インタビュー

ドコモはなぜ「dポイントクラブ」を改定するのか

 NTTドコモが10月、「dポイントクラブ」を改定する。1つ星~5つ星に分類されるランク制度はそのまま、判定基準や、ランクごとのポイント還元率の変更が導入される。

 発表後、ユーザーからは改善か、はたまた改悪か戸惑う声も上がった。

 10月の改定はどういった変化をもたらすのか、改定の意図を含め、NTTドコモの担当者であるコンシューママーケティング部のコンシューママーケティング戦略担当部長の森雄一郎氏と、dポイント担当部長の山本祐樹氏に聞いた。

森氏(左)と山本氏(右)

1億会員達成、次のステップ

――5月の発表会では「dポイント」関連で好調な成長ぶりを紹介される場面がありました。好調であれば、なぜ改定するのか、というあたりがちょっと腑に落ちないのですが、2年前の改定(関連記事)からこれまでをあらためて振り返るとどんな変化があったのでしょうか。

発表会では「dポイントクラブ会員が2023年に1億会員達成」「d払いユーザーは2024年度末に約5970万ユーザー」などが紹介された

山本氏
 はい、dポイント加盟店も約11万店舗になりました。店舗数は共通ポイントの比較でよく用いられるのですが、dポイント加盟店数は業界最大規模です。

 2年前、2022年6月の改定では、dポイントクラブにランク制度を導入いたしました。「貯めれば貯めるほど倍率が上がってモチベーションにつながる」などと、非常に好評で、ポイントを利用するお客さまの数は増加したと。

日常で「おトク」を感じられるように

山本氏
 一方で、「決済する場面でも、毎日、おトクを感じたい」という声がありました。

 そこで今回の改定では、「2つ星」になる条件を、直近3カ月のポイント数が100ポイント→50ポイントにして、敷居を下げ、よりライトに使う方でも恩恵を受けられるようにしました

――なるほど。

森氏
 dポイント加盟店は11万店舗ですが、その一方で「d払い加盟店」は300万店舗に達しています。利用する機会はd払い、決済のほうが多いかなと。

 お客さまの声でも「日々の支払で、dポイントが貯まったら嬉しい」というものが多かったのです。

「dポイントだけ」から「d払いも」に

――あ、dポイント加盟店とd払い加盟店を混同していましたが、別の扱いですよね。なるほど……。

山本氏
 そうなんです。d払いのほうが、先程お伝えしたように加盟店が多いですから、利用する機会も多い。

 dポイント加盟店でないけど、d払いを使えるという場所でも、dポイントを貯めやすくすることが、今回、2024年10月の改定における見直しポイントのひとつなんです。

森氏
 dポイントに触れていただく機会はどういった場面か考えると、決済でdポイントを意識する機会が増えてきたと。

 d払いの取扱実績も2023年度では2.7兆円を越えました。

 ものすごく大きなトランザクション(決済処理)で、お客様の生活のなかでも、買い物のシーンでもっとdポイントを貯めたいという期待にお応えするということになるわけです。

――dポイント加盟店とd払い加盟店の違いを意識していなかったのですが、なるほど、そういうことなんですね。だからd払いに比重を傾けると。

山本氏
 はい、そういう意味もあって、今回の発表で「dポイントカードの提示で最大2%、d払いのお支払いで最大2%、あわせて最大4%」とご紹介しました。

森氏
 「加盟店でポイントが貯まるよ」と「d払いで貯まるよ」というのが、ちょっと分かりづらいところかもしれませんね。

 「使う」と「貯める」の違いもありますが、2022年6月の改定で「dポイントカードの提示」でdポイントが貯まりやすくなって、アクティブに利用する方もどんどん増えていったんです。

 毎日のなかで、身の回りでのdポイントへの期待値があるのかなと感じていて、昨年末くらいから半年程度で検討を重ねて、発表にこぎつけました。

――電話回線もドコモで、dカードやd払い、dポイントを積極的に使う人と、電話回線とは関わりなくd払いだけ使う人、あるいはdポイントだけ使う人はどちらが多いのでしょう?

森氏
 本当にありがたいことに、すべてをdポイントへ集約される方は増えていますが、dポイントだけ、d払いだけという方もいらっしゃいます。

 今回、ランクの特典や制度を考える上で、まず「dポイントのおトクさ」を体験していただく入口として、dポイントカードを使い始める方が相当数いることがわかっていました。

 dポイントっておトク、と感じていただいて、「じゃあ決済はd払いにしようか」ということになっていったわけです。

 さらにdカードも、よりポイントが貯まりやすくなるということで契約される方もいて。

 国内では、さまざまな決済方法の選択肢があるなかで、(まだdポイント/d払いを使っていない人に)「d払い良いよな」と選んでいただけたらなと思っています。

――dポイントカード、dポイントからd払い、そしてdカードと進むケースがあって、そのロードマップに乗りやすいように、と。

森氏
 はい、新たな改定では2つ星になりやすくなって、d払いも使ってみようと思っていただけるよう特典も新設しました。

 ランク制度で、4つ星、5つ星になるとコンビニエンスストアなどの少額決済だけではなく、もっと幅広くご利用いただけるかなと思っています。利用頻度も高いです。

山本氏
 d払い加盟店も300万カ所あると、利用頻度は少ないかもしれないけれど、お支払額が一定以上の金額といったところもあります。家電量販店ですとか、紳士服チェーンですとか。

 2019年ごろと比べると、お客さまからは、d払いがメインの支払手段として認識が広がってきたかなと。

ユーザーにも企業にも役立つ仕組み目指す

森氏
 dポイントには、2つの大きな側面があります。

 ひとつは「毎日のおトク、生活に寄り添う存在」というもの。d払いやdカードをアクティブに使っていただくということで、いわばコンシューマー向けと言える面です。

 もうひとつは加盟店さんやパートナー企業さん向けと言えるものです。

 コンシューマーのお客さまの同意を得て、お買い物の行動や人流や、商品ラインアップを考えるときの材料など、いわゆるマーケティング活動のデータの起点として用います。

――新社長の前田義晃氏には約2年に一度のペースで取材していますが、4年前の取材で、dポイントを起点にしたデータが、小売や日用品メーカーなど、さまざまな企業から評価され始めているという話でした。

森氏
 そうなんです。2つの側面で価値を上げるため、会員基盤であるdポイントクラブを選んでいただけるようにすることが、最大の目的になります。

 山本のチームがコンシューマーのお客さま向け、そして私のチームがパートナー企業さまに向けてソリューションを提供していくということなんです。

 IDデータ基盤ですので、コンシューマー向けと法人向け、両方のサイクルがずっと回り続けるように広げたいのです。

ポイント倍率の変更、長期特典の終了

――一方で、たとえば「5つ星」のポイント倍率は2.5倍→2倍になるといった変更もあります。

山本氏
 新設のd払い特典などを踏まえると、基本的に不利益になるお客さまは、ほとんどいらっしゃらないと考えています。

 さきほどお伝えした「2%+2%で4%」が一番わかりやすいかと思って、今回、ご紹介しています。d払いと一緒に使っていただいて、よりおトクにdポイントを貯めていただければ。

――「長期利用ありがとう特典」も終了することになりました。実際のところ、どういった課題があったんでしょうか。

森氏
 dポイントクラブの見直しを進めるなかで、お客さまの声を分類して、集計して、抽象化して分析していくと、「ロイヤリティプログラムは、固定的なものではなく、機動的に見直されるものなのではないか」と考えるようになったんです。

 「どちらかと言えば毎日(おトクを感じたい)」や「気にせず、いつでも使いたい/貯めたい」と声が多い。

 「3年間、同じ特典が提供される」よりも、日々貯まって、好きなタイミングでおトクになるということのほうがいいのかなと。

――先にお話されていた内容に繋がりますね。

森氏
 そうなんです。

 で、今春登場した「ahamo ポイ活」に続いて、今後は「eximo ポイ活」も導入されます。組み合わせるほど、たくさんの還元を受けていただけます。

 トータルで考えると、お客さまにとって、おトクなのはこちら(新たな改定で導入される仕組み)なのかなと思ったところがあります。

 さらに今後は、ランクに連動した特典を、証券サービスで積み立てると良いよ、ですとか、さまざまなサービスで提供していきます。

森氏

 3月には「ahamo ポイ活」があり、10月に「dポイントクラブ」改定があります。

 2024年は、パートナー企業の加盟店に来店していただければ、dポイントが貯まりやすくなる、という仕組みを加速させるわけですが、社内のさまざまな部門で考えて、検討してきたものが、これからどんどん世に出ていくタイミングでもあります。

 そのためにお客さまを知ることが大切で、より良い商品やサービス・接遇の改善などにつながるかなと。それがまた原資になって、お客さまはポイントがもらえるという。

 それが、また、お客さまの買い物体験などの向上につながっていく。最終的にはお客さまのためになると思っています。

山本氏
 今度、茨城支店に異動するのですが、そこでもお客さまの体験、加盟店との関係作りが重要です。NTTコミュニケーションズと一緒に仕事できるようになって、法人向けの関係も強くなりましたし、企業にもさまざまな規模があります。グループ全体で、IDとデータで新たな価値を提供していきたいですね。

――ありがとうございました。