石野純也の「スマホとお金」

ドコモが改定する「dポイントクラブ」は改善? 改悪? ランクで変わるそのおトク度とは

 NTTドコモは、10月からdポイントクラブを改定し、ポイント付与率を変更します。dポイントクラブに「ランク制」が導入されたのは、2022年のこと。3カ月間で貯めたポイントで「1つ星」~「5つ星」までのランクが判定され、そのランクに応じてポイントカードでポイントを貯める際の付与率が向上する仕組みが採用されました。10月の改定後も、このランク制度は変わりません。

 一方で、10月からは ランクごとの付与率が変わるほか、新たにd払い特典が加わり、dポイント単体だけでなく、d払いも含めたトータルでの還元を実現する 仕組みになります。これに伴い、ランクによってはポイント還元率が下がることも。d払いを併用する必要性も上がりそうです。ここでは、10月に控えたdポイントクラブ改定の中身をチェックしていきましょう。

ドコモは、10月にdポイントクラブを改定する

ランク制は維持しつつも単体でのポイント還元率はダウン

 22年に導入された「1つ星」~「5つ星」までのランク制は、非常にシンプルな仕組みです。「2つ星」なら1.5倍、「3つ星」か「4つ星」なら2倍、「5つ星」なら2.5倍とdポイントの付与率が上がっていきます。加盟店にもよりますが、数の多い200円につき1ポイントを還元する店舗の場合、「2つ星」は0.75%、「3つ星」「4つ星」は1%、「5つ星」は1.25%の還元率になります。

 1%還元の店舗では、「2つ星」が1.5%、「3つ星」「4つ星」が2%、「5つ星」が2.5%に。倍率で上がっていくため、元々の還元率が高い加盟店ほど、高額な還元を狙えるのが特徴と言えるでしょう。例えば、ビックカメラのように5%還元の商品が多いと、「5つ星」で12.5%まで付与率が上がり、ビックポイントを貯めるよりもお得になることがあります。

現行のdポイントクラブ。ポイント還元率が最大で2.5倍になる仕組みで、ポイントが貯まりやすいと好評だ

 10月3日からは、この付与率が変わります。残念ながら、 dポイント単体として見ると、倍率は下がる ことに。「2つ星」の1.5倍はそのままですが、「3つ星」と「4つ星」は2倍から1.5倍に、「5つ星」は2.5倍から2倍に、それぞれ0.5倍ずつ倍率がダウンします。「2つ星」から「4つ星」までは、いずれもポイント倍率が1.5倍にそろえられているため、これだけだと頑張って「3つ星」以上に上がるモチベーションがそがれてしまう印象も受けます。

 一方で、「3つ星」以上には、新設される「d払い特典」が加わります。「3つ星」は0.1%、「4つ星」は0.5%、「5つ星」は1%、還元率が上乗せされます。 ポイントが倍率、d払い特典が還元率 で単位が異なり、少々分かりづらいため、200円につき1ポイントの加盟店でポイントを貯めた場合の比較をすると、改定前後の変化がはっきり分かります。

各ランクのポイント還元率は下がる一方で、d払い特典がつく

 まず、「2つ星」はd払い特典がないため、還元率は0.75%で据え置きです。変化があるのは、「3つ星」以上の場合。「3つ星」に関しては、dポイントの還元率が1%から0.75%に低下します。ここにd払い特典の0.1%を加えても、還元率は0.85%に。元々は1%還元だったことを踏まえると、0.15%ほど、還元率が低下していることになります。ユーザーのボリュームの多そうな中間ランクとも言える3つ星ですが、この還元率が絞られてしまう点には、ユーザーからの反発も大きくなるかもしれません。

「2つ星」は還元率維持だが、「3つ星」はd払い特典を併用してもポイント還元率が下がってしまう

「4つ星」以上はd払い併用で還元率アップ、「2つ星」への上がりやすさもメリットか

 次に、「4つ星」を見ていきましょう。

 「4つ星」に関しても、還元率0.5%の加盟店の場合、付与されるdポイントが1%から0.75%に低下してしまいます。ここだけ見ると、「4つ星」に関しても“改悪”と言うことはできそうです。ただし、「3つ星」の場合とは異なり、「4つ星」はd払い特典が0.5%と比較的大きく設定されています。これを合わせた時の還元率は1.25%になり、現行の「4つ星」よりも高還元が実現します。

 dポイントの倍率単体で見れば改悪のようにも思える一方で、d払いを併用した際にはより還元率が上がると言えるでしょう。これは、一長一短。dポイントを貯めつつ、他社の決済サービスや現金で支払っていた場合には、還元率が下がることになります。これに対し、支払いの手段をd払いに変えるだけで還元率はこれまでより上がることに。 「4つ星」に関しては、特にd払いで決済するモチベーションが高まる ように設計されていることが分かります。

 最後に「5つ星」ですが、還元率0.5%の加盟店では、1.25%から1%に還元率が下がってしまいます。ただし、こちらも「4つ星」と同じで、d払い特典が1%と高めに設定されています。d払い特典を合算した場合の還元率は2%に。 既存のランク制度と比べ、還元率が大きく上がる格好になり、積極的にd払いを利用したく なってきます。他のランク同様、dポイント単体での付与率は下がるものの、それを補って余りあるd払い特典が用意されているというわけです。

「4つ星」と「5つ星」に関しては、dポイント単体での還元率が下がる一方で、d払い特典を併用すれば、現行のdポイントクラブより還元率がアップする。この点は、ヘビーユーザー向けの改善と言える

 また、改定後のdポイントクラブでは、ランクの判定基準が一部緩和され、「2つ星」に上がりやすくなっています。「2つ星」に必要なポイントは、3カ月で50ポイント。毎日の買い物で少しずつdポイントを貯めていればすぐに達するほか、ドコモ回線などを契約している場合でも、簡単に「2つ星」に上がれるようになります。超ライトユーザーを「2つ星」に上げる効果があると言えそうです。

「2つ星」にランクアップするためのポイント数が100ポイントから50ポイントに引き下げられる。これによって、特典を受けられるユーザーの数は増えそうだ

 こうした事実関係を踏まえると、ドコモは d払いの利用を促進しつつ、よりヘビーユーザーを優遇する 方向に舵を切ったと言えるでしょう。特に「5つ星」でd払いを使うユーザーには、手厚く還元する方針が見て取れます。一方で、より裾野を広げることも意識しており、dポイントを少し貯めただけですぐに「2つ星」に上がり、ポイント還元率が1.5倍になるように設計されています。

 ガツガツとヘビーにポイ活をするユーザーに、決済サービスも含めて使ってもらいつつ、これまでポイ活にあまり興味のなかったユーザーを「2つ星」に上げ、dポイント経済圏に引き込みたい狙いが透けて見える設計と言えそうです。一方で、“中間層”とも言える「3つ星」のユーザーは割を食う形になっており、dポイントの貯め方を見直す必要がありそうです。うがちすぎかもしれませんが、ここが改定のための“原資”の一部になっている可能性はあります。

注意したいd払い特典の“条件”、高まるdカードの重要性

 ほかにも、「3つ星」以上の場合、携帯電話料金に充当した際に「料金充当特典」を受けることができ、これも新たな特典と言えます。せっかく、加盟店やd払いで使えるdポイントを、携帯電話料金の支払いに充ててしまうのは少々モヤモヤするところではありますが、「5つ星」の場合には、5%と高めの還元率が設定されており、クレジットカードや口座引き落としで支払うよりもお得感があります。

 一方で、旧料金プランにあった「長期利用ありがとう特典」は、10月末日に終了します。誕生月にd払いを利用すると、還元率が大幅に上がる特典でしたが、新料金プランへの移行の妨げになっていたのも事実。特に旧料金プランの「5Gギガホ プレミア」などを利用していたユーザーの場合、「eximo」にするメリットが薄くなっていました。この特典がなくなることで、料金プラン変更するメリットが出てくるような印象です。

携帯電話料金をポイントで支払うと、ランクに応じた還元を受けられるようになる。一方で、長期利用ありがとう特典は終了に

 dポイント偏重だった還元をd払いに分散させる改定ですが、d払い特典を受ける際には注意も必要になります。それが、支払い方法です。d払い特典が適用される条件は、「dカードからの支払い」もしくは「電話料金合算払いからの支払い」かつ携帯電話料金の支払いにdカードを設定している場合。つまり、いずれの場合もdカードでの支払いが必須になります。

 dカード以外で支払う場合はもちろん、携帯電料金合算払いでも、 dカード以外で支払っている場合には、d払い特典は受けられません 。d払いの利用促進に加え、dカードの利用促進的な意味合いもあるプログラム改定と言えるのです。中でも注意したいのが、d払い残高が対象外になっているところ。d払いにチャージしつつ、プリペイド的に日々の支払いをしていると、還元率が下がってしまうことになります。

d払い特典の適用条件は、いずれもdカードが必要になる。残高払いだと特典の適用対象外になる点には注意が必要。かなり重要な点なので、注ではなく、本文に記載してほしかった

 コード決済サービスは、日々の細かな支払いをすることも多く、銀行口座から直接チャージができる残高払いとは相性がいいと言えます。筆者もコード決済は、その多くが残高払い。後払いの際にはクレジットカードを直接利用することも多いため、d払いの残高払いにd払い特典がつかないのは、d払いの魅力がそがれているようにも感じました。この条件は注釈で細かく記載されているだけなので、10月3日以降、ポイント還元を受けたい時には忘れないようにしておきたいところです。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya