「VEGA PTL21」開発者インタビュー

タッチせずに操作できる全部入りスマホ


 auから発売された「VEGA」(PTL21)は、端末をタッチせずに操作できる「VEGA Motion」に対応したAndroidスマートフォン。10代後半から20代前半のユーザーをターゲットとし、最新機能を備えながらワンセグ、赤外線通信、おサイフケータイ、防水・防塵、テザリング、簡易留守録機能に対応。auの4G LTEにも対応している。

 開発を担当したパンテック・ワイヤレス・ジャパンの木村一氏、下村智紀氏、成田友依氏に同端末の特徴や注目ポイントについて伺った。

風呂場やキッチンで、端末に触らずに操作できる

――まず最初に、「VEGA」の特徴を教えてください。

下村氏
 一番の特徴は何といっても、端末に触らずに操作できる「VEGA Motion」です。ディスプレイ上部で手をかざして、左右や上下などに動かすモーション操作で、電話に出たり、Webページをスクロールしたり、音楽の音量をコントロールすることなどができます。どんな場面でモーション操作を使うのか、気になるところだと思いますが、お風呂に入っているとき、料理やメイクをしているときなど、さまざまな利用シーンを想定しています。

――10代後半から20代前半がターゲットということですが、それらのユーザー層には、モーション操作の需要があるということでしょうか?

下村智紀氏

下村氏
 年代が上に行くほど実用性を重視する傾向にありますが、10代や20代といった若い層は、より最新の機能を求めているのではないかと考えています。

木村氏
 若い人ほど、“何かをしながら”スマートフォンを使いたいというシーンが多いのではないでしょうか。VEGA Motionを使えば、たとえば料理をしながらWebブラウザを見ることができます。濡れた手や小麦粉がついた手でも、Webページをスクロールすることができます。触らずにスマートフォンを操作するといったことは、これまで想像はされてきたかもしれませんが、存在しませんでした。それを実現したのがVEGA Motionです。

――モーションで操作できるのは、どのような仕組みなのでしょうか?

木村氏
 ディスプレイ上部に赤外線センサーがあり、動くものに反射した赤外線を捉え、右から左、上から下といったモーションを認識します。赤外線センサーから約5cm以内の高さに手をかざして操作できます。実は、VEGA Motionは韓国で発売されたVEGAでも搭載されているのですが、韓国版では赤外線センサーではなくカメラで手の動きを認識するという方式でした。しかし、カメラ方式の場合、バッテリーの持ちが悪いことや、暗い場所、明るい場所で反応が悪くなるという課題がありました。そこで、今回のVEGAでは、新たに赤外線センサーを使う方式を採用しました。

――赤外線センサーを使ったモーション認識というのは、ほかに例はあるのですか。

下村氏
 携帯電話では世界初となります。弊社の端末では、(2011年に発売された)「MIRACH IS11PT」でも音声による操作を取り入れました。今後もスマートフォンに触れずに操作できる、「タッチレス」ということを特に追求していきたいと思っています。

木村一氏

木村氏
 フィーチャーフォンの頃は、サブディスプレイやサイドキーである程度の操作ができましたが、スマートフォンになって、画面を必ずタッチしないと操作できなくなりました。しかし、気軽に電話に出たい、メールを見たいという要望はあるはずです。VEGA Motionに対応する機能も、当初は電話だけでよいという意見もありましたが、電話やメール、Webブラウザ、音楽、ワンセグなど、現時点でできる限りのことを実現しています。お風呂でワンセグを見ながらチャンネルの切り替えや音量の調整をモーションで操作できますし、スマートフォン用ではないスキー手袋のようなふっくらした手袋を着けたままでも操作することができます。ちなみに、初期設定ではVEGA Motionはオフになっています。

――今後、VEGA Motionに対応するアプリを増やすにあたって、アプリ開発者などに技術情報を開示することはあるのでしょうか?

木村氏
 はい。ご連絡をいただければ情報を提供しますし、問題なく動作するようにサポートもさせていただきます。

最初からの使いやすさを追求したさまざまな機能

――そのほかの特徴についても教えてください。

下村氏
 VEGA Motion以外の特徴としては、端末を傾けるだけでスピードダイヤル画面を表示し、よく電話をかける相手にすばやく発信することができます。また、ホーム画面の空白部分をタッチして下にスライドすることで通知領域を表示できたり、上にスライドすることで設定メニューを表示できるなど、指を大きく動かさなくても使い易くできるように細かいところで使いやすさを追求しています。ホーム画面下部のランチャーは左右にフリックできて、多くのお気に入りのアプリを配置できますし、アプリアイコンはフレームを付けてデコレーションしたり、「ギャラリー」の写真をトリミングしてアイコンにできたりと、ホーム画面のアレンジも自由自在です。熟練ユーザーであれば、自分でホーム画面をカスタマイズして使いやすくできると思いますが、最初から使いやすくしているのが特徴です。

成田友依氏

成田氏
 アプリアイコンのアレンジについては、アニマル柄のフレームをアイコンに付けたり、好きな写真をハート型にしてアイコンにできたりと、かわいらしくカスタマイズできるので、特に女性ユーザーに焦点を当てた機能になっています。

木村氏
 動画やミュージック、テキストメモをミニウィンドウで最前面に表示して、動画などを見ながらほかのアプリを使うこともできます。また、ミュージックアプリはイヤホンジャックの着脱での操作が可能で、イヤホンを抜けば再生が自動で一時停止し、再び挿せば前回停止したところから再生が始まるというように設定できます。職場でイヤホンを抜いたら、周りに音楽が流れてしまった、なんてことも防げます。スマートフォンは色々とアプリをインストールすることで便利に使えますが、最初からいかに使いやすくするかを追求しています。ワンセグやおサイフケータイ、赤外線通信、防水、簡易留守録機能などにも対応していますし、市場で求められているものはすべて入れて、さらに使いやすくする機能を豊富に搭載しました。そのひとつがVEGA Motionというわけです。

――カメラ機能に注目ポイントはありますか?

木村氏
 カメラ機能では、声でシャッターを切れる「Voice Shot」と、多彩な効果の写真をウィジェットからすばやく撮影できる「mini Camera」が特徴です。Voice Shotは自分撮りに最適な機能です。画面のタッチでシャッターを切って自分撮りすると、手が写り込んでしまったり、手ブレしてしまうことがありますが、Voice Shotなら手軽にしっかり自分撮りができます。「ハイ、チーズ」や「せーの」など、7つの音声に対応していて、Google音声認識を使って音声を認識し、シャッターを切る仕組みになっています。

下村氏
 Voice Shotは、みんなで楽しく使ってほしい機能ですね。声でシャッターを切って、「もう1回撮ろうか?」などと、盛り上がれると思います。

木村氏
 黒板やノートをきれいに撮れる「Cam Note」という機能もあります。黒板を撮影したときも、白背景に黒文字の画像として残せるので文字がくっきり見やすくなります。

成田氏
 若いユーザーの中でも特に学生にとっては、Cam Noteは便利な機能ではないでしょうか。

――急速充電にも対応していますね。充電できる卓上ホルダーも同梱されます。

木村氏
 はい。急速充電は充電時間が90分となっていて、今回KDDIさんから発表されたラインナップの中でも一番短くなっています。急速充電は弊社の海外端末でも実現しているので、技術をそのまま持ってきた形です。同梱の卓上ホルダーで充電したときも、充電時間はほとんど変わりません。

 ちなみに、充電時には時計が表示される「卓上モード」になりますが、卓上モードを設定でオフにすることも可能です。卓上モードから通常のモードに切り替わるときには、やや時間差があり、これは機種別差もあるのですが、Androidの仕様としてモードの切り替えに時間がかかるようになっています。この時間差で、着信に出るのに失敗してしまうケースもあるので、設定で卓上モードを外せるようにしました。細かいところではありますが、使っていく上では気になる部分でもあります。弊社では、「MIRACH IS11PT」からいち早く卓上モードを搭載していたので、その経験を活かせたと思います。

「VEGA」を体験できる期間限定のカフェをオープン

――今回、機種名は「VEGA」となりましたが、韓国ではVEGAブランドですでに数機種が出ていますね。

木村氏
 はい。日本では初めての「VEGA」になります。VEGAは韓国では若い層に人気のあるハイスペックスマートフォンとなっていて、主力製品のブランドを日本にも投入した格好です。今後、ほかの製品を出していくときも、ミドルネームを付ける形でVEGAとしてリリースしていきます。

――ユーザーにはどのように訴求していきますか?

成田氏
 ターゲットが10代後半から20代前半という若い層なので、カタログなどもこれまでのパンテックのイメージを覆すようなものになっています。まだまだフィーチャーフォンを使っているユーザーも多いですが、この「VEGA」でスマートフォンデビューをして、VEGA MotionやLTEなどのさまざまな新しい機能で、楽しくワクワクする毎日にしよう!」ということを伝えられればと思っています。また、VEGAの日本デビューということになるので、CMやイベントも大々的に行っていきます。

木村氏
 VEGA Motionの利用シーンは、なかなかイメージしづらいかもしれませんが、若いユーザーにはモーションで操作したいような場面がたくさんあると考えています。体験してみないとわからない部分もあるので、ぜひ店頭でVEGAに触れてほしいですね。

成田氏
 加えて、店頭で流すための動画も用意しました。VEGA Motionなどは、静止画ではどうしても伝わりづらいので、動画でVEGAを知ってほしいと思います。YouTubeにもアップロードしていきます。VEGAはスペック的にも十分なものとなっていますので、それよりも楽しさや新しさを訴求して、VEGAに触れるきっかけにしていただければと思います。

――本日はありがとうございました。




(鈴木友博)

2012/11/2 10:00