「Motorola RAZR M 201M」開発者インタビュー

“Best of Google”を具現化したコンパクト端末


 2012年5月、モトローラ・モビリティはGoogleの傘下に入った。2012年9月には、買収後初のグローバル向け端末としてMotorola RAZRシリーズの新型Android端末3機種を発表。そのうちの1つ「Motorola RAZR M」が、ソフトバンクモバイルの2012年冬・春モデル「Motorola RAZR M 201M」(以下、RAZR M)として発表された。

 「RAZR M」は、4.3インチ(540×960ドット)のディスプレイを搭載しながら、狭額縁設計により、横幅を60.9mmに抑えたコンパクト設計が特徴。下り最大76MbpsのSoftBank 4Gとプラチナバンドをサポートし、おサイフケータイ(FeliCa)も利用できる。

 性能の向上を図りながらも独自色を打ち出そうと各メーカーが開発にしのぎを削る中、Google直下のメーカーがリリースする端末となれば、気になる部分も多いだろう。そこで、開発の背景やこだわり、日本市場への思いについて、発表に合わせて初来日されたモトローラ・モビリティ カントリー・マーケティング バイス・ブレジデントのジャン=ピエール・ル・カネリエ氏と、モトローラ・モビリティ・ジャパン 代表取締役社長である鈴木寛氏にお話を伺った。

ソフトバンクからリリースしたのはネットワークの魅力から

ジャン=ピエール・ル・カネリエ氏

――日本国内においては、「MOTOROLA RAZR IS12M」など、端末やセットトップボックスをKDDIに納入されていました。そういう意味では、今回「RAZR M」がソフトバンクからリリースされたので非常に驚いています。なぜソフトバンクから端末を提供することになったんでしょうか。

カネリエ氏
 私どもは、新しい端末を開発して導入する際には、その端末が必ずうまく市場に導入できるようなパートナーを探しています。今回の「RAZR M」については、ソフトバンクさんという非常にすばらしいパートナーに恵まれまして、そのパートナーシップに大きな期待を抱いています。

 これまで弊社は世界各国でLTE端末をリリースしてきました。今回なぜソフトバンクさんからか、ということですが、ソフトバンクさんが持っていらっしゃる、日本の消費者に対する4Gサービスの非常に大きな経験を重視したからです。Webのブラウジング、ファイルのダウンロードなどのさまざまなモバイルの経験など、ソフトバンクさんが消費者に対して築いてきた大きな信頼感というものが、私たちモトローラとソフトバンクさんとのすばらしいシナジーとして功を奏するだろうと考えました。

鈴木寛氏

鈴木氏
 我々から見たソフトバンクさんの魅力は何かというと、やっぱりネットワークなんですね。(9日の発表会で)孫さんがグラフで示したように、SoftBank 4Gのネットワークは非常に速いです。私もかれこれトライアル的に1~2カ月使っているんですが、スマートフォンで40Mbpsくらい軽く出てしまいますし、平均しても20Mbpsくらいですね。4Gだけでなくて、3GのULTRA SPEEDでも非常に速いんです。ブラウザ1つにしても、YouTubeにしても、全くストレスなく使えて、期待した以上にすばらしいネットワークです。

 スピードが速いというのはスマートフォンにとって非常に重要です。遅いネットワークだと、電池も食ってしまいます。バッテリーを最も消費するのは何かといえば、ほとんどディスプレイです。当然スピードが早ければ、画面を見ている時間も短くなる。だからネットワークのスピードが速ければ速いほど、実は電池は食わないはずなんです。ですから、我々にとって、コンシューマーに速いスマートフォンを提供できるというのは非常に魅力的なことなんです。

――日本にこられてあまり長くはないと思うんですが、アメリカと日本のネットワークの違い、スピードの違いというのは感じられますか。

カネリエ氏
 実は今回初めて日本に来ました。昔から本当に来たかったので、ようやく長年の願いがかなったということで楽しんでいます。日本に来てまだ滞在時間は短いですが、使用感というのはアメリカとほとんど同じになってきてるのかなと、私自身の実感としてはありますね。

 LTEのスピードや精度について、これまでアメリカで1年半ほど実験をやってまいりました。やはり3Gと4Gというのはかなり違いますね。大きなジャンプがあるというのは、アメリカの実証実験でもう体験済みです。最近は家のコンピュータで見るよりも、モバイルデバイスでのブラウザのほうが早いという経験をしていらっしゃる方も非常に増えていると思うんですね。必要なスピードを出して行くというところにコンシューマのニーズがあると思います。その点において、我々が持っているビジョンと、ソフトバンクさんのビジョンが合致したというのが今回一緒に組んだ理由でもあります。

――ソフトバンクはiPhoneを中心に販売していますが、それは脅威とはお考えになりませんでしたか?

カネリエ氏
 iPhoneを扱っているオペレーターさんには必ず2つの側面があります。iPhoneをポートフォリオとして入れておきたいと考えながらも、消費者が自分で選びたいものを選択できるように、さまざまな選択肢を提供しなければいけない。我々としてもそれを歓迎していますし、ソフトバンクさんもそれは十分理解しておられると見ています。

大画面なのに片手操作できるサイズ感と、1日使えるスタミナ

――「RAZR M」は画面サイズが4.3インチもありながら、手のひらに収まってしまうんですね。やはりこのサイズ感が一番のこだわりどころでしょうか。

カネリエ氏
 そうですね。サイズ感、デザインというのは、日本だけでなくグローバルなアピールができる特性をもっていると思っています。最近はディスプレイがどんどん大きくなる競争が高まっていますが、コンシューマ市場の中では、携帯のしやすさや、片手操作しやすい、手に快適にフィットするというサイズ感に対して重要なニーズがあるのではないかと考えました。それをデザインに対しての重要なフィロソフィーとして、今回搭載することになりました。ですので、できるだけスクリーンを大きくしながらも、全体的には小さくして、ポケットあるいは小さなお財布に入り、なおかつ手にフィットするいったところの両方を追求し、今回のデザインサイズとなりました。

鈴木氏
 今、カネリエが申し上げたように、グローバルな方向としては、やはり小さいほうがいい。我々も、日本の消費者は軽くて小さいものを望んでいると考えておりまして、片手で操作できるデザインとサイズ感を目指しました。「RAZR M」は幅60.9mm。iPhoneと比べると約2mm程大きいだけなんですが、非常に持ちやすく、重さも128gと非常に軽く仕上がっています。小さいのに大画面で軽い。たぶん4.3インチクラスのものですと、一番幅が狭いですね。Edge to Edgeで、68.6%が画面なんです。ですから、たとえばビデオを再生すると一番分かりやすいんですが、ほとんどすべて画面という感じです。これがやはり一番大きなステータスであり、一番のこだわりですね。これを達成するためのテクノロジーとして、側面にあるスクリューが大きな役割を担っています。

――すでにサムスンやLGからは5インチを超える端末が出てますし、ソフトバンクの発表会でも国内メーカーから5インチに近いサイズの端末が登場しました。御社としてはあえてこだわってこのサイズに収めているということでしょうか。

鈴木氏
 はい。ソフトバンクさんと話ながら、機種を決めるわけなんですが、今回の冬に出すものとしては、このサイズ感で、この電池で、この画面の大きさということでソフトバンクさんが気に入ったのと、いろいろなコンシューマリサーチした結果、日本市場においては4.3インチが消費者が一番欲しがっているスイートスポットだと結論付けました。

――世界的に見た場合、好まれる画面サイズに地域的な特徴などはあるのでしょうか。

カネリエ氏
 スマートフォンは大きくなって、タブレットが小さくなるという2つのトレンドがあって、収斂しているのかな、というのが我々が全体感として感じているところですね。いろんなサイズのバラエティがあってもいいんじゃないか、という時代になってきてると思います。

 その中で、ディスプレイサイズを大きくしながらも、1日中使えるようなバッテリーは、現在消費者が求めているものであり、そのあたりを全部犠牲にしたくないというのが我々にとっては非常に重要なポイントです。それらをうまく組み合わせるというのは簡単なことではないんですが、今回の「RAZR M」については、我々のこだわりをうまくパッケージングできたということで非常に自信を持っています。

――バッテリーのお話がありましたが、その辺りは具体的にはどのようになっていますか。

鈴木氏
 どんなにいい端末でも、どれくらい使えるかということが一番気になりますよね。1日中使えるということが大事であり、一番重要なキーコンセプトです。これを達成するために、3つの観点から全く妥協のない対策を施しています。1つは最大値の2000mAhのバッテリーの搭載です。2つめはチューニング。LTE対応端末も出してからも1年くらい経ってますので、実績の積み重ねがありますから、LTEの最適化、消費電力の最適化という意味でチューニングしています。それからもう1つ、自動的に電池の消費が最適化できるように、ソフトウェアとして「SMARTACTIONS」という機能を入れています。

――「RAZR M」はバッテリーの交換ができない(取り出せない)タイプですが、バッテリーの持ちについてはかなりの自信をお持ちだという理解でよろしいですか。

カネリエ氏
 そうですね。朝家を出て、夜に帰宅してもまだ使えるというところが、消費者にとっては使い勝手がいい携帯、安心感のある端末だと思っていただけると思っていますし、「RAZR M」は2000mAhのバッテリーと、「SMARTACTIONS」によってそれを達成していると思います。ちなみに「SMARTACTIONS」は、RAZRが登場した1年前から採用している機能で、簡単で使いやすいということで、消費者の方から高い信頼と評価を得ています。

――スペックシートを見ていて気になったのですが、ホワイトのほうが0.5mm厚いようです。これは何の差になるんでしょうか。

鈴木氏
 それは背面の素材の違いですね。ブラックは非常に薄くて強いKEVLAR(ケブラー)ファイバーを使っていますが、残念ながらKEVLARですと白い光沢感が出せないんですね。そこで、ホワイトは素材としてPETを使っています。

防水ではないが、防滴性能により多少の雨でも使用可能に

――現状、日本しか提供されないモデルということになるんですが、FeliCa以外で、日本向けの特殊なカスタマイズというのはされていますか。

カネリエ氏
 ホーム画面にYahoo JAPAN!のウィジェットが最初からインストールされています。これはソフトバンクさんとのパートナーシップにおいて、日本のマーケット向けにカスタマイズした1つの特徴です。

――日本で非常にニーズが高い機能として防水があると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

カネリエ氏
 端末を安心して使っていくうえで、丈夫であるというのは必要なんですが、どのレベルまで追求すべきかという点について、試行錯誤しました。完全に水に浸していいのかというところまで追求すると、それまで考えていたデザインをかなり変えなければいけないので、デザインや性能とのいいバランスということで、防水ではなく、水滴が入らない防滴にしています。

鈴木氏
 表面だけではなくて、中のボードもコーティングされているので、コップが倒れて水がかかった程度なら大丈夫です。台所で濡れた手で操作することもできますし、多少の雨なら、濡れながら操作することもできます。

――災害用の伝言板サービスや緊急速報メールなどはいかがでしょうか。

鈴木氏
 当然日本のコンシューマーに必要なものとしてサポートしています。

Google傘下になったモトローラ端末のメリット

――9月の発表会のとき、Googleの会長であるエリック・シュミット氏が登壇されて、よりGoogle色が強まったのかなという印象があります。Google傘下に入ったことで、ご自身の中で何か変わったことがあるのか、これから何か変えていこうと考えているのか、その点についてお話しいただけますか。

カネリエ氏
 Googleという会社は、もともとイノベーションがアイデンティティであり、遺伝子であるという会社です。そのイノベーションが強みとして発揮され、消費者にシンプルかつ楽しいソリューションを提供してきました。我々モトローラもそれらに対して非常に強い情熱を持っていましたから、Googleの傘下に入ったことで、それらがさらに強まり、よりよい経験の提供が可能になりました。

 また、Googleの傘下であることのよい効果は、製品やマーケティング活動にも現れていると思っています。「RAZR M」を日本市場に本格的に展開するにあたり、認知度を高める積極的なプロモーションや情報発信に有利に働くと期待しています。

――お話を伺いながら端末を触らせていただきましたが、ロックスクリーンも非常に工夫されていますし、地図なども快適に使えますね。このあたりも、もしかしたら“よい効果”のように思うのですが、いかがでしょうか。

鈴木氏
 ロックスクリーンもそうですが、スピーカフォンの機能や、電話の品質ですとか、意外と基本的なところが本当にいいんですよ。CPUがデュアルコアの1.5GHzで速いというのもありますが、そこにネットワークの速さが加わると、マップにしてもYouTubeにしてもブラウザにしても非常に速く感じるんですね。

 この端末の特徴として、手のひらサイズで大画面、LTEで1日持つスタミナというのをご紹介しましたが、実はもう1つあります。それが「Best of Google」という特徴です。今回ブラウザとしてChromeを載せていますが、ChromeもYouTubeも最適化していますし、マップに至ってはGPSに「GLONASS」を使っていますので、正確に位置が特定できるようになっています。我々が目指すのは、Googleのこういったサービスをご利用いただく上で、ベストなスマートフォンを提供することですね。

――そういう意味では、Android 4.1へのアップデートというのは、早々にできるという理解でよろしいでしょうか。

鈴木氏
 時期は申し上げあげられないですが、なるべく早くできるようにしたいと思います。

――Google傘下になって一番最初の端末になりますね。消費者は、子会社としてどんなものを出してきたんだろうかと気になっていると思います。先ほど「Best of Google」というお話がありましたが、他にもモトローラを選ぶメリットがあれば教えてください。

カネリエ氏
 みなさん、モトローラの電話であるということと、Googleの傘下に入ったということで、さまざまなものを期待していらっしゃると思います。今回日本で発売する「RAZR M」は、モトローラとしてイノベーションが集約され、「Best of Google」を具現化した端末といえます。Android 4.1にいつ対応させるかということは申し上げられませんが、最新のOSを搭載している端末ということで、非常に早い段階で使えるようになると考えています。Googleのサービスをさまざまな形で快適に使っていただけるように支援していきますし、これからも優れたデザインと、安心して利用できる性能を提供していくとうことに重きをおいていきます。消費者にとって重要なものに対して、これからもフォーカスして、リソースを適切に配分していくでしょう。それがブランドの価値であると考えています。

――今後の展開として、国内の他キャリアとのお付き合いはされていくのでしょうか。

カネリエ氏
 我々はすべてのキャリアさんとやっていきます。日本の市場拡大をするにあたっては、他のパートナーが話してくださるということに対して、我々も積極的に対応していきたいと考えています。

ユーザーにプレゼントされる外部バッテリー

――最後に、本誌の読者にコメントを一言お願いします。

カネリエ氏
 今回この製品をご紹介できることを本当に心待ちにしていました。この端末を自信をもって日本のみなさまにお届けします。ソフトバンクさまとも、すばらしいパートナーシップを元に、日本市場にさらに展開していく、強化していくということで期待していただきたいと思います。ありがとうございました。

鈴木氏
 「RAZR M」は、とにかく持ってみていただきたいですね。そのサイズ、大きさ、軽さをお店で直接触って確かめてください。ご購入いただいた先着1万名さまに、4000mAhのオリジナル外部バッテリーをプレゼントします。端末が2000mAhなので、この外部バッテリーと合わせると3日間は充電なしで使えるはずです。

――本日はお忙しいところありがとうございました。




(すずまり)

2012/10/16 10:00