インタビュー
「うごくま」をシニア層の“相棒”に、「かんたんスマホ3」開発チームの思いとは
2023年4月13日 00:00
ソフトバンクがワイモバイルから3月9日に発売した「かんたんスマホ3」。京セラ製の5G対応Androidスマートフォンで、シニア層をメインターゲットとして想定する一台だ。
“心身が衰えた状態”=フレイルを防ぐためのアプリ「うごくま」が、利用者の健康維持をサポートする。「かんたんスマホ3」への搭載にあたり、開発チームは実証実験を含めて試行錯誤を繰り返したという。
そこで今回は、ソフトバンクの「かんたんスマホ3」開発チームに、「うごくま」に込めた思いなどを聞いてきた。
先代モデルからパワーアップ
「かんたんスマホ3」は、「かんたんスマホ2+」の後継機として位置づけられるモデル。新たにNFCやFeliCaに対応し、キャッシュレス決済やマイナンバーカードの読取りに活用できる。
ディスプレイは約5.6インチ→約6.1インチ、バッテリー容量は3300mAh→4500mAhといずれも大きくなり、基本スペックはパワーアップしている。チップセットは「MediaTek Dimensity 700」を搭載する。
カラーはシルバー、グリーン、マゼンタの3色が、候補色6色のなかから選ばれた。従来モデルの落ち着いた色合いとは異なり、やや明るめの色が好まれる傾向にあったという。
「フレイル」を防ぐために生まれたアプリ
迷惑電話の対策機能など、従来のモデルでも好評だった機能は「かんたんスマホ3」にも受け継がれている。
そして、今回から新たに搭載されたのがフレイル対策アプリ「うごくま」だ。かわいらしいキャラクターとの会話などによってウォーキングなどを促し、利用者の健康維持をサポートする。筑波大学 山田実教授の監修のもと、開発が進められた。
フレイルとは、生活機能が低下して介護が必要になる手前の段階を指し、「健康」「要介護」の間に位置する。フレイルを防ぐことは、シニア層の健康寿命の延伸につながる。
利用者に寄り添う「うごくま」
「うごくま」は目標歩数に関するアドバイスだけでなく、何気ない日常会話なども通じ、ウォーキングの習慣化を後押しする。「うごくま」のコメントは、モチベーションを上げるというより、利用者に寄り添うことを重視して開発されたもの。
鳥取県江府町や埼玉県ふじみ野市などで実証実験が実施され、先行して利用者の声が集められた。なかには、実証実験の終了に伴って「うごくま」が使えなくなることを寂しがる声もあったという。
インターフェイスの工夫
シニア層の利用を考慮し、ユーザーインターフェイス(UI)にも工夫が凝らされている。
一例として挙げられるのが、数値の設定画面。上下にスライドし、回転させて数値を選ぶ“ドラムロール”式ではなく、シンプルにプラス(+)とマイナス(-)のボタンが設置されている。これは、シニア層に対してアプリの検証を実施し、フィードバックを反映したものとなっている。
生年月日の入力時には、西暦と和暦を併記するようにした。そのほか、初期設定を可能な限り簡略化し、使いやすさの向上を図っている。
満を持してリリース
実はこの「うごくま」、「かんたんスマホ3」への搭載を目指して企画がスタートしたわけではなかった。もともとはシニア層向けのスマートウォッチの企画として、2018年10月ごろに着想を得た。
その後、先述の通り自治体と数々の実証実験を実施。企画をブラッシュアップするなかで、「かんたんスマホ3」のリリースとタイミングが合致し、今回お披露目されることになった。
ソフトバンク プロダクト本部 UX企画統括部 UX企画部 UX企画4課 課長の山田聖人氏は、「この企画は“引き算”だった」とコメント。高い機能性ではなく、見やすさやわかりやすさなどを重視して開発が進められた。同氏は「(機能などを)途中で削るのは怖かったが、一歩踏み込めたのは、実証実験で多くのリアルな声を集められたから」と自信を見せる。
開発チームでは、たとえば季節に合わせたコンテンツの拡充など、アップデートによる「うごくま」の強化も図りたいとしている。「うごくま」は一年を通じ、心強い“相棒”として利用者に寄り添っていく。