インタビュー

Pontaポイント連携・シンプルなクレカ積立の還元、「auカブコム証券」の魅力を聞く

 新NISAも始まり早数カ月。実は口座を開設したものの「まだなにもしていない……」という人もいるかもしれない。auユーザーなら注目しておきたいのが「auカブコム証券」だ。

 au料金プランとの連携やポイント施策などが特徴的。どんな人におすすめで初心者に適しているのはどんなところなのか? auカブコム証券 営業推進部長 湯口俊輔氏、同 事業開発部長 兼 アライアンスグループ長の林佳史朗氏、同 営業推進部 UI/UXグループ長 荻生啓太氏、投資情報室 参事 チーフストラテジストの河合達憲氏に訊いた。聞き手は編集部・北川とライターの法林岳之氏。

左からauカブコム証券 林氏、荻生氏、湯口氏

auカブコム証券、どんな会社?

――さっそくですが、貴社の現状を教えて下さい。

林氏
 我々は現在、足元の証券口座数では170万口座というところです。NISA口座の開設数は開示しておりませんのでご容赦いただければと思いますが、過去と比べるとかなりNISA口座数は伸びてきています。それに伴うようなかたちで、お客様が取引される割合も非常に高くなっています。

 しっかり「(株式などの取引のために当社を)使う目的」をもって入ってきてくださっているのかなと思います。新NISA開始のタイミングで非常に多くのお客様が動いたこともあるので各社ともに落ち着いたかなというところかとは思いますが、やはり(新NISA)以前のペースと比べればまだまだ1段階高いところで推移しています。

――KDDIグループからの出資を受けたのは2019年でしたね。「カブドットコム証券」から「auカブコム証券」に変わりましたが、そのメリットはどんなところにあったのでしょうか?

林氏
  やはり、Pontaポイントやauの金融サービスと通信サービスをセットで利用することでおトクになる料金プラン「マネ活プラン」などの連携サービスにより、auを中心にKDDIのお客さまに当社のサービスを利用してもらえるところです。

 当社でもロイヤルティの向上を図るため、ポイント連携やクレジットカード積立、ポイント投資などのサービスを導入してきました。加えてKDDIが通信事業で培ってきた知見も共有してもらいつつ、我々のWebサイトのブラッシュアップもして行ってきました。加えてKDDIが通信事業で培ってきた知見も共有してもらいつつ、我々のWebサイトのブラッシュアップも行ってきました。

――「Pontaポイント」でも投資ができますよね。これはどの程度利用されているのでしょうか?

林氏
 au経済圏にいらっしゃったユーザーは、もともとPontaポイントを貯めていらっしゃることもあり、投資信託のお取引(積立は除く)利用者の6割ほどの人がポイントを利用されています。

――(法林)ポイント投資に関する記事は注目度が高いです。ただ、まだまだよく分かっていないという人も多いのが現状かなとも思います。

林氏
 ポイント投資に魅力を感じてもらえるかどうかは貯まりやすさがひとつあると思います。多くの場合、会社からお給料はもらっていて、それで日々の暮らしは保たれているので、NISAは気になっているものの、大多数の方はすぐにやってみよう、というようにはいかないと思います。

 資産形成という観点では、早く始めた方がいいでしょう。そのきっかけとしてスマートフォンで自分の使っているポイント経済圏のなかでポイント投資から始めてみるのもよいのではないでしょうか。

 携帯電話の料金を払うためだけに使っていた(au PAY カードなど)クレジットカードを、日常の支払いにも活用すれば、トータルで使っている金額が変わらなくてもポイントはまとまって貯まります。日々の支払いへの充当にも、投資に回すこともできます。

 今後、株価が上がるのか下がるのか、先行きが不安という場合はまずポイントで始めてみるのも良いのではないでしょうか。時の相場の上がり下がりで一喜一憂してしまうかもしれませんが、ある程度長い期間で投資をしてみて資産を増やせるチャンスを見つけていくとよいと思います。

――auカブコム証券ならでは、というイチオシポイントを教えてください

林氏
 クレカ積立の1%還元というのはもっともシンプルで還元率も高いというところです。3月に金融商品取引業等に関する内閣府令の改正があったことで、積立額の上限が5万円から10万円に拡大されました。他社はいろいろと利用条件などがあるところを、弊社では1%は還元されます。複雑な条件などを考えなくてもいいので、初心者の方にも分かりやすいと思います。

――利用すれば還元される仕組みはたしかに初心者にうれしいですね。利用の動向としては高いのでしょうか?

林氏
 そうですね、特にKDDIのサービスをご利用の方から好評です。これからの積立にPontaポイントが貯まるというところが大きいようです。積立額が月10万円までに拡大されて以降、ユーザーが月々に設定いただいている金額も上がっています。月5万円までが限度だったころは平均で3万円台の半ばくらいだったのですが、現在は5万円くらいになっています。

10年ぶりにアプリUIを刷新

――2023年の3月には「auカブコム証券アプリ」が大幅に強化されましたね。

湯口氏
 10年ぶりにリニューアルしました。KDDIと一緒になったというのがひとつのきっかけです。現在のインターフェイスでは、ユーザーの資産が時系列でどのくらい増えているのかというところが分かりやすいかたちになっています。NISAで長期的な資産形成をしたいという方には使いやすくなっているのではないかと思います。

資産推移画面

 他社もこういったユーザーインターフェイスは工夫されている部分かと思うのですが、弊社としましては機能性にこだわっています。「ニューモフィズム」という背景からボタンなどが浮き出たり沈んだりしているように見えるデザインを採用していまして、思わず触りたくなる印象を目指しました。


刷新されたアプリのトップ画面

――機能性ではどんな部分が特徴的ですか?

湯口氏
 プッシュ通知がタイムライン式に積み重なっていくという特徴があります。たとえば「お気に入り」に入れた銘柄や実際に保有している銘柄・マーケットに関する情報を受け取れば、プッシュ通知されるため、情報を即時にユーザーさんに届けられます。タイムラインの仕組みはネット証券会社では弊社だけですね。


タイムライン画面

――知りたい情報がすぐに得られるのはたしかに便利そうです。ユーザーからの反応はどうですか?

湯口氏
 実はリリース当初は「前のほうがよかった」といった声もありましたが、改善点は一つひとつスピーディに対処していきまして、アプリストアの評価でも良い点をいただいています。

テーマで検索したときのイメージ
取引画面

そもそも始めるハードルが高い?

――初心者としては正直、口座開設がそもそものハードルにもなりえるのですが……ここに対するケアはありますか?

荻生氏
 口座開設フォームは初心者のお客様でも分かりやすく、入力のストレスが減らせるように入力項目の簡略化や画面上での説明文などのUI改修を続けています。特にフォームの入力率や離脱率などを定量的に分析し、お客様が分かりづらいと感じる改善点を抽出することを重要視しています。

林氏
 KDDIのユーザーはau IDをお持ちですので、au IDを紐付けていただければ申込みの際に氏名や住所、生年月日、メールアドレスなどがひと通り入った状態になり、その後に証券取引に関する必要な項目を入力していただくことになります。

――(法林)入口はどんな仕掛けが良いのか悩むところかもしれませんが、いろいろと用意してもらえればいいのかなと思いますね。

林氏
 我々の強みはau PAYとの連携だと思っておりますので、そこは負けないようにしていきたいですね。我々はユーザーと決済だけではなく通信でもつながっています。場合によっては、auでは他の用途でもスマートフォンを使っていらっしゃいますす。

 さまざまなチャネルを複合的に使っていければ、ユーザーの一番気になるタイミングできになるものを提供できるのかなと思います。まだ道半ばですが、そこからさらに使ってもらうところが広がっていくと考えれば、可能性やチャンスが広がっていくと思います。

――初心者としてはそもそもNISAがどうお得なのかというところも疑問ですね。

河合氏
 私は、大学で金融に関する講義をしているのですが「新NISAってすごく儲かるみたいですよね。教えてください!」という学生が多いです。ただ、新NISAは儲かるための仕組みではありません。

 通常、株式や投資信託などから得られた利益や分配金・配当金には20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+地方税5%)の税金がかかるのです。「少額投資非課税制度」という名のとおり「投資で得た利益のうち本来課税される税金が約2割免除されるんですよ」と言っても分かってもらえないことも多い。原則として、利益にはすべて税金がかかるというところが分からない方が多いので、まずはそこから教えないといけないんです。

auカブコム証券 河合氏

――(法林)社会人でも実はよくわかっていない人が少なくない印象です。

河合氏
 免除される利益の約2割というのがどの程度なのかというと、たとえば積立投資枠の月10万円に配当が3%あったとしましょう。つまり配当が3000円なわけですが、その20%は600円です。1回お昼ご飯が食べられますよね。年間なら7200円で、10年たったら7万2000円です。10年くらい続けられれば得した気分になりますね。

 しかし、そのレベルの話なんです。ましてNISAで儲かるというのは、言葉が伝言ゲームになって伝わっているのかなとと思います。

――将来の資産形成のためにという仕組みですが、短期的な設けを狙えるという仕組みという誤解が多いということでしょうか?

河合氏
 「成長投資枠」ならそれもありだとはと思いますが「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の話がごちゃごちゃになっているのではないでしょうか。そのために「NISA=儲かる」という話になってしまっているのかもしれませんね。

――今は歴史的な円安と言われています。NISAでも米国株式が人気かと思いますがこうしたなかで、今から投資をはじめても良いものでしょうか……?

河合氏
 ほかの人と一緒のことをやったら良いと思いますよ。円高になったときのために、投資コストをおさえるコツなんかも勉強しておくとか、テクニックを身に着けておくのも良いかもしれません。(NISAでは投資にかかる)税金を免除してもらうためにやるということですから、始めなければその恩恵も受けられません。

――本日はありがとうございました。