インタビュー

スマートタグ「Tile」が目指すプラットフォーム化

CJ プロバーCEOに聞く次の世界

 「落とし物トラッカー」や「スマートタグ」といった名前で登場したアイテムをご存じだろうか。自宅の鍵や財布に紐付けて、もし紛失した際には、その場所がわかったり、アラームを鳴らしてくれたりする製品たちだ。

キーに付けられたTile

 日本では2017年ごろから入手しやすくなってきたジャンルの製品で、いくつかの企業が「Bluetoothでスマートフォンと繋がるタグ」という単体での存在から、新たなサービス価値を生み出そうと試みている。

 そうした企業のひとつである米Tile社のCEO、CJ プロバー(CJ Prober)氏が来日した。現在までの取り組みと今後の狙いを聞いた。

CJ プロバー氏

落とし物を見つける価値

 当初から「紛失物というユーザーにとってのペインポイントを解決するために生まれた」(プロバー氏)というTile。これまでに2500万個が販売された。その結果、現在230の国と地域で利用され、1日あたり400万個の落とし物を見つけている。

 Bluetooth経由でスマートフォンと繋がる仕組みを利用し、たとえユーザーの手元から紛失されたとしても、他のユーザーのTileとスマートフォンを介して再発見できる仕組みが整備された格好。

 米国では、アンティークのバイオリンを見つけたエピソードなどもあるとのことで、紛失したものをあらためて見つけ出せる、という体験が、Tileが獲得したユーザーコミュニティの価値を向上させるのだという。

3つのキーポイント

 拡がることで、製品単体だけではなく、独自のネットワークを作り出して新たな価値を創出したTile。そうした動きは、競合製品も進めるところだが、Tileには3つのポイントがある、とプロバー氏。

 ひとつめは「Tileノード」。これは、Bluetooth対応製品にTileの機能を組み込み、さらにTileのネットワークやコミュニティを構成するデバイス、ユーザーを拡げる試みだ。すでにいくつかのワイヤレスヘッドホンで採用されており、たとえばBoseのオーディオヘッドホンにも搭載されている。

Tile機能を備えるBoseのイヤホン

 Bluetooth製品は毎年、数え切れないバリエーションが登場し、途切れることなく出荷されている。それらの製品にとって、Tileの機能を備えることは、新たな付加価値をユーザーへ提供できることにも繋がる。

スカルキャンディーのヘッドホン。
パッケージにTileのロゴ。ヘッドホンながらTileの機能が組み込まれている

 ふたつめのポイントは物理的なアクセスポイントの拡大。さまざまなアイテムへTileを組み込めるようにするというコンセプトで電源に繋がっている製品が対象だ。たとえば米国では、CATVを展開するコムキャストとTileは提携しており、セットトップボックスやテレビリモコンにTileを探すといった機能が想定されている。法人向けでも、タブレットにTileのアクセスポイント機能を備えることで、さまざまな備品管理に役立てられる。

 そして3つめは、ユーザー自身の持ち物を管理できる機能の提供。海外ではプレミアムサービスとして、Tileの製品を自宅に置いて外出すると、手元にあるスマートフォンに通知が出る。つまり忘れたことを通知してくれるわけだが、こうした形で、ユーザー自身が手にすべき持ち物を管理しやすくする。日本ではプレミアムサービスの提供を今後予定している。ちなみにプレミアムサービスでは、バッテリー交換対応のTileを持つユーザーへ、毎年、交換用バッテリーを贈るという特典もある。

いかにノードを拡大、維持していくのか

 日本では、ユーザーの75%がアクティブで、製品が初めて登場して以来、ユーザー規模は10倍以上に成長した。

 ノード、つまりTile対応デバイスをいかに拡げ、維持していくかという点は、今後のTileにとって課題のひとつになると見られるが、プロバー氏は、「紛失したものを見つける」という価値を、口コミで広がることに期待。Tile側からそうした口コミのコントロールはできないが、パートナーを拡げ、Tile搭載製品を増やし、ユーザー基盤の拡大を図れば、自然と口コミでその良さも広がると期待しているようだ。

 類似のサービスや製品を手がける競合がいる中で、Tileはどういった点を強みにしていくのか。プロバー氏は、研究開発を踏まえた経験と品質の良さが、口コミやレビューで高評価を招くと自信を見せる。さらに大量生産により、価格優位性も生み出せるとコメント。たとえば電池交換版のTileは、これまで3110円だったが、1カ月前の2019年5月には、1980円へ値下げしている。

 その上で、ノードなどの戦略に基づき、スマートホーム製品など、Tile機能の組込先を拡げていくという。

 さまざまなモノへの浸透を試み、増殖を続けようとするTile。独自のプラットフォーム、ネットワークを構築して付加価値を生み出すため、今後もTileの機能を備える製品が登場する見込みだが、今回のインタビューでは、具体的な新製品について触れられることがなかった。どういったアイテムが今後登場してくるのか、Tileの次の一手が注目される。