによりそう安心といった戦略は、これまで、mineoの事業戦略説明会で繰り返し紹介されてきたワードだが、今回、ケイ・オプティコムのモバイル事業戦略グループを率いる上田晃穂氏は、そうした取り組みを「圧倒的ファンファースト」と表現。他社との大きな差別化要素としてあらためて紹介した。

マイネ王で導入した「HAPPY METER」は投稿されたキーワードに応じて変動する機能。ハッピーなキーワードで増えることから乱暴な発言が減少する効果も
HAPPY METERが100万に達したことから、目に見える社会貢献として桜の植樹を行うことに

iPhone、とある代理店から購入した「新品」

 mineoでは、2月からは新たにiPhone 7/7 Plusを発売する。SIMロックフリーの国内版で、アップルから直接調達したものではないが、信頼のおける代理店から入手したものという。最初は数百台レベルだが、調達は定期的に続けていく意向。アップルストアでの価格よりも高い場合もあるが、mineoでiPhone買いたい人のニーズに応えたいと考えた結果での取り組みだ。

 アップルのオンラインストアでは現在、iPhone 7/7 Plusは32GB版と128GB版が扱われており、256GB版は販売されていない。こうしたことから、iPhone 7/7 Plusが登場したころからの国内版の在庫がmineoで今回、販売されている、という見方もできそう。

 ちなみに今回のmineoのラインアップでは、iPhone 7/7 Plusのレッドも用意されている。アップルで販売された同機種のレッドは、世界エイズ・結核・マラリア対策基金へ寄付する「(PRODUCT)RED」として発売されたモデルのみだが、mineo版を購入した場合、寄付活動に繋がるかどうかは明らかにされていない。

アプリを強化、新機種も

 圧倒的ファンファーストをいう宣言を、さらに強化する施策のひとつが「mineoアプリ」の提供。3月末に登場する予定で、パケットコミュニケーションというテーマを掲げる。

 これはユーザー同士で余ったパケットを融通しあえる機能を提供してきた同社ならではの取り組み。パケットを贈るギフト機能や、ユーザー同士で自由に融通する「フリータンク」が利用できるほか、近くにmineoユーザーがいるかどうかわかる「mineoレーダー」といった機能が搭載される。

 まだ具体的な内容は伏せたままながら、近く、2万円台前半のスマートフォンが発売されることもあわせて案内された。

大手キャリアのサブブランドの影響もファンの力で

 発表会に先立つ1月15日、総務省の有識者会合で、mineoを含むMVNO各社が、ワイモバイルやUQ mobileといった大手キャリアの“サブブランド”が優遇されているのではないか、と指摘する場面があった。

 大手キャリアから、一定の通信速度分に対して一定の金額を支払う、という形で回線を調達しているMVNO各社にとって、たとえば多くのユーザーが利用するランチタイムの通信速度は悩みの種のひとつ。こうした混み合うタイミングで快適な通信環境を用意するには、その分、大手キャリアからの回線を手配する必要がある。快適な通信品質を実現にするにはその分、設備投資として資金が必要だが、じゃぶじゃぶと余らせると無駄になる。コストと品質のバランスをいかにとるか、というのはMVNOにとって手腕の見せ所とも言われるが、そうしたノウハウを持つMVNOからすれば、ランチタイムにおけるサブブランドの通信速度は「同じ料金では我々にはとうてい提供できない。ちょっとの差というレベルではない」(上田氏)と思わせるほどの違いがある。

 「今の接続料原価で、昼間、10Mbpsを出すということになるとそうなる。なぜできているのか、理由が明らかになれば、イコールフッティングかどうかわかる。今後の政策を見ていきたい」と上田氏は語り、MVNOと大手キャリアのサブブランドが平等な立場なのかどうか注視していく姿勢。

 mineo自身の契約数は、サブブランドの影響をあまり受けていないという。この背景にはファンファーストがあったのでは、と上田氏。

 とはいえ、他のMVNOの中には加入者が減少したというデータがある。今後も続けば、MVNO市場に影響が出て寡占化に続く可能性を懸念する。これまでケイ・オプティコムから大手キャリアへ直接、指摘をしたことはないが、1対1での対話よりも、総務省の有識者会合というオープンな場で表に出したほうがいいと考えたのだという。