インタビュー

「auのフラッグシップモデルは最新OSに」――14機種バージョンアップの背景

KDDI 山田氏に今後の方針を聞く

 Android 7.0へのバージョンアップを計14機種に提供すると発表したau。今まで、OSバージョンアップには比較的慎重な姿勢を見せていたauだが、今後はより積極的に提供していく方針だという。

 OSバージョンアップに対する意識の変化の背景を、au端末の企画を統括するKDDI 商品・CS統括本部 プロダクト企画本部長 兼 プロダクト企画部長 山田靖久氏に伺った。

KDDI 商品・CS統括本部 プロダクト企画本部長 兼 プロダクト企画部長 山田靖久氏

――今回のAndroid 7.0バージョンアップは、auの歴代Androidバージョンアップでは最多の14機種に提供されますね。

山田氏
 はい。今後auは、OSバージョンアップもしっかりと取り組んでいきます。まずは各メーカーさんのフラッグシップモデルを中心とした14モデルに、Android 7.0へのOSバージョンアップを提供します。

――Android 7.0バージョンアップの提供時期はいつ頃でしょうか。

山田氏
 早い機種では年明けから、順次、提供していきます。メーカーさんが、自社のグローバル向けモデルにバージョンアップを提供するタイミングから、なるべく間を置かないように、提供ペースを上げるための用意を進めています。

――OSバージョンアップを積極的に提供する背景をお聞かせください。

山田氏
 一番の要因は、お客様の声です。OSバージョンアップを待ち望んでおられるお客様が多くいらっしゃることは、これまでのお客様アンケートからも把握していました。先進的な機能を求められるお客様からは、特にOSバージョンアップの要望を多くいただいていました。

 一方で、「使い勝手が変わる」という理由から、OSのバージョンアップをしたくないというお客様も多くいらっしゃいます。

KDDIが実施したユーザーアンケートの結果。OSバージョンアップを求めるユーザーはセキュリティの改善や不具合の解消、新機能の追加を重要視する。一方、OSバージョンアップを利用したくないユーザーは、操作感が変わることを不安視している

 そこで、OSバージョンアップを望まれるお客様が多い、各メーカーさんのフラッグシップモデルから、迅速にOSバージョンアップを提供できるような体制作りを進めてきました。

 具体的には、発売から2年間を目処に、フラッグシップモデルへのOSバージョンアップを提供していきたいと考えています。Androidの新OSが1年に1回発表される現在のサイクルでは、OSバージョンが約2回提供されるイメージです。OSバージョンアップについては、提供の目処が立ち次第、なるべく早くご案内していきます。

――AndroidにはOSバージョンアップの他にも、グーグルによるセキュリティアップデートが毎月配信されています。こちらの提供はいかがでしょうか。

山田氏
 これまで通り、影響が大きいものに関しては可及的速やかに提供していきます。それ以外のものについても提供ペースを速め、2~3カ月に1回程度の提供を目指します。

auアプリでAndroidの標準機能の活用し、OSへのカスタマイズを減らす

――これまで、OSバージョンアップの提供に積極的ではなかったのは、なぜでしょうか。

山田氏
 いくつかの理由から、提供が難しかったという事情があります。メーカーさんによってOSバージョンアップに関する考え方が違うというのも、その1つでした。

 この点に関して、現在のスマートフォン市場は、1つの機種を長くお使いいただくお客様が増えていく傾向にあります。そのような環境の中で、auもメーカーさんも、OSバージョンアップにより積極的に取り組んでいく必要があるという、共通の認識を持っています。

 最も大きな理由は、日本でニーズの高いカスタマイズを多く施していることです。メーカーさんのグローバル向けモデルと比較しても、カスタマイズの差分が大きいため、検証をしっかりと行わないとお客様に迷惑をおかけしてしまいます。今回の取り組みの裏側では、アプリを開発する協力会社とともに、迅速に検証できる体制をきちんと構築しています。

――Android 4.0までは、Andorid OSのバージョンアップとともにUI(ユーザーインターフェイス)が大きく変化していましたが、そういった変化が少なくなったのも理由の1つでしょうか。

山田氏
 もちろんその理由もありますが、より重要なのはAndroid OSの持つ機能が充実してきたことです。

 これまでは、Android OSの基本機能では足りない要素を、au独自のカスタマイズによってカバーしてきました。しかし、最近ではAndroid OSの充実にともなって、OSの機能を使ってアプリ上で実現できることが増えてきています。

 そこで、アプリ側の実装できる機能はなるべくauが提供するアプリ側に、メーカーさんがOSに手を加える負担を軽減するようにしています。

 auのお客様だけでなく、日本のAndroidユーザー全体に有益な新機能は、Androidの標準機能としてサポートされるよう、グーグルとも調整しています。

端末の設定をまとめて変更、不慣れなユーザーをサポート

――OSバージョンアップで操作感が変わることが不安なユーザーには、どのようなサポートを提供されていますか。

山田氏
 先進的な機能を求めるお客様の声を多くいただく一方で、「操作感を変えないでほしい」というお客様も多くいらっしゃます。そういったお客様が多いミドルレンジ以下の機種では、今まで通りのペースでOSバージョンアップを提供していく方針です。

 一方で、多くのお客様が端末を使いこなせるように、操作をサポートする新しい取り組みを行っています。それは、プリインストールの「auお客さまサポート」アプリの新機能「セルフケア」です。2016年春モデルの一部機種から提供を開始し、夏モデル以降のほとんどの機種に対応しています。

「セルフケア」機能

 今まで、auお客さまサポートアプリでは、「困った時・分からない時」という項目を用意して、お客様がお使いの機種の操作方法などをご案内していました。その案内画面に、お客様のご要望にあわせた端末の設定変更をまとめて行うボタンを追加しました。

 例えば「電池持ちを良くしたい」といったご要望に対して、GPSやWi-FiやBluetoothや画面の消灯の設定を、auお客さまサポートアプリからまとめて実行できます。「電池持ちを良くしたい」お客様が求める操作を、細かい設定に悩むことなく実現できる機能になっています。

 今後は、「困った時・分からない時」の案内画面ににたどり着けないお客様でも安心してご利用いただけるよう、電話サポートのオペレーターがご案内しながら端末の設定を変更できるような機能拡張を検討しています。

アプリ内ブラウザで開いた操作案内画面から、端末の設定をまとめて変更できる

――フィーチャーフォンでは前の端末の設定やインターフェイスを引き継ぐ機能を提供されていましたが、今後Androidでそういった機能を拡充していく方針はありますか。

山田氏
 設定やお客様の連絡先や写真といったデータを引き継ぐサービスは、クラウドストレージを介する形で提供しており、今後も継続的に改善をしていきます。

 設定そのものを丸ごと引き継ぐようなサービスも検討していきますが、設定を引き継ぐ端末と、引き継いだ新端末の組み合わせには、Android、iPhoneにフィーチャーフォンと、非常に多くのバリエーションが想定されます。サポートする組み合わせを、地道に増やしていく必要がありますね。

 また、クラウドストレージを不安に思われるお客様や、Android標準の設定を引き継ぐ機能の利用方法がわからないお客様もいらっしゃいます。そういった方にも、しっかりとサポートを行っていきます。

――本日はどうもありがとうございました。