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「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに

IoT、クルマ、Qi関連技術やF1.4カメラモジュールなども

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに マイクロソフトもゲストで登場したラウンドテーブルの内容を紹介
マイクロソフトもゲストで登場したラウンドテーブルの内容を紹介

 米クアルコムが10月17日~19日にかけて香港で開催した、メーカーおよびパートナー向けのイベント「2017 Qualcomm 4G/5G Summit」。基調講演やセミナーを通して、クアルコムのもつ製品や技術、トップ企業の動向などを説明するというものだ。一方で、メディア向けには別途、ラウンドテーブルも設けられ、担当者から各分野における同社の最新の取り組みについて語られた。

 ここでは、IoT、自動車、モバイルPCと、ほとんど全方位の産業に向けてアグレッシブな戦略を展開するクアルコムの姿勢を鮮明にしたそのラウンドテーブルの概要を紹介したい。また、同じ会場で開催された「4G/5G Summit Expo」に出展していた日本企業の技術をはじめ、興味深い展示のいくつかをピックアップしている。

「グローバルマルチモード」でIoT向けLTE通信を網羅する「MDM9206」チップセット

 日本でも商用化が間近に迫るIoT向けLTE(LTE IoT)について、クアルコム・テクノロジーズ プロダクトマーケティングのピーター・カーソン氏が解説した。

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに クアルコム・テクノロジーズ プロダクトマーケティング シニアディレクターのピーター・カーソン氏
クアルコム・テクノロジーズ プロダクトマーケティング シニアディレクターのピーター・カーソン氏

 現在は主に高速通信技術として用いられているLTEだが、これをIoTに応用するための仕様として、クアルコムではスマートフォンなどに用いる「LTE Cat-1」に加えて、「Cat-M1(eMTC)」と「NB-IoT(Cat-NB1)」の2種類を推進している。しかし、カーソン氏は「どれをどの用途に使えばいいかがわかりにくいという声もある」とし、使い分けの例を挙げた。

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 「LTE Cat-1」「Cat-M1(eMTC)」「NB-IoT(Cat-NB1)」のそれぞれの用途例
「LTE Cat-1」「Cat-M1(eMTC)」「NB-IoT(Cat-NB1)」のそれぞれの用途例
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 世界各国のLTE IoTの対応状況
世界各国のLTE IoTの対応状況

 Cat-M1については、あらゆる機器・アプリケーションへの応用力や低遅延が重視される、ある程度容量の大きいバッテリー(電源)が搭載されることを前提としたものに用いる。たとえばウェアラブルデバイスや自販機、セキュリティシステム、シェアサイクルなどに向いている。

 NB-IoTは、通信のリアルタイム性は求めない代わりに、徹底的な低コスト、低消費電力を追求しなければならない機器に用いる。数分や数時間ごとに通信し、少なくとも数カ月間以上はバッテリー交換なしで連続稼働するようなもの。たとえば工場や農場、街中に設置するセンサーに最適だとした。

 このような違いのあるCat-M1とNB-IoTだが、クアルコムではそれぞれに対して別のチップセットを用意するのではなく、両方に対応する1つのIoTモデムチップセット「MDM9206」のみを用意する。Cat-M1とNB-IoTのそれぞれのモードに切り替えて使用できる「シングルモード」と、それぞれの弱点を補完し、利点をある程度活かす「マルチモード」や「グローバルマルチモード」を選ぶことも可能になっている。

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに IoTモデムチップセット「MDM9206」。「シングルモード」「マルチモード」「グローバルマルチモード」の3種類のモードを用意する
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに IoTモデムチップセット「MDM9206」。「シングルモード」「マルチモード」「グローバルマルチモード」の3種類のモードを用意する
IoTモデムチップセット「MDM9206」。「シングルモード」「マルチモード」「グローバルマルチモード」の3種類のモードを用意する

 MDM9206はすでにリリースされており、China MobileやシェアサイクルのMobikeと協業して、中国国内での実証実験を計画中。また9月には、同様にMobikeがAT&Tと共同でMDM9206を使用したシェアサイクル事業を米国内でスタートさせる計画を発表したばかり(※関連記事)。

 日本国内ではキャリアによってCat-M1とNB-IoTのどちらを採用するかは異なるが、現在は各地でデモや実証実験が進められている最中。商用サービス開始後は、機能やコストの面でメリットの大きいMDM9206搭載機器を我々ユーザーが目にすることになる可能性は高いだろう。

自動運転を見据え、5Gを活用する車車間・路車間通信用「9150 C-V2X」チップセット

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに クアルコム エンジニア部門 シニア・バイス・プレジデント ドゥルガ・マラディ氏
クアルコム エンジニア部門 シニア・バイス・プレジデント ドゥルガ・マラディ氏

 クアルコムはコネクテッドカー分野にも新たな次世代チップセットを提供する。クアルコム エンジニア部門のドゥルガ・マラディ氏は、2018年後半にサンプル出荷を予定している車車間通信、路車間通信などを可能にする「9150 C-V2X」チップセットを紹介した。

 9150 C-V2Xチップセットは、4G LTEや5Gなどのネットワークを用いるセルラーV2Xを実現するもの。セルラーV2Xは現在開発が急ピッチで進む自動運転技術の一要素とされ、悪天候時や夜間の見通しの良くない環境で、死角にある車両や人の接近に気付くことができたり、前走車の挙動の意図を察知して前方の障害物をスムーズに回避したり、といったことが可能になる。

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 2018年後半にサンプル出荷される「9150 C-V2X」チップセット
2018年後半にサンプル出荷される「9150 C-V2X」チップセット
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに セルラーV2Xにより、死角にある車両や人を検知したり、前走車や周囲のクルマと情報を受け取ることで危険回避できるように
セルラーV2Xにより、死角にある車両や人を検知したり、前走車や周囲のクルマと情報を受け取ることで危険回避できるように
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに モバイルネットワークを介した通信、ダイレクト通信、RSU経由の通信で情報をやり取りする
モバイルネットワークを介した通信、ダイレクト通信、RSU経由の通信で情報をやり取りする

 こうした情報のやり取りは、従来型のモバイルネットワークを介して行なう方法と、セルラーV2Xの機器をもつ車両・人同士がダイレクトに通信する方法、あるいは道路脇に設置したRSU(ロードサイドユニット:路側機)を介して通信する方法のいずれかがとられる。

 9150 C-V2Xチップセットは、後者の2つの方法を強力にサポートする。ダイレクト通信やRSUを介した通信はITS(高度道路交通システム)における5.9GHz帯の周波数が用いられ、SIMなしで通信できるのが利点だ。

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 当初は3GPP Release14をベースとし、その後はアップデートに沿って安全性を進化させていく
当初は3GPP Release14をベースとし、その後はアップデートに沿って安全性を進化させていく

 クアルコムは、当初は標準化団体3GPPの定める「3GPP Release14」の規格に則った形で、車車間通信による「ベーシックな安全」を実現し、その後「Release15」「Release16」と規格がアップデートされるに従って、段階的により「高度な安全」を実現していく計画。Release16の時点では、5Gによる高速な通信が必要になる複数車両などとのコミュニケーションが可能になるとしている。

 クアルコムでは、Snapdragon 602A/820Aといった自動運転プラットフォーム用のチップセットや、電気自動車向けワイヤレス充電技術の「Halo」もリリースしている。これらの技術とも組み合わせ、自動車産業においても存在感を高めていく方針だ。

「Windows on Snapdragon」が“平行宇宙”にあった電話とPCが共に歩んでいくきっかけに

 WindowsをSnapdragonのプラットフォーム上でも動作させる、という発表があったのは2016年末。当初は搭載PCの2017年内の登場が期待されていたものの、いまだ何も見られない状況だ。マイクロソフト Windows部門グループプログラムマネージャーのピート・バーナード氏、クアルコム・テクノロジーズ プロダクトマーケティング部門のバイス・プレジデント ドン・マクガイア氏、英国の通信事業者EE and BTのトム・ベネット氏の3人が、現在の進捗について解説した。

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 左からEE and BTのトム・ベネット氏、マイクロソフト Windows部門グループプログラムマネージャーのピート・バーナード氏、クアルコム・テクノロジーズ プロダクトマーケティング部門 バイス・プレジデント ドン・マクガイア氏
左からEE and BTのトム・ベネット氏、マイクロソフト Windows部門グループプログラムマネージャーのピート・バーナード氏、クアルコム・テクノロジーズ プロダクトマーケティング部門 バイス・プレジデント ドン・マクガイア氏

 最も気になるのは「Windows on Snapdragon」のPCがいつ登場するかだが、現在はテストの最終段階にあるとし、製品のリリース時期や参画するメーカーについては明言を避けた。バーナード氏は「電話とPCはこれまで数十年間にわたってある意味“平行宇宙”にあったが、クアルコムとマイクロソフトは命令セットもマーケットチャネルも共にしていく」と述べた。

 PCにSnapdragonを採用する主なメリットは、バッテリー持続時間の大幅な向上と、モバイルPCを常時ギガビットネットワークに接続できること。対応する国・地域やネットワークについて、「名前は出せないが、多くのモバイルオペレーターと話し合っている」(バーナード氏)としつつも、「PCをモビリティへと向かわせる絶好の機会となる」と意気込んだ。

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 登場が待たれるSnapdragonで動作するWindowsモバイルPC。バッテリー持続時間が大幅に向上するというが、実力は未知数だ
登場が待たれるSnapdragonで動作するWindowsモバイルPC。バッテリー持続時間が大幅に向上するというが、実力は未知数だ

スマートフォンをさらに進化させる技術が展示された「4G/5G Summit Expo」

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 4G/5G Summit Expoの会場スペース。食事をとりながら商談できるようになっていた
4G/5G Summit Expoの会場スペース。食事をとりながら商談できるようになっていた

 「2017 Qualcomm 4G/5G Summit」の1プログラムとして同時開催された「4G/5G Summit Expo」では、日本から東芝と日本電産の2社が出展していた。また、海外企業は「紙のような自然な見栄え」を実現するディスプレイ調整技術、iPhone 8より高性能だとするカメラモジュールなども披露していた。それらを写真で紹介する。

「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 東芝はスマートフォンに用いられるメモリやメモリ技術、iPhone 8で再び脚光を浴びつつあるワイヤレス充電「Qi」用のICチップをアピール
東芝はスマートフォンに用いられるメモリやメモリ技術、iPhone 8で再び脚光を浴びつつあるワイヤレス充電「Qi」用のICチップをアピール
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに UFS準拠の3D積層技術を用いた64層の製品を2017年から量産している同社。2017年末からそのメモリを搭載したスマートフォンが登場する予定。2018年には96層に到達するという
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに UFS準拠の3D積層技術を用いた64層の製品を2017年から量産している同社。2017年末からそのメモリを搭載したスマートフォンが登場する予定。2018年には96層に到達するという
UFS準拠の3D積層技術を用いた64層の製品を2017年から量産している同社。2017年末からそのメモリを搭載したスマートフォンが登場する予定。2018年には96層に到達するという
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 東芝はワイヤレス充電規格「Qi」用のICチップも開発している。5/10/15Wの3種類の出力に対応する製品をラインアップする
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 東芝はワイヤレス充電規格「Qi」用のICチップも開発している。5/10/15Wの3種類の出力に対応する製品をラインアップする
東芝はワイヤレス充電規格「Qi」用のICチップも開発している。5/10/15Wの3種類の出力に対応する製品をラインアップする
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 日本電産が展示していた振動モータ。超小型にもかかわらず、「オーバードライブ」によって電圧を瞬間的に高められるようにし、メリハリあるハプティクスを実現する
日本電産が展示していた振動モータ。超小型にもかかわらず、「オーバードライブ」によって電圧を瞬間的に高められるようにし、メリハリあるハプティクスを実現する
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 既存端末の裏に振動モータが取り付けられているデモ用実験機
既存端末の裏に振動モータが取り付けられているデモ用実験機
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 動画のサウンドや、あらかじめ作成したプログラムに沿って振動モータが稼働し、リアリティのある振動を手に伝えるデモ。ボールが転がるわずかな振動と、ボールが容器の側面に当たる瞬間的な振動などがはっきり区別できる
動画のサウンドや、あらかじめ作成したプログラムに沿って振動モータが稼働し、リアリティのある振動を手に伝えるデモ。ボールが転がるわずかな振動と、ボールが容器の側面に当たる瞬間的な振動などがはっきり区別できる
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 絞り値F1.4を実現するアイリスフィルターを内蔵するカメラモジュールも日本電産の製品。F1.4はスマートフォン向けのカメラモジュールとしては現段階で最高クラスの性能だという
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 絞り値F1.4を実現するアイリスフィルターを内蔵するカメラモジュールも日本電産の製品。F1.4はスマートフォン向けのカメラモジュールとしては現段階で最高クラスの性能だという
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに 絞り値F1.4を実現するアイリスフィルターを内蔵するカメラモジュールも日本電産の製品。F1.4はスマートフォン向けのカメラモジュールとしては現段階で最高クラスの性能だという
絞り値F1.4を実現するアイリスフィルターを内蔵するカメラモジュールも日本電産の製品。F1.4はスマートフォン向けのカメラモジュールとしては現段階で最高クラスの性能だという
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに AMS-TAOSという米国企業が展示していた「ペーパーライクな見た目を実現する」カラーセンサー。左側が同技術を用いた端末。照明の色温度を変えても瞬時に適切な色合いに切り替わり、周囲の印刷物と遜色のない自然な見た目となる。対して右側の従来端末は青みがかり、暗く感じる
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに AMS-TAOSという米国企業が展示していた「ペーパーライクな見た目を実現する」カラーセンサー。左側が同技術を用いた端末。照明の色温度を変えても瞬時に適切な色合いに切り替わり、周囲の印刷物と遜色のない自然な見た目となる。対して右側の従来端末は青みがかり、暗く感じる
AMS-TAOSという米国企業が展示していた「ペーパーライクな見た目を実現する」カラーセンサー。左側が同技術を用いた端末。照明の色温度を変えても瞬時に適切な色合いに切り替わり、周囲の印刷物と遜色のない自然な見た目となる。対して右側の従来端末は青みがかり、暗く感じる
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに イスラエル企業Corephotonicsが開発するスマートフォン用の光学ズーム搭載デュアルカメラモジュールの展示
イスラエル企業Corephotonicsが開発するスマートフォン用の光学ズーム搭載デュアルカメラモジュールの展示
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに こちらはiPhone 8によるカメラ映像。光学ズームは2倍
こちらはiPhone 8によるカメラ映像。光学ズームは2倍
「Windows on Snapdragonはテストの最終段階」、クアルコムのイベントで明らかに こちらがCorephotonicsのカメラ映像。iPhone 8の映像と比べ、細かい文字もより精細に見え、色合いも美しい。最大3倍の光学ズームに対応し、スマートフォンに搭載した場合、iPhone 8よりも1.5mmほど本体を薄く作ることができるとしている
こちらがCorephotonicsのカメラ映像。iPhone 8の映像と比べ、細かい文字もより精細に見え、色合いも美しい。最大3倍の光学ズームに対応し、スマートフォンに搭載した場合、iPhone 8よりも1.5mmほど本体を薄く作ることができるとしている