【ワイヤレスジャパン2015/WTP2015】
障害に強い、繋がりやすい――ドコモが語る「NFV」のメリット
(2015/5/27 15:25)
「NFV」(ネットワーク仮想化)は、高い信頼性を持つ一方でコストも高くなりがちなハードウェアの代わりに、汎用的なハードウェアの上で、ソフトウェアによる仮想的なサーバーを複数台、動作させて、代替するもの。携帯電話会社にとっては、このところ注目されている取り組みだ。
27日~29日、東京ビッグサイトで、通信関連の展示会「ワイヤレスジャパン2015/ワイヤレステクノロジーパーク2015」が開催されている。初日の基調講演に登壇した、NTTドコモ執行役員でR&D戦略部部長の中村寛氏は、「NFVのメリットとして、IT業界ではコスト面がよく指摘される。一方、テレコム(通信事業)には新しいメリットがあるのではないか」と聴衆に語りかける。
NFV、4つのメリット
現在の設備では、1つのハードウェアに1つの機能(ソフトウェア)といった形だが、NFVは共用のハードウェアに仮想化レイヤーを設けて、ソフトウェアで仮想的なハードウェアを複数構築できる。ハードウェアを効率的かつ柔軟に利用できることがメリットとされるなか、中村氏は、携帯電話事業者にとっては「繋がりやすさ」「信頼性」「サービスの早期提供」「コスト」という4点でメリットがあると指摘する。
イベント開催時や災害が発生した場合など、もし多くの通信が集中すると、従来の構成ではハードウェアの処理能力を超えると輻輳におちいる。しかしNFVでは、先述したようにハードウェアを柔軟に利用できる。そのため、多くの通信が発生した場合は、利用するハードウェアを追加して処理能力を高めた状態で1つの仮想サーバーを動かし、通信を処理し続ける。結果として“繋がりやすくなる”ということになる。
そして信頼性も、柔軟なハード運用がもたらすメリット。現在でも、システムを二重化することでハードウェアが故障した場合も、通信サービスは提供され続けているが、故障中は二系統あるシステムの1つがダウンして、二重化できていない状態。これもNFVであれば、故障したハードの代わりに別のハードを追加、切り替えて常に二重化を維持できる。
新サービスを提供する際も、従来はハードウェアの計画、調達、工事といったステップを踏んでいくことになるが、仮想化では共用のハードウェアが既に在るため、ソフトウェアをインストールして設定するだけという形になる。
これまでは1つのハードウェアに1つの機能、その分、ハードウェアは高い信頼性を持つ性能ながら高額という形だったが、汎用的なハードウェアになれば、故障時も柔軟に対応してサービスを継続できるため信頼性が多少劣っても、安価なものに切り替えられる。これがコスト面でのメリットだ。
2015年度末までに導入
ドコモでは、欧州電気通信標準化機構(ETSI)でネットワーク仮想化の議論に加わっている。またオープンソースでの仮想化プラットフォーム作りを目指す団体にも参画。そういった標準化活動を進める一方で、複数の機器ベンダーから機材を調達することも重要と中村氏は指摘。既に実証実験を行っており、2015年度末までに導入する考えだ。その際にはNFVを利用したパケット交換機(vEPC)を導入したいのだという。
その後の展開としては、NFV、そしてSDN(Software Defined Networking)の組み合わせによる進化が想定されている。中村氏によれば、今のところ、NFVは1カ所のデータセンター内という形だが、将来的には国内にある複数のデータセンターをSDNで結び、1つの大きなNFVのシステムを構築するというもの。これにより、ある地方で大規模な災害が発生しても、影響を受けていないエリアのデータセンターの処理能力を利用してサービスを提供しつづけられる。
NFVは通信事業者にとって、現在最もホットな分野とのことで、ドコモでは5Gの無線通信技術の開発とあわせNFVにも注力していく。