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ドコモとベンダー6社がネットワーク仮想化技術を実証、2015年に実用化
混雑時にもこれまでの5倍つながりやすく
(2014/10/14 18:43)
NTTドコモは、主要ベンダー6社と協力して実施している、通信混雑時におけるつながりやすさ向上に向けたネットワーク仮想化技術の実証実験に成功したと発表した。この技術は、ドコモのネットワーク上で、2015年にも実用化するとしている。
今回の実証実験に参加したベンダーは、アルカテル・ルーセント、シスコシステムズ、エリクソン、ファーウェイ、NEC、ノキアソリューションズ&ネットワークスの6社。
ネットワーク仮想化とは、ハードウェアを「仮想化レイヤー」というソフトウェアを利用して“別のハードウェアに見せかける”技術。ドコモが提供しているLTEのネットワーク交換機では、ソフトウェアとハードウェアが同じベンダー同士の組み合わせで成り立っていたが、ネットワーク仮想化技術により“別のハードウェアに見せかける”ことで、汎用的なハードウェアで利用を可能にする。故障やトラブルの際には、ソフトウェアの交換や追加のみで、引き続き通信を提供し続けることができるようになる。
実証内容は、こうしたネットワーク仮想化技術を用いて、モバイルネットワークにおけるLTEのパケット交換機(EPC)内で使用するソフトウェアとハードウェアを、異なるベンダーの組み合わせでも動作可能にするというもの。
このほか、ネットワーク仮想化技術では、通信容量の逼迫・故障に関する情報をもとに、自動的にハードの切り替えや追加割り当ての指示を行う仮想化管理システムにより、通信設備の故障時でも通信サービスを継続して提供できたり、新たな通信を迅速に提供できるようになる。災害時や大規模イベント開催など通信混雑時にも、ネットワークのつながりやすさが向上する。
これに関しては、2012年に総務省から受託した研究開発において、実証実験を行っている。大規模災害発生時の通信混雑を想定したシミュレーションによると、これまでの環境では、つながりやすさが5%(20回電話を掛けてようやく1回つながる)だったのに対し、25%(4回電話を掛けると1回つながる)にまで向上したという。
ドコモでは2005年から、ネットワーク仮想化の基礎的な研究に着手した。2012年に総務省から受託した研究開発を行ったのち、2013年には主要ベンダー3社(アルカテル・ルーセント、シスコシステムズ、NEC)と協力して行った実証実験を成功させた。その後、異なるベンダー同士の組み合わせに関する実証実験を6社と行い、今回の発表に至った。
ネットワーク仮想化技術がもたらすさまざまなメリット
14日に都内で開かれた記者説明会では、NTTドコモ執行役員R&D戦略部長の中村寛氏より、ネットワーク仮想化がもたらすさまざまなメリットについて紹介された。それによると、「通信混雑時のつながりやすさ」、「通信サービスの信頼性向上」、「早期提供」、「ネットワーク設備の経済性向上」の4つのメリットがあるとした。
混雑時に自動で通信容量を追加することでつながりやすくするだけではなく、ハードウェアの故障時にも二重化運転への自動復帰を実現する。また、汎用性のあるハードウェアを用いることで迅速にサービスを提供するほか、設備投資にかかるコストを大幅に削減する。このほか汎用性のある装置は、メンテナンスの効率を上げることにも寄与するとした。こうしたメリットを最大化するために、複数ベンダーの装置を組み合わせることで、ネットワーク業界を活性化させるとした。
ITやスタートアップ企業など、プレイヤーを拡大して市場を活性化
NTTドコモは、2014年9月に通信ネットワーク仮想化に向けた基本仕様やアーキテクチャを策定する団体「OPNFV」(Open Platform for NFV)を設立。OPNFVでは、現在40社ほどが加盟しており、今後の仮想化プラットフォームを推進していく方針を示している。
今回の実用化に向けたネットワーク仮想化への取り組みは、パケット通信機(EPC)に関するものだが、これに留まらず将来的には音声交換機、位置情報管理装置、留守番電話蓄積装置などにも適用範囲を広げていくとしている。
中村氏は、「さまざまな製品やサービスが存在している中、専用のソフトとハードが必要になるとメリットが半減してしまう。異なるベンダーの組み合わせを可能にすることで、エコシステムの変革が起き、イノベーティブなシステムを採り入れやすくなる。たとえば、ITやスタートアップ企業などプレイヤーが増えている中、躊躇することなく積極的に、スモールスタートで導入できるようになると期待している。それがテレコム市場全体の活性化にもつながる」と語った。