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クアルコム、“通常サイズ”の5G NRスマートフォンを披露

5G対応の商用スマートフォンは2019年に登場予定

Qualcomm Technologiesのクリスティアーノ・アモン氏がキーノートスピーチ。壇上にはゲストも招いた

 クアルコムは10月17日~19日にかけ、メーカーおよびパートナー向けのイベント「2017 Qualcomm 4G/5G Summit」を香港で開催し、5Gモデムチップセット「Snapdragon X50」の概要と、X50を搭載し5Gの新周波数帯(5G New Radio/5G NR)に加え、2G/3G/4Gにも対応したリファレンスモデルのスマートフォンを披露した。5Gに対応するスマートフォン製品は2019年中の登場を予告している。

「2017 Qualcomm 4G/5G Summit」の会場となった香港のKerry Hotel Hong Kong

Sub-6GHz帯で5Gのメリットを広範囲に

Qualcomm Technologies エグゼクティブ・バイス・プレジデント クリスティアーノ・アモン氏

 初日のキーノートには、Qualcomm Technologies エグゼクティブ・バイス・プレジデントのクリスティアーノ・アモン氏が登壇した。同氏は、あらゆる産業において世界的にデータ通信のニーズが高まっており、モバイル通信のトラフィックは2020年、2014年比で30倍になるとの予測を紹介。消費者が望む「制限のない超高速なデータ通信」を実現する新しい技術として5Gが期待されており、その周辺産業は2035年までに12兆ドルのビジネス規模に達すると述べた。

モバイルデータトラフィックは、2020年に2014年時点の30倍に
5G周辺産業のビジネス規模は2035年までに12兆ドルへ

 クアルコムがそれに対して用意するソリューションの1つとして、アモン氏は世界初の5Gデータ通信が可能な5G NR対応チップセット「Snapdragon X50」モデムファミリーを紹介。X50モデムファミリーについては2016年の時点ですでに発表されており、2017年2月の「Mobile World Congress」では実験機も展示していたが、この日はX50による5Gデータ接続に成功したことを新たに明らかにした。

Snapdragon X50モデムファミリーを手にするアモン氏
同日、5Gデータ接続に成功したことも明らかに

 X50モデムファミリーでは、28GHzという高周波数帯のミリ波を用い、1Gbpsをはるかに超える超高速ワイヤレス通信を通常2ミリ秒以下という低レイテンシーで実現する。ただし、24GHz以上として定義されるミリ波による通信は、主に基地局からの距離によって通信速度の安定性が大きく左右される。

クアルコムとともに5Gネットワークや5G機器の普及に取り組むEricsson 東南アジア地域担当のルカ・オルシーニ氏が壇上に招かれ、講演
各国で5Gへの割り当てを計画している周波数帯、利用開始時期は異なるが、主にSub-6GHzと26〜28GHzに集中している

 したがって、ミリ波は基地局同士を近づけてメッシュ状に配置できる主に都心部で有効な周波数ではあるものの、そうではない郊外では十分なパフォーマンスを発揮できない。それを解決する1つの手段として、X50モデムファミリーではSub-6GHz(6GHz以下)の周波数帯にも対応する。

5G NRはSub-6GHzとミリ波の周波数をカバーする
都心部でミリ波帯を、その周辺の広範囲でSub-6GHzを、地方で従来のLTEをそれぞれ利用することが想定されている

 また、5Gの商用サービス開始後も、既存のスマートフォンや基地局を置き換えることにはならないため、当然ながら従来の2G/3G/4Gネットワークを即、廃止することはできない。世代の異なるネットワークが混在する地域でも利用できるよう、X50モデムファミリーではさらにそれら2G/3G/4Gネットワークのサポートをワンチップに統合した「マルチモード」も実現する。

 同氏は、このX50モデムファミリーを搭載し、5G NRに対応するスマートフォンのリファレンスモデルの実物を披露した。5Gの基幹要素であるMIMO、ビームフォーミングのほか、従来の2G/3G/4Gにも対応するため、アンテナモジュールをはじめとする多数の部品が必要となってくるが、今回、披露された試作機は幅76×高さ157.25×厚さ9.7mmという、近年のハイエンドスマートフォンとさほど変わらないサイズ感を達成している。

5G NR対応のリファレンスモデルを披露
プロトタイプ(中央)では大きな出っ張りがあったが、今回のリファレンスモデル(右)は一般的なサイズに収まっている
ミリ波に対応する部分については、特に端末サイズへの影響が大きいことから、アンテナモジュールのサイズや配置、入力する電力などにかなりの工夫が必要になったもよう

 2017年後半にはX50モデムファミリーのサンプル出荷を開始。日本のNTTドコモのほか、AT&T、Sprint、China Mobile(中国移動)、SK telecom、Vodafone、Ericssonなどにより、2019年前半まで5Gの技術や製品の検証が行われるとともに、3GPPによる5G NRの仕様策定が完了する予定。実際に5G NRに対応したスマートフォン製品は、2019年後半以降にリリースされる見込みだ。

ソニーモバイルコミュニケーションズの村田和雄氏も壇上に
ギガビットLTE対応のXperia XZ Premium開発の経験をもとに、5G対応スマートフォンの開発検証を進めている同社。手で握ると減衰が大きくなるためアンテナを増やすなど、さまざまな調整が必要になることを示唆した
5Gに関しては、同社のスマートフォンからソニーグループのゲーム機やAV機器、家電など横方向への展開も進めていく計画だとした
5Gは2019年下半期以降に本格的な商用サービスのスタートを見込む
5Gの入口となる、ギガビットLTE対応のスマートフォンも紹介された