【Mobile World Congress Shanghai 2015】
IIJ佐々木氏が語るMVNOの将来
ネットワークの開放が進めば海外MVNOとの協調も
(2015/7/17 06:50)
Mobile World Congress Shanghaiの併催イベントとして、会場内では「MVNO Summit」が開催された。ここでは、アジアを中心に世界各国のMVNOが集い、それぞれの市場動向やビジネスモデルなどを紹介していた。日本からは、シェア2位のIIJが参加。ネットワーク本部 技術企画室の佐々木太志氏が講演を行った。
佐々木氏はまず自社のMVNOビジネスの歴史を紹介。「2008年に日本初の3GベースのMVNOを始めて、LTEベースでも2012年で初めてだった」として、日本でMVNOビジネスを切り開いてきた先駆者であることを語った。一方で、IIJは元々、法人事業を得意としていただけにコンシューマーに対するブランド力が不足していた。これを解決するために先進的なサービスを提供し、ユーザーとの対話も続けて信頼を勝ち取ってきた。結果として、現在では70万契約を獲得するにいたっている。
自社の強みは、「テクノロジー」だという佐々木氏。その一例として、複数枚のSIMカードでデータ量をシェアできる「ファミリーシェアプラン」を挙げ、「我々のあとに、米国のキャリアがシェアプランを始め、その2年後に日本で一番大きなMNOであるドコモも始めた」と自信をのぞかせた。
自社の強みや日本の市場動向を示したあと、佐々木氏はネットワークアーキテクチャーを紹介。ドコモ、KDDIそれぞれのネットワークに相互接続していることを説明した一方で、音声通話とSMSは卸売りで提供を受けている現状を解説した。最大の原因は、加入者の情報を登録する「HLS/HSS」という設備が開放されていないことにある。結果として、「音声の料金プランで、柔軟性を出すのが難しくなっている」という。
また、日本では現在、MVNOが「MSISDN」(加入者を識別する番号)を持つことができない。これについても、「MVNO、MNO、規制当局が話し合う必要がある」として、次のビジネスを進めるための障壁になっていることを語った。こうしたネットワークの開放がより進めば、IIJが自らコントロールできる領域が増え、海外のMVNOとの協調も可能になるという。
たとえば、単に国際ローミングを行うだけでなく、SIMカードの情報を海外で現地事業者のものに書き換え、現地のネットワークに直接接続する。逆に、日本での接続先としてIIJが海外のMVNOユーザーを受け入れる。ネットワークの開放が進めば、こうしたビジネスも、将来的には可能が出てくるという。佐々木氏は、MVNO Summitに集まった各国の関係者に向け「日本だけではなく、海外企業とも協力関係を築いていきたい」と呼びかけ、講演を締めくくった。