インタビュー
「WSD-F10」開発者インタビュー
カシオならではのこだわり満載のアウトドア向けスマートウォッチ
(2016/2/17 11:24)
今年1月、米ラスベガスで開催された展示会「CES 2016」において、カシオ計算機は同社初となるAndroid Wear搭載スマートウォッチ「WSD-F10」を発表した。日本では3月下旬に7万円(税別)で発売を予定している。
Android Wearのスマートウォッチというと、日本ではLGやサムスン、ソニー、ASUS、ファーウェイなど、スマホメーカーがスマホ周辺機器として展開しているが、カシオはそれらスマホメーカーとは異なり、G-SHOCKなど腕時計メーカーとして、WSD-F10を開発している。そのため、アウトドアアクティビティ向けというコンセプト、腕時計としての使い勝手や付け心地にこだわったデザイン、複数ボタンや2層液晶といった独自仕様など、ほかのAndroid Wearとはひと味もふた味も違う製品に仕上がっている。
今回はこのWSD-F10についての開発の経緯や特徴などを、商品企画を担当した羽村技術センター 新規事業開発部 企画管理室室長の坂田勝氏、内部機構設計を担当した同部 第三開発室リーダーの大村明久氏、筐体デザインを担当した羽村技術センター 時計事業部 デザイン開発部 第一デザイン室 室長の花形茂氏、画面デザインを担当したデザインセンター プロダクトデザイン部 第二デザイン室 室長の花房紀人氏、同じく第二デザイン室の森谷信一氏にお話を伺った。
――商品カテゴリー名として「スマートアウトドアウォッチ」、型番として「WSD-F10」となっていますが、G-SHOCKやEXILIMといったブランド名がありません。どう呼べば良いのでしょうか。
坂田氏
弊社の「QV-10」(現在のデジカメの元祖とも言える、1995年にカシオが発売した一般向けデジカメ)に近いイメージです。当時は「EXILIM」のブランドはなく、ただQV-10と呼んでいました。同様にこちらは「F10(エフテン)」と呼んでいただければと思います。
まったく新しい商品のため立ち位置が決まっていないので、今回は既存ブランドを使わず、まず「こういったカテゴリーはどうですか」という新規提案のスタンスで発売します。
ちなみに、表向きはWSDは「ウェアラブル・スマート・デバイス」の略です。裏の意味は「ワクワク、そして、ドキドキ」です。「ウェアラブル」と言われてしまうと、「効率」や「管理」などのキーワードが出てきてしまいます。しかし、我々は身につけることでドキドキするものを狙っていきたいと考えています。QOL(クオリティ・オブ・ライフ)ではないですが、心も含めて豊かになるとか、そういったウェアラブルを目指したいという気持ちがあり、このような裏の呼び方にしています。
そして、「F」の方は「フィールド」です。今後、アウトドアフィールド以外の方向性の製品も増やしていければ、と考えています。
――WSD-F10はいつ頃から開発をされていたのでしょうか。
坂田氏
リスト型のウェアラブルデバイスとしては、2011年の終わり頃から話が出ていました。2012年春から開発を開始して、試作機を何個か作り、現在の形は3代目になります。足かけ4年、3度目の正直で製品化に至りました。
実は、最初はスマートフォンをそのまま小さくする発想で試作機を作りましたが、「何でもできるけど、何に使ったら良いかわからない」というものになってしまいました。そこで、まず何に使えるかをハッキリさせて、そこに最適なものを積み上げる、という方向性で開発に取り組み、現在の製品になっています。
――カシオとしては、Bluetooth対応のG-SHOCKなども製品化されています(初代であるGB-6900は2012年3月発売)。そういったものと並行して開発していたということでしょうか?
坂田氏
Bluetooth対応のG-SHOCKは時計事業部の製品になります。WSD-F10は新規事業開発部という、新しいジャンルの製品を立ち上げる部署の製品です。IoTなど多数あるアプローチの中で、今回ウェアラブルというものを選び、その中でカシオ計算機が得意とするリストデバイスを選んだ、ということになります。全然違う部署が作っている、という経緯があります。
――新規事業開発部はどういったメンバーが集まっているのでしょうか。
坂田氏
部長の南は時計事業で開発や商品企画をやってきた人物なので、時計をよく知る人物が旗振り役ですが、ほかは元々いろいろな分野をやっていたメンバーが揃っています。私は元々ネットサービス担当ですし、デジカメや時計、ケータイをやっていたメンバーもいます。時計を経験していないメンバーの方が多いですね。
――新規事業開発部は昨年から社長直下の組織になったということで、プレッシャーがかかったりとかは?
坂田氏
トップダウンのプレッシャーはほとんど感じません。現在の樫尾和宏社長は、社長就任前から新規事業開発部を見ています。社長は優しいというか、温かい目で見ていただけています。失敗しても次がある、と。実際、2回の試作は失敗として商品化できず、これが3度目の正直でもあるので、トップダウンというよりは、自分達自身にプレッシャーがかかっています。(笑)
――以前の試作機はAndroid Wearではないようですが、最終的にWSD-F10はAndroid Wearを採用しています。なぜAndroid Wearを採用したのでしょうか。
坂田氏
スマートウォッチはスマートフォンと連携するというのがベースの考えになります。アプリを使う用途を考えると、スマートフォンやアプリと親和性のよいプラットフォームとして選びました。
――オープン性でしょうか。
坂田氏
それもベースにはあります。弊社では手首を「情報機器の一等地」と呼んでいます。人間はいろいろな場所にいろいろなものを身につけますが、腕時計には手首という最高の場所に身に付ける100年の文化があります。そして今までの腕時計は、アナログ針でもデジタルでも、情報を表示するだけでした。それがスマートデバイスになると、表示するだけではなく、センサーやマイクなどの入力にも使います。
たとえば、試作一号機にもマイクがあります。音声を使う用途は、発想として元々ありました。音声も活用できるものとしては、プラットフォームとしてAndroid Wearが最適解だったかな、と思っています。
――そういえば、そもそもAndroid Wearがリリースされたのは2014年ですね。
坂田氏
試作機の段階ではAndroid Wearはありませんでしたね。しかし、Android Wearを選んだ一番の理由は、ウェアラブルに最適化されているということがあります。スマートフォンやタブレット向けのAndroidは、消費電力や処理能力を考えると余計なライブラリーがたくさんありますが、Android WearではそれらをGoogleが最適化しています。
――逆にAndroid Wearで足りないと感じる部分はないのでしょうか。
坂田氏
足りないと言うより、「我々としてはこうしたい」という思いはあります。一昨年、我々はGoogleに「伝統的な部分と先進的な部分を融合させたい」と提案しました。クラウドサービスなどの先進的な部分だけでなく、腕時計の伝統的な良さはできるだけ踏襲したいという気持ちがベースとしてあります。Googleに対しては、「OSを使わせてください」ではなく、「我々はこれを作りたいので認めてください」というスタンスでした。
――Android Wearに手を入れた部分があるのでしょうか。
坂田氏
OS部分というより、使い勝手の部分で独自の要素があります。たとえば、従来のAndroid Wearに無かったものとしては、複数のボタンが搭載されています。そして、2つの液晶を重ねているのも独自の要素です。
細かいところでは、Android Wearのアンビエントモード(しばらく操作をしないと自動移行する省電力表示モード)では通常、1分に1回しか表示を更新しません。しかし、時計のメーカーとしては、「時計は秒まで表示する」という考えがあります。そうしたことを実現するために、2つの液晶で秒まで表示したいと提案しました。
――そのあたりはGoogleがAndroid Wearを修正したのでしょうか。
坂田氏
基本は我々の方で開発を行い、もちろんGoogleも協力してくれました。でも、最初は「そんな仕様はやめた方が良い。こんな液晶だってある」と言われました。こちらとしては、そういったことも調べた上での話です。最初はなかなか話がかみ合いませんでした。
それでも、試作機が完成し、モノクロで秒まで表示できるものを見てもらったところ、先方にもこちらの考えを理解いただき、スイッチが入りました。最終的には先方から「こんなこともできる」というような提案を逆にいただけるくらいになりました。やはりモノじゃないと伝わらない経験があると実感しましたね。
腕時計としての良さを損なわないこだわりのデザイン
――G-SHOCKなど既存ブランドは使っていませんが、デザインを見ると「カシオだね」と感じます。どのようにデザインされたのでしょうか。
花形氏
デザイン担当としては、2年前に坂田から、既存のスマートウォッチとは違う、時計を作っている我々の観点を入れたものをデザインして欲しい、と言われました。
中間試作というか、内容が固まりきるちょっと前に、諸条件をもらって仮に仕上げたデザインがこちらです。ほぼ実機と変わらず、あまりプロトタイプっぽくないですが、これを2年前に作り、これなら商品化できると判断してもらいました。
当時からボタンなどの仕様・スペックは決まっていました。あとは時計のデザインエッセンスをいかに入れるか、です。そこには視認性と装着性、操作性、そして画面の保護などの信頼性という、4つポイントがあります。
たとえば、画面保護の信頼性で言うと、画面を下に本体を落としても、ベゼルがあるので表示面のガラスは地面に接しない形状になっています。操作性で言うと、上下左右にスワイプするので、ベゼルの高さなどを調整して操作を妨げないようにしました。G-SHOCKなどのデザイン手法を使いつつ、この機種ならではの操作も盛り込んでいます。
それから、この大きさでも手に馴染むバンド取り付け方法も考えています。カシオ計算機の腕時計には大きいものも多いので、このあたりにはノウハウ蓄積がありました。バンドの取り付け角度や取り付け方法など含め、ノウハウを注ぎ込んでいます。実際に装着してもらうと、やはり大きいのですが、違和感はないかな、と。
――デザイン面でもアウトドアっぽさがありますね。
花形氏
そうですね。コンセプトとしては、社内では「スマートツールデザイン」と呼んでデザインを進めています。アウトドアの道具の世界観を時計のデザインに活用しています。カラーリングもオーソドックスなアウトドアツールのイメージから配色しています。
――バンドの交換はできないのですね。
花形氏
バンド交換はファッションのためという側面が大きいですが、WSD-F10はアウトドアツールとしてのリストデバイスなので、装着性を第一とし、バンド交換は考えていません。
見やすさという腕時計の根本のためのUIデザイン
――ウォッチフェイスなどのUIデザインもほかのAndroid Wear端末とだいぶ違いますね。
花房氏
スマートウォッチは何でもできるので、製品として見ると、各メーカーの色を出しにくいのです。市場に出ているAndroid Wearは、画面はほとんど同じで、ボディ側のデザインでメーカーの色を出そうとしています。しかし、カシオはそういったことではなく、用途からデザインしよう、というスタンスです。
その一環として、センサー情報やスマホ経由でのクラウドの情報、カシオオリジナルアプリの情報を見やすく画面上で提供することを商品価値の根本部分として取り組み、インターフェイス画面もイチから作りました。情報を直感的に伝えるとか、そういった部分に注力しています。
――ウォッチフェイスやツールはわかりやすいですね。
花房氏
とくにセンサー情報を見せるところについては、あえて色数を絞り、黒バックにコントラストの高い色使いで情報を見せるデザインにしています。基本的に赤と青に限定し、それぞれ画面ごとに意味を定義して、パッと見たときに迷わず理解できるように作っています。
また、画面を静止画にはせず、動きも込みで見やすさ・気持ちよさをデザインしました。モーションであったり、切り替えトランジションにもこだわりを持っています。
森谷氏
腕時計は毎日、目に触れるものなので、飽きの来ないものである必要があります。そこで、ミニマムでコントラストを大きく、色数は少なくしています。それが情報を瞬時に伝えるために必要な要素なのかな、と考えました。
そうすると、地味になってしまうのでは、ということになりそうですが、コンパスや高度計などのいろいろな機能それぞれに個性を持たせ、たとえばパッと見でコンパスと高度計の違いがわかるよう、違いを顔として表現しました。
もう一つが動きです。フラットデザインとなると、ベタっとしたものになってしまいます。そこを動きによって空間の広がりを表現し、たとえば画面の奥に逃げていくようなモーションを付けたりしています。
――Google側からデザイン面で注文が入ったりはしなかったのでしょうか。
坂田氏
もちろんデザインのガイドラインもありますが、注文が入るようなことはほとんどありませんでした。逆に試作機を見せたところ、彼らにも気に入ってもらったというか、たとえばカシオらしいウォッチフェイス画面なども、先方のエンジニアにはウケが良かったです。
花房氏
もともとフラットデザインはアップルやGoogleが作ったスマートフォンのための方法論ですが、スマートウォッチとも相性が良いのです。各社のスマートウォッチでは、アナログ時計の輝きや針の印影などを一生懸命に描こうとしていますが、その結果、正面から見れば時計らしいのですが、実際には正面から見ないことも多く、逆に違和感につながる場合もあります。
WSD-F10ではウォッチフェイスでもツールの画面でも、あえてフラットにしています。あくまで表示しているのは情報であり、モノではない、という考えです。そこに動きが加わることで、豊かな質感や情報の深みが出せると良いな、と考えました。
森谷氏
他社の製品を否定はしませんが、ああいったポップなものとWSD-F10は違うと思いました。腕時計メーカーとしてやるべきことじゃない、と。そこは違うというところからスタートしました。
――この動きのあるUIや配色などは、カシオのほかの製品に応用したりするのでしょうか。
花房氏
いろいろなジャンルの製品が弊社にはありますが、それぞれUIのアプローチが違います。それぞれの製品がそれぞれ製品として成立するバランスを取るのも我々の役割です。
たとえばデジカメなら、デジカメとして成立する画面やデバイスのバランスがあります。その価格帯でできるベストはコレだよね、という考えで製品化します。この最適解は、デバイスごとに違ってきます。
――逆にUIデザインでほかの製品からもらってきたものは?
森谷氏
ほかの製品とは完全に切り離した上で考えています。私は主にデジカメや楽器をやってきていて、腕時計のようにしょっちゅう見るUIを作るのは初めてでしたが、どれだけシンプルに持っていくか、情報がパッと直感的に目に入るように、と考えました。こうしたデザインが今後もカシオのスマートウォッチの顔となればと考えています。
花房氏
時計でも文字盤の赤が注意色とかありますが、カラーバリエーションのデザイン上の差し色として使うこともあります。そういったものと比べると、今回の画面UIデザインはやや目的が違うかな、と思います。
それからもう一つ、今回はフォントも新たにデザインしました。アウトドアやタフさをイメージできるように、新規で起こしています。
腕時計としてのこだわりが行き着いた円形2層ディスプレイ
――2層ディスプレイは非常に特徴的だと思いますが、こちらはやはりバッテリーの持ちがポイントなのでしょうか。
坂田氏
時計の良さをできるだけ残したい、という発想で言うと、「常に時刻を表示する」ということがポイントです。上の層にモノクロ液晶があり、下にカラー液晶があるのですが、上のモノクロ液晶は太陽光を反射しやすいものになっています。ここは晴天時の直射日光下でご覧いただきたいのですが、反射率が高いので、アウトドアでもパッと確認できます(通常の透過型カラー液晶は、環境光が明るすぎると視認性が極端に落ちる)。見たい情報をすぐに見られるというのは、腕時計の本来の良さです。
機能としては、ツールボタンを長押しすると、一時的にモノクロ液晶表示に切り替わるので、晴天の直射日光下などでも視認性を高められます。このモノクロ液晶は、電池寿命の利点もありますが、秒を刻むためでもありますし、瞬間的に情報を視認したいというニーズを満たすためでもあります。
――モノクロ液晶の表示モードはまだ開発中で、詳細な仕様はまだ公開できないとのことですが、ざっくり言ってどうなるのでしょうか。
坂田氏
用途やシーンに応じてカラーとモノクロを使い分けるとか、発売日にはいろいろなものが搭載される予定です。すでに公開されているタイムピースモード(モノクロ液晶のみでAndroid Wearはシャットダウンする)やシアターモード(モノクロ液晶に表示しつつ、バックグラウンドでAndroid Wearを動かす)もその一つです。通知を待受できるモノクロ表示モードも開発検討中です。
――機構面でいうと、防水などの面でカシオ計算機のノウハウが活かされているのでしょうか。
大村氏
そうですね。腕時計ということで防水性や耐環境性は必須のものとして、そこにフォーカスし、カシオ計算機のノウハウを集結して開発しています。
――スマートウォッチとなると、毎日充電する必要がでてきますが、充電端子の形状や位置が独特ですね。
大村氏
装着時の汗などもあるので、そこは時計事業部の出身者の意見を取り入れつつデザインしました。
――厚みが結構ありますが、内部的には何が厚みを増やしているのでしょうか。
大村氏
電池と表示部ですね。電池はスマホなどと同じような平べったいもので、その上に基板、表示部が重なって配置されています。
――試作機はディスプレイが四角ですね。
花形氏
パッと見やすいものとしては、この用途では丸が最適解と考えました。アウトドア以外であれば四角でも良いのかも知れませんが。最終デザインの少し前に、丸か四角かの議論はしましたが、時計としての側面を考える、丸を選択しました。
坂田氏
機能から逆算した、というのもあります。アウトドアで使いたいコンパスなどの機能や、アナログ時計の針表現など、いろいろなことが円形ディスプレイにはできます。スピードや割合を示すときも、文字で見るより、アナログ表示ならぱっと見でわかりやすいので、やはり丸だよね、と。
ただし、部長の南がいつも言っているのですが、今回は丸でやったけど、四角でも新しい表現ができるようになるはずだから、常にアイデアを出して行こう、と。用途目的によって丸や四角が出てくるかな、と思っています。
森谷氏
ツールの中でも、日の出・日の入りや潮位とかで、円を24時間として1日の流れや実際の方角を表現しています。
花房氏
世界時計でも、地球を北極から見た円形に、2都市間の時差をダイレクトに線で結んで、直感的に表示させています。この表現は特許も申請しています。
――ハードウェアを実装する上では、四角の方が有利なのでは。
大村氏
そこはそうですね。
花形氏
大きく見せないために、丸デザインだけどエッジを切るようなデザインもできなくはないのですが、コンセプトデザインを作って、そこでどうやって中身の釣り合いを取るかなどは、大村と一番やり取りしましたね。なるべく最初のデザインイメージを保ったまま機能を入れよう、と。
――実装担当としては、デザイン側からの提案に殺意を覚えませんでしたか?(笑)
大村氏
いろいろなコミュニケーションを取って、本体を単純な円柱状にするのではなく、なだらかにするとか、デザイン側からの思いが伝わってきたので、そこを防水などを考慮しつつ実現するのが大変でした。
花形氏
そもそも大村側が出した条件を私が守らずにデザインした、という面があります。しかし、そういった部分も大事にくみ取ってもらって実装してもらいました。
大村氏
こちらとしては逆にチャレンジをもらった感じです。
――アウトドア向け腕時計としては、カシオ計算機には「プロトレック」がありますが、そちらの開発チームは携わっていないのでしょうか。
坂田氏
登山時における情報への接し方など、色々なアドバイスを貰っています。
花形氏
時計事業部のデザイン開発部にはプロトレック担当もいて、すぐ隣なので、話をしながらデザインをしています。
――連携する機器としては、カシオにはさまざまなプロダクトがあります。すでにウェアラブルカメラのEX-FR100とは連携されますが、ほかのプロダクトの開発チームから連携したいとかそういった話はあったりするのでしょうか。
坂田氏
今は出ていないですね。つながるにしても、アウトドアで何ができるか、という発想からになるかと思います。辞書や楽器より、まずはカメラですね。EX-FR100は「アウトドアレコーダー」と呼んでいますが、誰に言われたわけでもなく、お互いアウトドア用途なんだから連携できたらおもしろいよね、というところから開発しています。ここは社内のつながりから自然にできた機能です。
カメラ側ではつながる部分を作ってもらい、こちらでリモコンアプリを作って、映像が表示できたときは感動しました。モノ作りが楽しい瞬間ですね。トップダウンだけでなく、下支えする機能や技術が連携するモノ作りの流れがあるのだと思います。
――やや気の早い話になりますが、商品のサイクルとして、スマートフォンのように2年くらいの周期で買い換えるものになるのでしょうか。
坂田氏
そこは我々にもまだわからないので、色々な利用シーンを想定して作っていきたいと考えています。ハードウェアとしての耐用年数・寿命は抜きとして、身につける物なので、愛着を持って長く使って欲しいと考えています。
従来の腕時計でできなかったこととしては、買った後に進化する楽しみもあります。アプリ追加できることが大きいですが、楽しいことが増えたり、自分に寄り添っていくとか、そういった良さを引き出したいと考えています。
――本日はお忙しいところ、長時間ありがとうございました。