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「Google Play Musicはコンテキストを理解する」、開発担当者に聞く

機械学習でユーザーの生活にマッチした音楽を提供する狙い

 11月14日、グーグルの定額制音楽聴き放題サービス「Google Play Music」がリニューアルした。

 リードプロダクトマネージャーである米グーグルのイライアス・ローマン(Elias Roman)氏は「マシンラーニングのアルゴリズムを踏まえて、ユーザーのいる場所やしていることにあわせて音楽を提案する。ユーザーから音楽を探すのではなく、音楽のほうがユーザーに近づいてくる。Google Play Musicはコンテキスト(文脈)を理解するようになった」と語る。

ビデオ会議で取材に応じたローマン氏

好みを理解するだけでは不十分

 リニューアルした「Google Play Music」は、各種メニューはそのまま、アプリを開いてすぐ表示されるファーストビューに表示する内容が大きく変化した。これまでも、曜日や時間帯にあわせて、「深夜にリラックスしながら聴きたい曲」などのプレイリストや、ユーザーの好きなアーティストや曲をもとにした新たな曲のプレイリストを提案してきた。これらは、エキスパートという音楽分野に長けたスタッフが整備した曲をもとにしたもので、時間帯などにあわせて掲出していた。

 リニューアルでは、そうした機能に加えて、新たにマシンラーニングのアルゴリズムで曲を提案するようになった。ユーザーが職場にいるのか、自宅にいるのか、あるいは空港にいるのか……といったロケーション情報、普段聴いている曲などから、最適な曲のリストを提案する。もちろんリストは1種類だけではなく、複数のリストがラインアップされ、その中からユーザーが好みのものを選ぶ形。ローマン氏は「ユーザーの好みの曲を学習して、それにあわせた別の曲を提案するだけでは不十分。ベストなパーソナライズは、ユーザーの好みに加えて、“ユーザーが何をしているか”にあわせること」と胸を張る。

空港にいるユーザーに提案するプレイリスト

 職場にいて集中したいであろう場面では歌詞のない音楽だけを提案したり、空港でフライトを待っているとリラックスしたプレイリストを提案したりする。天気や気温にあわせたリストもあり、たとえばローマン氏は夕暮れ時にあわせたプレイリストを再生しつつ、自宅のバルコニーから日が沈む様子をしばし楽しんだこともあるのだという。

 そうしてユーザーのシーンにあわせた楽曲の提案をするようになって以降、グローバルでのリコメンドされたプレイリストの再生時間は10%増える、という実績を残している。

火曜日の夜にあわせた曲、あるいは歌詞のない曲のリスト。仕事中であることを推測して提案したものだ

 なお、マシンラーニングではユーザーの年齢や性別といった具体的な個人的な属性は用いてない。ただ、ユーザーの全ての行動がリコメンドに向けた情報源になる、とローマン氏。これまでGoogle Play Musicを使っていなかったユーザーが、新たに利用しはじめた場合は、ユーザーに関する情報がないため、近隣のエリアで人気の曲などが提案され、パーソナライズされたリストはまったく含まれない。ただ、ユーザーが選んで聴いた曲やジャンル、時間、場所などの情報を徐々に学んで行き、より最適な提案をしていく。

日本で人気のプレイリストは

 日本でサービスが提供されて1年経ったGoogle Play Musicだが、ローマン氏は「日本では朝が非常に重要だ」と語る。そこで“トータルモーニングソリューション”なるカテゴリーを開発したところ、日本では一番人気のカテゴリーになったという。

 ちなみに、Google Play Musicは、提供楽曲として独占的に配信するような取り組みはしていない。もちろん福山雅治やスピッツなど、他の定額制音楽配信サービスでは聴けないアーティストの曲が含まれているが、これは個別交渉により、他社に先駆けて配信が可能になっただけなのだという。

 なお、スマートフォンから直接クラウドへ楽曲をアップロードする機能はないが、社内で議論中だという。アジア太平洋地域である程度のニーズがあると見られるため、日本チームから今後提案していきたい、と日本オフィスの担当者である鬼頭武也氏は説明。また楽曲再生中の歌詞表示機能については、一部の洋楽でサポートされているものの、Google Play Musicはユーザーの生活シーンにあわせたBGMのような楽曲再生サービスを志向しており、カラオケに備えてディスプレイを見ながら歌を聴く……といったニーズへの対応はさほどプライオリティが高くないようだ。

オフラインでの利用も先回りして

 ローマン氏は今後のGoogle Play Musicについて「エキスパートが作るコンテンツのライブラリを拡充、改善していく」「マシンラーニングへ今後も投資する」「コンテキストをより理解したい」という3つの目標があると説明する。

 時期は未定ながら、今後、スマートフォンのオフライン再生を利用する場合でも、ユーザーの行動を予測して、あらかじめ聴きたくなるであろう楽曲をダウンロードしておく、という機能を導入したいのだという。オフライン再生では、モバイル通信で楽曲をダウンロードすることになるが、通信環境がない、あるいは通信料が高くなったりする。このためオフラインでは新たな曲をダウンロードしたりキャッシュしたりしないような設定も可能だが、この部分を先回りしておいて、たとえば出勤前の時間、自宅のWi-Fiに繋がっている間に、ユーザーが聴きたくなる曲を先回りしてダウンロードする、といった機能になるようだ。