インタビュー

「Galaxy Active neo SC-01H」開発者インタビュー

日本のユーザーの声に耳を傾けた高耐久モデル開発の裏側

 NTTドコモからの11月上旬に発売される予定のMILスペックスマートフォン「Galaxy Active neo SC-01H」。発売目前の同端末の開発の裏側について、サムスン電子のハン・ウスン氏(製品デザイン担当)とベク・ウンソン氏(機構開発担当)にグループインタビューする機会を得たので、その模様をお伝えする。

Galaxy Active neo SC-01H

――Galaxy Active neoは、どんなユーザーをターゲットにしているのでしょうか?

ハン氏
 特定の年齢層というよりは、ライフスタイルを意識してデザインしました。オフィスで働いている人というよりは、外で働いている人、例えば、宅配のお仕事をされている方などを想定しています。

 これはサムスンの無線事業部としてのデザインの哲学みたいなものだと思うのですが、今までサムスンは技術中心の会社だったのですが、そうした発達した技術をデザインとしてどれだけきれいに提示できるか、ライフスタイルとしてどれだけ確信を持てるかということがデザインチームの課題でもあります。モデルごとにストーリーは変わって来ると思いますが、Galaxy Active neoについては、そういうライフスタイルを考慮してデザインしています。

ハン・ウスン氏(製品デザイン担当)

――Galaxy S5 ActiveとGalaxy Active neoのデザインコンセプトの違いは?

ハン氏
 弊社の高耐久モデルには、Galaxy S5 Activeのようなハイスペックなものや、Galaxy Active neoのようなミドルレンジのモデルなど、いろんなラインナップがあります。フラッグシップを使いたいという人もいますが、アウトドアで片手で使いたいというニーズがあると考え、Galaxy Active neoのような端末をデザインしました。

――グローバルのXcover3と日本のGalaxy Active neoではどこが違うのでしょうか?

ベク氏
 Xcover3とGalaxy Active neoの基本的な機構の構成は同じです。XcoverはNFC、Galaxy Active neoはFeliCaということで端末の厚さが違います。ハードウェアでも若干変更があり、カメラ、チップセットにも差分がありますので、Xcoverで担保していた機構的な品質を問題なく確保できるように気をつけました。今回は堅牢性を重視した端末なので、一般のスマートフォンより高いスペックで品質を管理しようとしていました。例えば、試験する端末を増やしたり、試験するスペックを高めたりして、品質を確保するような努力をしました。

ハン氏
 デザイン的にはカラーが変更されています。FeliCaの搭載により端末の大きさが変わっているので、そうした部分でデザインの若干の修正を行いました。

 カモフラージュのパターンというのは、皆さんご存じのように元々軍人が身を隠すために使っていたものですが、最近はファッショントレンドとして流行しているところもありますので、そういう流行のものを端末に適用できるように、コンセプトとして持っていってデザインしました。Galaxy S5 Activeでもカモフラージュパターンを適用していましたが、今回は進化したデジタルカモフラージュパターンを採用しました。グローバルでいうと、米国で出ているGalaxy S6 Activeと同じパターンになっています。

――MILスペック端末なのに背面パネルが外れます。耐衝撃という点では外せる方がいいのか、外せない方がいいのか、どちらがいいのでしょうか。

ベク氏
 基本的には外れる外れないというのは商品企画の観点での決定ですが、それによって品質自体に差が出ないようにしています。今回のモデルは、ユーザーがバッテリー交換など、外で使うことを想定して、こういう形にしました。機構開発の担当としては、外れるようにすると気を付けないといけない点は多くなります。

――できれば外れない方が開発しやすいですか?(笑)

ベク氏
 一体型は一体型での苦労がありますから(笑)。そこは一長一短があると思います。

――落とした時には外れにくく、ユーザーが外そうとした時には外しやすいように工夫されているように感じるのですが、何か工夫は?

ベク氏
 当然、そこにはトレードオフの関係があります。弊社内部としては、体感的な部分の試験と実質的なスペックをもって管理する試験の両方を満たす必要がありますので、その基準をもっていろいろとテストをしています。寿命試験なども通じてバランスを保っています。

 ちなみに、グローバルよりも日本のユーザーの方が外れにくい仕様を希望しているところがあるので、グローバルよりも若干固めの設計になっています。私たちの調査では、落とした時に外れることに関するユーザーの声はグローバルではそれほどありませんでした。それよりも外しやすいというニーズが大きかったのですが、日本のユーザーからは落とした時に外れのが嫌だという声があったので、そこを反映しています。

ベク・ウンソン氏(機構開発担当)

――Galaxy S5 Activeはハイエンドのモデルをベースにしていましたが、今回はミドルレンジのスペックです。発熱などの面でミドルクラスのチップの方が扱いやすいという面もあるのでしょうか?

ベク氏
 開発のプロセスとしては、商品企画担当が商品性を考えてスペックが決まり、それを元に機構担当が設計を行います。ですから、チップセットの発熱が機構の設計に影響しているということはありません。似たような設計でもモデルによって発熱ポイントが異なるので、日本向けのものには発熱するポイントに空間を設けるなど、機構的な考慮はしています。

――USB端子がキャップレスで耐海水というのは珍しいと思いますが、何か特別な工夫をされているのでしょうか?

ベク氏
 弊社内で独自の試験項目を設けて試験を実施しています。

――MILスペックで一番難しいのはどの部分ですか?

ベク氏
 アイシング試験といって、端末を凍らせて溶かすという試験があります。そうした状況でも端末がきちんと動作しないといけないので、そうした部分で一番苦労した記憶があります。バッテリーカバーが外せるタイプで、凍った過程で加圧されたりするので、フックの部分のバランスを保つのが難しかったですね。

――MILスペックを上回るような部分はありますか?

ベク氏
 MILスペックは、そもそも過酷なスペックで、その基準をターゲットにするとNGになる可能性があるので、実際にはより過酷な環境でテストしています。例えば、床の素材を変えてみたり、より高いところから落としてみたり、内部的にはより過酷な試験を実施しています。

――MILスペックモデルで曲面ディスプレイを実現するのは難しいですか?

ハン氏
 当然、曲がったディスプレイの方が耐久性の面で不利になりますが、そもそもこうした高耐久モデルにユーザーがそういう曲がったディスプレイを望んでいるのかという点から悩んでみる必要があると思います。

――面白い使われ方の例は何かありますか?

ハン氏
 こうしたモデルは大人の男性が買うと思っていたのですが、意外にも端末を雑に使うお子さんに渡すという話を聞きました。

――ありがとうございました。

湯野 康隆