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MVNOが「新しいフツー」になるために――mineoの契約数100万件のための戦略

 ケイ・オプティコムは、MVNOサービス「mineo」に関する発表会を開催し、春に発売するスマートフォンやタブレットを発表、訪問サポートなどのサービスの拡充や、新生活に向けたキャンペーンの拡充も発表した。発表会ではこれらと合わせて、目標とする100万契約に向けた戦略が語られた。

 発表会では冒頭に、ケイ・オプティコム 取締役 経営本部 副本部長の橘俊郎氏が登壇した。同氏は、固定回線を含めて通信事業を手がける同社において「mineo」が大きな柱になってきたことを挙げ、「総務省の議論も追い風になっている。MVNOは淘汰の時代に入ったというニュースもあったが、我々は“新しい普通”を目指す。差別化の難しいMVNOの中で、“新しい普通”をいかに提供していくか、提供し続けていくかが重要になる」と意気込みを語った。

ケイ・オプティコム 取締役 経営本部 副本部長の橘俊郎氏

 mineoの具体的な取り組みについは、ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの上田晃穂氏から語られた。

 上田氏は、順調に契約数を増加させており、既報の通り1月に入って契約数50万件突破を成し遂げたことや、MVNOの事業者シェアで4位に上昇、単月シェアでは1位になる月もあるなど、MVNOとして好調であることを紹介する。

ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの上田晃穂氏

 最近の傾向としては、音声通話に対応する、mineoの「デュアル」タイプの契約が74.5%とさらに増加しており、「メイン端末にするユーザーの割合が増えたのではないか」と分析した。

 女性ユーザーについても32.1%と、割合を拡大させることに成功しており、「女性にとっても、本格的にMVNOを選ぶ時代。(乗り換え期の)3月には多くのマジョリティ層の加入に期待したい」と語り、女性を対象にしたリアルイベントも継続していく方針。

 上田氏は、2017年3月に契約数55万件の目標を達成できる見込みとしたほか、事業開始当初からの目標である早期の100万件達成に向けた、新たな施策や戦略を明らかにする。

 より長期的な展望では、mineoの契約数は、2018年3月で104万件、2019年3月で152万件、2020年3月で200万件という推移を予想している。「市場全体よりも伸びてシェアを拡大する。まだまだ成長する」と、上田氏は積極的に契約数を伸ばしていく構えをみせる。

「マイネ王」は“成長エンジン”

 そのシェア拡大のための施策は、3つの柱で示された。

 1つは、差別化の施策としても打ち出されているコミュニティサイト「マイネ王」などの、ファン向けの施策。上田氏は、「マイネ王」の取り組みによる効果や実績を紹介し、「変わらぬ強みであり、財産であり、成長エンジン」と、今後も重視していく方針。

端末は全方位、初心者向けサポート拡充

 2つ目は、同日に発表された新端末や、「訪問サポート」などのサービス拡充。端末は初心者からベテランまで全方位に、サービスも初期設定の支援から5分かけ放題まで、安心感のあるラインナップとした。

認知度向上に向けたCMを全国で放映、旗艦店は渋谷に登場

 3つ目はこれまでやや手薄だった部分も含まれる分野で、より認知度を高めていく施策となる。具体的には、初めて全国を対象に放映する新テレビCM、大型キャンペーン、店舗整備が挙げられた。

 新テレビCMは、コミュニティサイトの「マイネ王」にかけて、王様に扮した葵わかなが登場。端末を新たに用意しなくても使えることをアピールするものと、「マイネ王」などでユーザー同士でパケットを分け合えるというmineoのユニークな特徴をアピールする、2種類の内容が制作されている。

 上田氏は新CMについて、「これからはMVNOを使うこと、MVNOを選ぶのが、新しい普通です、という想いを込めた。mineoの名前を覚えていただきたいのと、mineoにしかない独自の取り組みも取り上げた」としたほか、放映エリアについもこれまで関西、中部、関東だったことろを全国に拡大し、認知を全国的に広めていく考え。

 店舗整備については、すでに発表されていたように、東京・渋谷のセンター街という一等地に、直営の旗艦店「mineo 渋谷」を出店する。2月1日にオープンする予定で、即日渡しといった端末・サービスの販売のほか、1階にはMVNOにまだ関心の無い層も利用できるようなカフェを併設。4階には「マイネ王」をリアルに体験できるというフロアも用意される。なお、直営店などmineo専門の店舗は、当面は大阪、名古屋、東京(渋谷)の3つのみになる予定。

 また、即日開通に対応する対面販売での取扱店舗は、2017年3月末までに100店舗になる見込み。対面販売が可能な実店舗は今後も拡大していく。

 上田氏は、これら3つの取り組みを加速させていくことで、2017年度末(2018年3月)の100万件達成を目指すとした。

au網のAプランは現在も6割弱を占める、マルチキャリア対応モデルを推進

 質疑応答の時間には、au網のAプランとドコモ網のDプランの、2種類が提供されていることもあり、その割合が聞かれた。上田氏は、「50万件達成時点で、Aプランが28万件で6割弱、Dプランが22万件」と回答。後の囲み取材でも、Dプラン提供開始からしばらくはDプランが伸びたこともあり、Dプランが逆転すると予想していたというが、Aプランが衰えず、現在もau網のプランの割合が高いままになっているという。

 月間容量別でみたプランの割合は、500MBが10%、1GBが15%、3GBが60%、5GBが10%、10GBが5%とのこと。若い世代のユーザーが増えていることや、この世代は5GBや10GBといった大容量のプランを契約する傾向もあり、全体として容量の大きなプランの割合が高まっているという。

 au網を使うMVNOのブランドである「UQ mobile」の、積極的な拡販姿勢の影響を聞かれると、「影響はそんなに出ていない。なぜそんなに出ていないのか。MVNOそのものを宣伝していただいて、格安スマホの市場の認知が進んでいる。(ユーザーは)au回線のMVNOを検討しようとする中で、mineoも比較されているのではないか。(UQ mobileの攻勢で)目に見えてガクッと契約数が落ちたということはない」(上田氏)とした。

 端末ラインナップについて、マルチキャリア対応モデルを今後も継続するのかと聞かれると、上田氏は「マルチキャリアは特徴であり、できるかぎり採用していきたい。メーカーに対応してもらう協力体制が必要だが、できるだけいい端末を採用していきたい」とした。

 フィーチャーフォン型端末を投入する計画の有無については、「検討のひとつとして考えているが、どれぐらい選んでもらえるのか。ロットの縛り(調達数の下限)もあり、踏み切れていない」と回答している。

 ユニークな特徴であり“成長エンジン”と触れられた「マイネ王」については、マイネ王の会員のうちアクティブユーザーはおおむね10%程度とし、キャンペーン時には30%ぐらいになるとした。契約数のうち4割程度がマイネ王に加入していることになり、今後はこれを5割ぐらいにまで高めていきたいとしている。

 新しいテレビCMを全国で放映することに関連し、現在の地域別の契約数の割合が聞かれると、契約数の地域別の割合は、関東が37%、関西が30%、中部が11%、残りがそれ以外の地域とし、「CMを放映すると認知度が向上し、契約に結びつくことがデータでも見えてきた。全国でCMを放映し認知度が上がれば、入ってくれる人も増えるのではいかと期待している」と期待を語っている。

マイネ王を核に口コミでユーザー数拡大を図る

 発表会後の囲み取材では、帯域を確保し混雑時でも通信速度を落ちにくくした「プレミアムコース」の開始について、「2月1日から正式サービスを開始するが、ちゃんと速度を出さないといけないし、コストもある。品質とコストのバランスをとるために、ユーザー数を限定した形で開始する。ずっと限定されたままなのかというと、状況をみながらになる。気持ちとしてはできるだけ拡大していきたい」とし、正式サービス開始後もしばらくはユーザー数限定になるとした。

 総務省の改正ガイドラインに関連し、意見募集の段階で積極的に意見を表明していたケイ・オプティコムだが、「我々としては、できるだけ自然な競争が行われる環境になればいいなという考え。一部のキャリアが一部のサブブランドを優遇しているのか、していないのか、真実は分からないけれども、もしあるのなら、是正したほうがいいという思い。すべて、ユーザーの利益に還ってくること」などとして、競争環境の適正化を改めて訴えた。

 改正ガイドラインで触れられているキャリア内のSIMロック解除についても、「(主張が通るか形で)嬉しいです。逆に、なんでそこにSIMロックをするのかなと思っていた。同じキャリア配下のMVNOなので、SIMロックを解除しなくても使えるようにしていただきたい。元はそうだったが、ある時から厳しくなってしまっていた」と、元の環境に近づいたことを語った。

 比較的ユニークな料金プランとして、余った通信量の分を割引するIIJの「エコプラン」と、mineoのプランを比較されると、上田氏は「我々は、余ったらフリータンクに預けてくださいというスタンス。あるいは、毎月契約を変更できるので、自分にあったものに柔軟に変更できる。IIJと同じプランを出すことは考えていない」とした。

 mineoのサービス開始当初は、利用料の大幅な割引キャンペーンが実施されていたが、こうしたキャンペーンの終了と解約率の関係を聞かれた。上田氏は、現在は単純な利用料の割引から方針を変更していることを明らかにし、「(キャンペーンが終わると)目に見えてドンと解約率が上がるわけではないが、細かくみていくと、キャンペーン終了でちょこちょこと解約率が上がるタイミングがあり、そういう行動をするユーザーが一定数いることも分かった。キャンペーンの内容も修正してきている」としている。

 解約率については、「現在2%を切っており、ほかのMVNOと比べても低い。非常に嬉しいこと」としたほか、顧客満足度についも「MMD研究所の調査では、満足度調査もMVNO平均の80数%と比較して高く、92%程度になっている。料金が安いことはMVNO全体で評価されているが、mineoはパケットの有効活用度で非常に満足度が高い」とし、“企業姿勢”の項目でもマイネ王を通じた情報開示・共有が評価されているとしている。

 「マイネ王」を成長エンジンとして、ユーザー数を今後倍増させていくとう方針について懐疑的な意見が聞かれると、「CMは認知(の向上)で、選択の候補として覚えてもらうこと。キーになるのは、誰かに薦められて入ること。その力は強い。インフルエンサーになるのが、既存のmineoユーザーであり、マイネ王で活用しているユーザー。そういうユーザーの力、口コミの力は結構強いのではないか。マイネ王を核にしながら、いろんな手段で口コミが広がっていくことになれば、なんとか100万件をいけるのではないか」とした。

 これに関連して、マイネ王などで積極的に活用しているユーザーによる紹介数や、その後の解約率なども調査しており、想像や願望ではなく、データとしても、そうした力強い傾向が見えてきているとしている。

 一方、ほかのMVNOや企業の買収といった形で契約数を上積みしていく可能性については、「今後、MVNO市場の再編は起こってくると思う。KDDIがビッグローブを買収したが、それによって動く市場もあると思う。どこかと組む、買収する、そんなシナリオも考えられるとは思うが、単独でも100万件になるよう運営をしていきたい」と、ひとまず単独で100万件が目標であるとしている。

 一部のMVNOが提供してるコンテンツとのセット販売やカウントフリーについては、「dマーケットの販売代行をしている。今後の事業を考えると、SIM単体だけではなく、コンテンツと組み合わせる、コンテンツ+SIMにすることで、新しい価値、付加価値を感じていただけるようなことは、ぜひやりたいと思っている。具体的にいろいろと検討中。発表できるときになれば案内させていただく」と、前向きな方針が示された。

【お詫びと訂正 2017/01/20 0:13】
 初出時、「カウントフリーについて検討中」という旨で記載していましたが、「コンテンツとSIMの組み合わせを検討中」という内容に改めました。お詫びして訂正いたします。