インタビュー

「IDOL 4」「SHINE LITE」のAlcatelがもたらす新たな体験

TCLのラッキー・ツァオ氏に聞く

 alcatel(TCLコミュニケーション)の新たなSIMロックフリースマートフォン「IDOL 4(アイドル フォー)」と「SHINE LITE(シャイン ライト)」が2016年冬モデルとして、日本市場で発売される。

 5.2インチディスプレイの「IDOL 4」はパッケージがVR(バーチャルリアリティ、仮想現実)用のゴーグルとして利用できるというユニークな仕立て。一方の「SHINE LITE」は、グローバルでも9月に発表されたばかりの機種だ。これらの機種を、日本でローンチすることになった背景について、TCLコミュニケーションジャパン取締役カントリーマネージャーのラッキー・ツァオ氏に聞いた。

「SHINE LITE」、日本が世界で一番乗り

――今回、「IDOL 4」と「SHINE LITE」という2つのシリーズを日本向けに提供することになりました。その位置付けや狙いから教えてください。

ツァオ氏
 日本ではこれまで「IDOL 2S」「IDOL 3」を提供してきましたが、もっとalcatelの製品に触れていただける機会を作りたかったのです。そこで、ミドルハイに位置付けられる「IDOL 4」と、エントリー向けの「SHINE LITE」を用意しました。

IDOL 4

 特に「SHINE LITE」は9月に発表されたばかりの機種です。グローバルの中でも、どこよりも早く日本で提供することになりました。

――日本が最初の発売国ですか。

ツァオ氏
 日本のユーザーのみなさんは世界の中でも、やっぱり目が肥えています。「SHINE LITE」はデザインとコストパフォーマンスに優れた機種であり、その仕上がりは日本にマッチしているのではないかと。これまで日本市場で展開して学んだことを反映した結果のアクションとも言えるんですよ。

SHINE LITE

――なるほど。では、約1年前に日本で発売した「IDOL 3」では、どういったフィードバックを得たのでしょう?

ツァオ氏
 ポジティブな評価としては、サウンドですね。そのクオリティは高い評価をいただきました。一方で、学んだところとしてはデザインやボディサイズです。たとえば5.5インチというサイズは、日本では少し大きいと評価される傾向にあります。今回、5.2インチの「IDOL 4」のみを発売し、同時期に発表した5.5インチの「IDOL 4S」の提供を見送ったのは、価格も含めて、そうした学びに基づくものです。

 「IDOL 4」のデザインは、いつも手元にあるスマートフォンだからこそ、手にする心地よさ、エレガントさを実現しています。それは外観だけではなく、使い勝手の面も重視し、「IDOL 4」ではメモリを3GB、搭載しています。一方で、ストレージは16GBです。Android 6.0からは、外部メモリカードを本体メモリと同等に扱える機能もありますが、コストとスペックのバランスを突き詰めました。ちなみにmicroSDカードは最大512GBまでサポートしています。

VRゴーグルのパッケージを用意したワケ

――コスト面だけを考えれば、VRゴーグルになるというパッケージではなく、一般的な箱にするという選択肢も検討されたのではないかと思います。

ツァオ氏
 はい、そこは本当に議論した部分なんです。でも、VRを体験するならば、端末単体よりも標準セットとしてゴーグルがあるほうがやはり手に取っていただきやすい。

 TCLコミュニケーションという企業の方針として、VR元年と言われる現在、VRへコミットすることを打ち出しています。2016年5月、グーグルが「Daydream」というVRプラットフォームを発表した際には、alcatelが最初にDaydream対応スマートフォンを提供するサプライヤーの一社として名乗りを上げています。私たちのポジションとしては、テクノロジーに関心の高い層だけではなく、普段はあまりそうした先端技術に馴染みのない方に対しても、新たな体験を届けたいと考えています。

 当社のコーポレートビジョンである「イノベーションのデモクラタイズ(最新技術の大衆化)」と云う言葉に集約されてますね。それからハイエンドスマートフォンや、(VRゴーグルや360度カメラといった)VR専用の単体デバイスも用意して、幅広くコミットしていくという姿勢なのです。

――なるほど、パッケージをVRゴーグルとするのは、より幅広い層に向けた取り組みということですね。そのアイデアはどういった経緯で生まれたのでしょうか?

ツァオ氏
 社内では、常に新しいアイデアを求めています。特にミレニアル世代と呼ばれる、35歳以下の比較的若いユーザー層に向けて、何をどう差別化要素としていくのか、ユニークなポイント作りを心掛けているのです。そうした取り組みの中から、フランスに拠点を置く当社のデザインチームから生まれたアイデアが、パッケージ=VRゴーグルという形でした。

――VRコンテンツの供給についてはどういった姿勢で挑むのでしょう?

ツァオ氏
 まだ詳細はお話できませんが、日本市場に向けた取り組みとして、VRコンテンツの振興を目指す団体に加盟して協議を始めています。また、ユーザー自身が作り上げる動画やアプリもありますし、Web上にも色々なコンテンツが出てきており、それは加速していくでしょう。さらに当社の独自VRコンテンツストアも提供していきます。

――VRゴーグルのパッケージを提供する上で、店頭では何か新しいことも実施されるのでしょうか?

ツァオ氏
 はい、量販店ではいわゆるホットモック、つまり実機を配備しようとしています。そしてVRゴーグルも。店頭で体験できる環境を提供しようと準備を進めているところです。

ミレニアル世代を意識したBOOM KEY、3.6Wのスピーカーも

右側面にあるBOOM KEY

――「IDOL 4」の機能面では、BOOM KEY(ブームキー)がユニークですね。

ツァオ氏
 はい。ミレニアル世代が8秒という短い時間で、興味をひかれたり、決断したりするという傾向を受けて用意したボタンです。手軽に写真を撮ったり、撮った写真を見ているときに押せばコラージュを作成したりするといったものです。ミレニアル世代についてはグローバルで調査をしました。ネットに繋がるのが当たり前の世代であり、SNSを利用する際にも、流れてくるコンテンツが面白いかどうかの判断がとにかく速い。その関心をいかにキャッチするかが鍵になっています。

――「BOOM」というネーミングにはどんな由来が?

ツァオ氏
 「興奮させる」「一段上に拡張させる」といった意味ですね。その効果については。ネット上での反響を確認していきたいです。今はSNSを通じて、ユーザーのダイレクトな反応がわかりますから。

――なるほど。

ツァオ氏
 それから3.6Wのスピーカーも大きな特徴です。グローバルで見ても、マルチメディア関連の機能は重要視されているところで、昨年の「IDOL 3」では2.1W出力のスピーカーが予想以上に高く評価していただけたんです。YouTubeのようなサービスを楽しむ際にも便利で、3.6Wスピーカーは、他社製スマートフォンより飛び抜けたポジションにあるスペックだと自負しています。

one more thingで「au VoLTE」

――12日の発表会ではプレゼンテーションの最後に「one more thing」として、
auのVoLTEへの対応を紹介しましたね。

ツァオ氏
 日本における本当の意味でのオープンなSIMロックフリー端末と名乗るには、auさんのVoLTEへの対応が必要です。NTTドコモさんやソフトバンクさんのネットワークだけではなく、大手3キャリアのネットワークにきちんと対応する。これは我々にとって相応の投資が必要でした。

――ユーザーにとってはどういったメリットがありますか?

ツァオ氏
 このMVNOでは使えるかな? それとも使えないかな、なんて悩む必要がなくなるじゃないですか。これでこそ本当のSIMロックフリーということなんです。

これからも日本市場で

――最後に、今の日本市場をどう見ているのか。今後の展開を含めて教えてください。

ツァオ氏
 SIMロックフリー端末の市場は成長し続けています。これまでに日本では150機種ほどすでにSIMロックフリー端末が出てるのではないかと考えており、本当に沸騰しているところです。

――これからも機種数は増やしていきますか?

ツァオ氏
 そうしたいですね。グローバルでの製品ラインアップは本当にたくさん用意しているんですが、日本の方は目が肥えています。実際に手にとってもらえる製品はどういったものなのか、きちんと見極めていきたい。闇雲にやっていくのではなく、きちんとニーズにあったものを出していきたいんです。2015年に提供した「IDOL 3」は価格面で、ニーズより少し高かったのではないか、と考えて、今回の「IDOL 4」「SHINE LITE」では価格面でもチャレンジしています。今後、MVNO様によっては割賦契約できるところがあるかもしれませんが、そうなれば本当にお求めいただきやすくなると思います。

 そしてalcatelというブランドイメージをもっとアップさせていきたいですね。性能とコストパフォーマンスというバランスをきちんと取っているメーカーであり、ツボを押えた特徴のあるメーカーだとご理解いただけるよう頑張っていきたいです。

――ありがとうございました。