【WIRELESS JAPAN 2009】
KDDI高橋氏が語る、コンテンツとオープンプラットフォームへの戦略


KDDIの高橋氏

 「WIRELESS JAPAN 2009」のセッション「コンテンツビジネス戦略最前線」で、KDDIの取締役執行役員常務 コンシューマ統括本部長の高橋誠氏は、「KDDIのコンテンツビジネスの状況とオープン化への取り組み」と題した講演を行った。

 まずケータイの加入者数の推移グラフを示しつつ、「加入者数は1億人を超えた。しかし、これで業界がシュリンクするとは思えない。auでは、8割がWINで、パケット定額利用率が72%。他社も定額制の時代に突入した。1億人が常にインターネットに繋がる状態でどうコンテンツビジネスが発展するかが問題となる」との考えを示した。

 また、今年6月の各社の純増数を円グラフで紹介し、「ソフトバンクが純増数ナンバーワンになっているが、データ専用端末以外のEZwebやiモード、Yahoo!ケータイ端末だけで見るとauは5.4万の純増。一方、他社の純増数のほとんどはそれ以外のところ。たとえばイー・モバイルは、ほとんどUSBやカードタイプ。ドコモも8万くらいのほとんどがMVNOなどのデータカードと言われている。ソフトバンクもなぜかわからないが非モバイルインターネット端末が多い。市場が大きく変化していて、いわゆるケータイ以外のMVNOなども含めて展開しないと、数が作っていけない。春からはauの商品力も回復してきているが、2台目市場が重要になってきている。ドコモの純増数にも含まれていると思われるが、そこの競争に追いついていかないといけない」と解説する。

契約者数推移6月の純増数の内訳

 

 さらにauに置けるデータARPUやコンテンツARPUの推移グラフも示し、「データは2287円と順調に推移している。加えて、コンテンツARPUも548円となっている。端末買い換えのタイミングでコンテンツを買ってもらう、という実態があり、そういった部分の売り上げが減っているのでは、と想像されているかもしれないが、ユーザー層を横に広げることで、引き続き成長路線をキープしている。ここはauが大事にしているところ。MNPの時代が終わり、シェアが落ち着いたところで、1人1人のユーザーにうまくアプローチすることが重要になる」と語った。

データARPUコンテンツARPU

 

コンテンツ・プラットフォーム・インフラの種類

 auのプラットフォーム・インフラ戦略については、「今の日本ではモバイルインターネットが中心だが、他国ではモバイルインターネットの歴史が浅いので、さらに上のレイヤーであるスマートフォンと下の領域の安いケータイの二極化が進んでいる。日本でもそうなるのか、あるいはモバイルインターネットだけになるのか、あるいは一足飛びにデータカードとネットブックでクラウドコンピューティングの世界になるのか、この3つの領域がどのように広がっていくか、正直言って読みづらい。キャリアとしてはいろいろなものに手を出すしかない。ここ5年、いろいろなビジネスモデルが登場しているが、その中で市場が決まっていくのだろう」と述べた。さらにau自身の取り組みとしては、「オープンなOSにも積極的に取り組んでいる。別会社ではあるが、UQコミュニケーションズでPC向けのデータ通信インフラも整備していく。さらにワンセグに続いて出てくるメディアとしても、MediaFLOを中心に展開している」と紹介する。

通信システムの展開

 auの今後の通信インフラについては、今後マルチキャリアRev.AやLTE、別会社ではあるもののWiMAXに取り組んでいくことを紹介し、「PC世界の足回りとしては、Rev.Aは若干劣ると考えている。Rev.Aの強化でも取り組んでいくが、WiMAXがここに特化しているので、PCはWiMAXで対応すれば良いと考えている」とコメントした。

 コンテンツの取り組みとしては、高橋氏はLISMOで尾崎豊とタイアップしたキャンペーンやイベントとのタイアップを展開していることなどを例に挙げ、「パケット定額上限まで達する10代、20代のユーザーにも使ってもらうが、もっと上の年齢層の方にも使ってもらわないといけない。EZwebの有料コンテンツを使っているユーザーは、全体の4割程度。もっと使ってもらうために宣伝するのが、われわれの役目。これまでは若年層向けのコンテンツを出せば良かったが、これからはそれぞれのターゲット層にリーチしないといけない。キャンペーンをやるにしても、ほかのメディアを活用することで、ユーザーとの体感距離を縮める」と紹介する。

 続いてauのさまざまなサービスを紹介しつつ、au自身が手掛けたEZナビウォークなどを例に挙げ、「われわれ自身がコンテンツプロバイダーとなるつもりはない。ライフスタイルを先んじて作るためにやった。GPSをケータイの載せてもコンテンツが集まらなかったので、au自身がEZナビウォークをやった。しかし、基本的にはau自身はプラットフォーム構築にこだわっていく」と、au自身のスタンスを説明した。

LISMOでのタイアップ概要イベントとのタイアップ

 

オープン化について
今後の戦略について

 最後に高橋氏は、「オープン化」というキーワードを取り上げる。高橋氏はまずiPhoneについて触れ、「オープン化という言葉の定義は、しゃべっている人ごとにバラバラで定義が不明瞭で、ある人に言わせると、iPhoneもオープンとなるが、ここにいる人(本講演の聴衆)は誰もiPhoneがオープンとは考えないだろう。あれは垂直統合の最たるもの。その垂直統合を、すべてアップルがコントロールしている点が素晴らしい。これはマネしたいと感じる」と持論を述べた。

 Androidについては、「オープンOSによるオープンプラットフォーム。しかし、iPhoneのボリュームまでいけるとは思わない。Androidはなんなのかをまず考えないと行けない。Androidに取り組む上で重視しないといけないのは、開発環境。Android端末を作るとき、メーカーが独自機能をつけることはできるが、それをぐっと我慢し、開発者がアプリやコンテンツを作りやすくすることが重要」と、オープンプラットフォームに対する考え方を示した。

 さらに「オープンな世界でも、コンテンツプロバイダーのビジネスモデルが回る仕組み、具体的には課金の仕組みを、キャリアが作らないといけないと思う。価値のあるコンテンツを有料で提供する仕組みをauは作っていく。また、無秩序にアプリを並べるだけでは、エンドユーザーに良さが伝わらない。トータルでコーディネートした商品を届けることを考え、AndroidやWindows Mobileといったオープンプラットフォームに取り組みたい」とも語る。

 いわゆる垂直統合モデルについては、「ガラパゴスなどと呼ばれているが、これまでの10年間、価値のあるコンテンツを価値を持たせてユーザーに提供できた。このビジネスモデルはよくできている。これがオープンな世界になるとなくなるということはない。われわれはEZwebを中心に展開するが、Androidなどのオープンなプラットフォームもやっていく。これからどのようなことをするかは、順次発表していくので、みなさまには引き続き協力をお願いしたい」と語って講演を締めくくった。



(白根 雅彦)

2009/7/23/ 15:54