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KDDI、既存ユーザー重視と“UQ mobile推進”明確に

第2四半期は増収増益、au契約数は減少傾向

 KDDIは、2017年度第2四半期決算を発表した。

 2016年4~9月の売上高は2兆3016億円、営業利益は5326億円と前年同期比で増収増益となった。KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は「今期の目標に向けて順調な進捗となった」と総括している。

KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏

契約者は減少、既存ユーザー向けサービス拡充も

 増収をけん引したのは国内通信料収入。auのモバイル通信料収入は前年同期比1.7%増加し4472億円となった。販売コストは340億円削減され、利益を押し上げた。ユーザー1人当たりのモバイル通信料(au通信ARPA)は、5840円と増加。「auスマートパス」などの付加価値サービスの収入も加えた総合ARPA(auユーザー1人当たりの収入)は、6340円となった。

 一方で、契約者数については、「au契約者がMVNOに流出しており、契約数はマイナス傾向にある」(田中氏)という。大容量のデータ定額「スーパーデジラ」やLTEフィーチャーフォン向けの料金プランなど、ユーザーの利用状況にあわせた料金プランや、「au STAR」など既存ユーザー向けのサービスによって、顧客満足度を高めて引き留めを図るとしている。

UQ mobileを推進

 auの既存ユーザー向けのサービスと並んで強調された事業が傘下のUQコミュニケーションズが提供するMVNOサービス「UQ mobile」だ。当初2機種だったラインナップは12機種に増加し、CMを全国展開してプロモーションを強化している。UQ mobileは、他社の格安スマホユーザーをはじめ、スマートフォンを手ごろな価格で利用したいユーザーに向けてアプローチしていくという。

au STARを軸に「au経済圏」を拡大

 通信以外のサービス分野では、新たに開始した「auでんき」や金融サービス(損保、生命保険、住宅ローン)を成長させる方針を説明。DeNAからショッピングモール事業を買収するなど、強化しているコマース事業との両輪で「au経済圏」を拡大していくと紹介。

 サービスやユーザー接点の拡充と並行して、「auかんたん決済」や「au WALLET」などの決済プラットフォームを強化していく。

ミャンマー事業は安定成長

 KDDIはミャンマーのキャリアMPT、モンゴルのキャリアMobicomとの提携して事業を展開している。また、米国ではMVNOとしてサービスを提供している。これらの海外のコンシューマー向け事業が、KDDIのグローバル事業の成長要因になっているという。海外キャリア向け事業も含まれるグローバル事業セグメントは減収となっているが、田中氏は「大半は為替の影響」として、安定成長しているという認識を示した。

田中社長一問一答

囲み取材に答える田中氏

 質疑応答や囲み取材では、購入補助についての方針などを中心に質問された。囲み取材の中で田中氏は、11月に新端末を発表すると明らかにした。なお、総務省の端末補助に関する厳重注意についてのコメントは、別記事も参照いただきたい。

――通信ARPAや一人当たりのデバイス数の伸びが少ないように思う。伸び代をどう見るか。

田中氏
 ARPAは、当期の予想が5730円だったところを上回った5840円と順調に成長している。1人当たりのデバイス数も、上期末で1.425台とまあまあ順調だ。ARPAに掛け算して収益となる契約者数は、MVNOに流出していることでマイナス傾向となっている。顧客満足度を高めてauに残ってもらうための施策を展開している。

――総務省が10月7日付で行った厳重注意の影響や感想は。

田中氏
 昨日(10月31日)、指導で求められたことについて報告した。報告の中で、クーポンを重ねることでガイドラインを踏み出した形があったため、口頭で注意を受けた。複数のクーポンを組み合わせると(実質0円から)数百円プラスになるものがあったという。端末購入補助の適正化に向けて、ガイドラインにあった形で是正していくよう、適切に対応していく。

――ガイドラインを踏み外した原因は。

田中氏
 複数のクーポンがケースバイケースで出ている。複数重ねるとガイドラインを超えてしまう。運用が徹底されていなかったと指摘されるとその通り。

――総務省はKDDIが故意で行ったとみているが、事前に実質0円を下回る可能性を認識していたか。

田中氏
 ケースバイケースでいろいろなクーポンを発行していて、いろいろ重ねて適用されるとそういった状態(実質0円以下)になっていた。会社としては、ガバナンスをちゃんとやっていけないと反省している。

――クーポンは今後修正していくか。

田中氏
 株主優待券などいろんなものがあって、クーポンに対する考えが甘かった。発行したものを「ダメだった」とこれから修正していくことになる。株主優待券はまだまだ大変だが、急ぎのものは発表させていただいた(10月31日付でiPhone向けの発行済みクーポンの割引金額を減額している)。

――ガイドラインが端末販売に与える影響はどうか。

田中氏
 当初の想定通りとはなっていない。販売数は昨対比で低下している。「端末が売れない」という状況につながている。打開するには、魅力的な端末やサービスを増やすしかないと思う。

――秋冬モデルの端末ラインナップが少ないようだが。

田中氏
 新たな端末を11月中に発表するが、こじんまりとした製品発表になる。秋冬向けに「Galaxy Note 7」も準備していたが、海外で全品回収になったため提供できなくなった。

――新規契約に対する販売奨励金には影響が出るか。

田中氏
 新規契約への奨励金は、基本的には(端末販売ではなく)通信サービスに対するものなので、自由で設定できる。しかし、それが端末販売と「密着している」と認識されてくると当然影響は出てくる。今回、総務省がガイドラインの適用をより厳しくしている中で、そうした可能性はある。

 そうなると、端末が売れない状況になる。結果として、販売奨励金の金額も下がる。販売奨励金の負担が減り当社としては増益につながるが、「au STAR」などを通じて、既存ユーザーへの還元を増やしていく。

――NTTドコモは「実質650円」の低価格端末(MONO MO-01J)を発表したが、そのような値付けを行っていくのか。

田中氏
 ドコモの端末はガイドラインの対象外になる低価格な端末と認識している。auでは自社ブランドの低価格端末としてQuaシリーズを提供している。価格設定については、社内で検討している状況。

――UQ mobileではauショップと共同展開しており、「大手キャリアのリソースを使うのはずるい」という声もあるが。

田中氏
 ご指摘いただいたのは「UQスポット」(※関連記事)についてだと理解しているが、今までもauではユーザーの利便性を高める取り組みは、外部の企業と協力して展開している。ケーブルテレビ各社とはauスマートフォンの販売で協力している。

――中古端末の流通についてどう認識しているか。

田中氏
 中古流通業者は正規に購入して転売しているだけなので、キャリアがどうのこうの口を出す立場にはない。我々としては、規制などは一切かけていない。