インタビュー

ファーウェイ呉波氏、「Androidを優先する。Mate 30は5Gにあわせる」

 14日、「nova 5T」発表会のあと、ファーウェイの日本・韓国リージョンプレジジテントである呉波氏が報道陣の取材に応対した。

前日に40歳の誕生日を迎えた呉波氏。30代の全てを日本で過ごしたという

 発表会では、ファーウェイの独自のアプリ配信プラットフォームである「HMS」へ注力する方針や、周辺機器とスマートフォンを組み合わせてAIを活用する環境を提供する「シームレスAIライフ」が発表されており、そうした取り組みや、今後の新機種発売などに質問が及んだ。

今後の新機種

――日本での5G端末の発売計画は。

呉波氏
 5G端末では、たとえばこれまでソリューションに40億ドル投資しています。チップセット、新しい材料、放熱、アンテナなどの技術研究で、イノベーションも起こしてきた。技術の先進性を保ってきました。

 日本は来春、商用サービスだが、グローバルでは欧州、中東、韓国で5G商用サービスが提供され、今年が元年と言われています。

 Mate 20 Xというデュアルモードの機種はスイスなどで販売されています。

 日本にあわせて、5G端末をシリーズで日本市場へ投入する予定です。複数の販売チャネルを通じて、販売ビジネスを推し進めていきます。

――SIMフリー市場が中心か?

呉波氏
 どちらも進行中です。ファーウェイは5Gで他社よりも半年~1年先行していると言われています。

エンティティリスト入りの影響

――米国のエンティティリストに入ったことで、日本市場への影響はどの程度あったか。

呉波氏
 去年の12月からで、すごく取りざたされましたが、ファーウェイのビジネスへ根本的な影響があったかというと、そうではありません。今回のプレゼンでもご紹介したように、成果は挙げています。それが一番の回答になるのではないかと思います。

 たとえばグループ全体で24.4%増(前年度同期比)となりました。2億台の出荷も前倒しで達成しました。

 日本市場については、確かに5月16日の禁輸措置以降、変動はありました。しかし日本の消費者から支持され、前年を上回る業績を打ち出せるようになりました。

 SIMフリー市場でも1位です。ただ禁輸措置がなければもっと伸びていたかもしれません。

――今後もユーザーは使い続けられるのか。

呉波氏
 過去発表したもの、発売したものは、アップデートに影響を受けることはありません。なので、日本の方にも安心して使っていただけます。

 今日は追加のお知らせが2つありました。1つは個別の機種のアップデート計画です。これは安心していただけるようにするための情報提供です。SIMフリー市場には多くのメーカーがいますが、安心して使えるのはファーウェイです。2年前のモデルもまだアップデート対象です。

 来年、日本では5G商用化、五輪があります。そこで今回1+8の戦略をお伝えしました。それにあわせた戦略になります。

 これまで技術的な大きな進化を遂げると、端末の形が大きく変わってきました。それは消費者のニーズが変化しているからです。

 とはいえ、日本に来て9年になりますが、毎年「生き残ること」を目標にしてきました。恐れ敬う心を失っていません。そして根本には「消費者第一」という考えを抱いています。

Mateシリーズの今後

――Mate 30シリーズやMate Xを日本で発売する計画はあるのか?

呉波氏
 Mate 30シリーズは来年、日本の5G商用化にあわせて発売の準備をしています。Mate Xも同じです。ぜひご注目ください。

 グーグルとは良好な関係にありますので、当社の製品にはAndroidやGMS(グーグル提供のサービス群)を優先して搭載していきます。ただ、米国の規制が続いた場合に備え、自社でもエコシステムを構築できるようにしています。

 ファーウェイのスマホには、独自かつ先進的な特徴があります。来年、日本では5Gが始まります。「1+8」(スマートフォンと周辺機器)でのシームレスAIライフという戦略をご紹介したわけです。より良い体験をもたらせると考えています。

――ウェアラブルデバイス向けのKirin A1チップはなぜ汎用性が高いのか。ニューラルコアも備えているのか。

呉波氏
 A1は世界で初めて、イヤホンとウォッチのためだけに開発されたチップです。特にウォッチでは、消費電力で他社の数倍優れています。AIも採り入れています。

 たとえばイヤホンのFreebuds3では、設計の工夫などによって、スマートフォンでゲームを遊ぶ人に向けて、音を同期させて、遅延しないようにしています。このチップはあくまでイヤホンとウォッチ向けです。他の製品では、それにあわせた独自チップを作っていきます。

独自OSやHMSについて

――HMS(ファーウェイ独自のアプリ配信プラットフォーム)を日本の開発者向けに注力するとのことだが、その理由は? 今後の展開は?

呉波氏
 HMSのエコシステム構築に注力しています。日本には多くのアプリ開発企業があります。グローバルでの取り組みの一環として、日本でも推進することになったのです。

 スペイン、ポルトガルなどで開発者大会が開催されており、12月、初めて日本でも開催することになりました。

 ただ、Android、GMSを優先して使っていく。そのため、最悪のケースになったときだけ、我々のエコシステムを立ち上げていきます。

 日本語でのサポート、無料のサーバーのほか、金銭面でも10億ドルの資金を用意しており、海外市場への参入の障壁を取り除きたいと思っています。きちんと利益を確保できるような環境にしていきたいです。

――ファーウェイ独自OSの開発状況は?

呉波氏
 ファーウェイのHarmonyOSは、今後のAI世界にあわせて開発されています。

 なにもAndroidを代替しようとするわけではありません。次世代に向けたもので、マイクロカーネルをベースとしたものです。

 すでにファーウェイのスマートスクリーンには搭載しており、ウォッチやスマートスピーカーなどにも搭載していきます。

 繰り返しになりますが、スマートフォンにはAndroidを優先して搭載しますが、米国による制裁に備えて独自のエコシステムも構築していきます。