【Mobile World Congress 2018】
ソニーモバイルの担当者が語るXperia XZ2/XZ2 Compactの魅力
2018年2月28日 01:20
ソニーモバイルコミュニケーションズは、Mobile World Congress(MWC) 2018の会期初日、同社ブース内でプレスカンファレンスを開催し、スマートフォン「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」の2機種、スマートプロダクト「Xperia Ear Duo」、最新のカメラ技術「超高感度撮影技術」を発表した。発表内容については、別記事を参照していただきたいが、ソニーモバイルから直接、製品の説明を聞くことができたので、インタビューを交えながら、説明しよう。
真っ暗でも撮影できる「超高感度撮影」
今回のプレスカンファレンスではスマートフォン「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」の2機種、スマートプロダクト「Xperia Ear Duo」が市販品として発表されたが、それらの発表後に技術開発として説明され、関係者の注目を集めたのが「超高感度撮影」だ。
超高感度撮影は2つのイメージセンサーによるデュアルレンズカメラで撮影できるもので、2つのセンサーの情報を処理するために、新たに開発した「フュージョンISP」を組み合わせることで、動画でISO12800、静止画でISO51200という超高感度の撮影を可能にする。公開されたデモでは、天井に市販のプラネタリウムを投影し、部屋を真っ暗にした状態で撮影を試みたが、他機種では暗すぎて、なかなか撮影できない状態にもかかわらず、開発中の機材ではプラネタリウムの星座がある程度、見えるほど、撮影ができていた。この超高感度撮影技術はまだ開発中のもので、具体的な製品化は決まっていないが、今後が楽しみな技術のひとつと言えそうだ。
デザインを一新した「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」
ソニーモバイルは今年1月に開催されたCESにおいて、北米市場向けに「Xperia XA2 Ultra」など3機種(日本市場への投入予定なし)を発表したが、今回のMWCではこれまでのXperia XZシリーズからデザインを一新した「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」を発表した。
「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」は両機種ともチップセットにSnaodragon 845を採用するなど、基本的に共通仕様で開発されており、ディスプレイはXperia XZ2が5.7インチ、Xperia XZ2Compactが5.0インチで、いずれもフルHD+(1080×2160ドット)表示が可能なHDR対応のものを搭載する。MotionEyeカメラやハイレゾ対応、4K HDR対応ムービー撮影なども共通仕様だが、新機能であるDynamic Vibration System、Qi対応ワイヤレス充電はXperia XZ2のみが対応する。
また、アクセサリーについては従来のXperiaシリーズ同様、「STYLE COVER TOUCH」「STYLE COVER STAND」などが用意されるほか、ワイヤレスでも有線でも利用できる「WIRED AND WIRELESS HEADSET」、Xperia XZ2で利用可能な「WIRELESS CHARGING DOCK」も販売される。ちなみに、WIRED AND WIRELESS HEADSETは有線のときはUSB Type-Cで接続し、ハイレゾでの再生にも対応する。
今回発表された2機種については、これまでのXperiaシリーズとデザインの方向性を変更している。Xperiaでは2016年まで「OmniBalance」デザイン、2016年からは「Loop Surface」デザインを採用してきたが、今回からは新たに「Ambient Flow」と名付けられたデザインを採用する。これは「テクノロジーが環境や人間に融け込み、共存していくこと」をイメージ、流動的な形状と美しい表面処理の融合を表わしているという。
ボディカラーについてはそれぞれにカラーテーマを持たせており、2016年からのLoop Surfaceデザインでは「Blue story」というカラーマテリアルのテーマを採用していた。これに対し、今回は「Flow of Light」というキーワードを設定している。
Xperia XZ2は縦横比18:9のディスプレイを3Dガラスを使った有機的な形で包み込み、人に寄り添うデザインを表現しているという。カラーテーマについては「Liquidity of Light」という光の流動を表わすものを採用し、実際のボディカラーについては、水面を反射したシルバーをイメージした「Liquid Silver」、闇夜のかすかな光を受けた水面をイメージした「Liquid Black」、深海深くに到達した青みを帯びた深いグリーンを表現した「Deep Green」、やさしい柔らかいピンクを表現した「Ash Pink」をラインアップする。
Xperia XZ2 Compactは幅65mmのボディに、5.0インチの縦横比18:9のフルHD+液晶ディスプレイを搭載したモデルとなっている。カラーコンセプトは光の拡散を意味する「Diffusion Bright」を掲げている。具体的にはリアパネルの裏側から何層もの特殊な処理を加え、奥行き感を出しつつ、表面からはシルキータッチの処理を施すことによって、フロストガラスのような手馴染みのいい仕上がりを目指したという。ボディカラーは「Black」「White Silver」「Moss Green」「Coral Pink」の4色をラインアップする。
両機種で共通した進化点としては、まず、カメラが挙げられる。Xperiaシリーズでは従来から「MotionEye」と呼ばれるカメラモジュールを搭載していたが、今回の2機種では新たに世界初の4K HDRビデオ撮影に対応し、広色域、高精細、高コントラストの映像を撮影できるようにしている。2007年にはじめて裏面照射型CMOSイメージセンサーを採用したカメラを搭載したとき、新たに撮影できた映像を見て、「こんな映像を見逃していたのか」と驚いていたが、今回のカメラでは色に関して、「こんな色を見られていなかったのか」「こんな色を撮影できていなかったのか」と再認識できるほど、インパクトのある映像を撮ることができたという。実際にプロトタイプで撮影した映像を見たところ、夜のイルミネーションなどでも複数の色が混じり合うようなことがなく、鮮明に撮影できることができていた。
4K HDRビデオのフォーマットとしては、HEVC 10bit HLG(Hybrid Log Gamma)と呼ばれるものを採用する。これはソニーが昨年末にセミプロ向けに公開したハンディカムでも採用されているものと共通のフォーマットとなっている。色域も広色域のBT.2020まで対応する。HDRについては明暗差のある場所で撮影したとき、暗いところに合わせれば、明るいところが白く飛んでしまい、明るいところに合わせれば、暗いところが潰れてしまうところを両方の映像を合わせることで、人間の眼で見たときと同じような写真や映像を再現するものとなっている。このしくみを実現しているのは、昨年のMotionEYEカメラで初採用されたメモリー積層型CMOSイメージセンサーを活用しており、撮影時に1コマ1コマの中にメモリーを割り当て、異なった露光設定の映像を撮り、それを1つのパッケージにすることで、最終的な映像を創り出している。これらをリアルタイムに処理することで、今回の4K HDR動画の撮影を実現しているという。
また、従来モデルでも対応していたスーパースローモーションについては、クリエイター系のユーザーから「最終的な成果物はフルHDで出力するので、すべてをフルHDで撮りたい」という要望が聞かれるようになり、従来の0.2秒から6秒でHD対応だったものを0.1秒から3秒でフルHDを撮影できるようにしている。
IFA 2017で発表され、Xperia XZ1にも搭載された3Dクリエイターについては、新たにインカメラでのスキャンにも対応している。ただ、インカメラの撮影はあまり動くことができないため、ガイダンスを表示するなどの工夫も盛り込んでいる。スキャンしたデータについても従来は端末内のみで処理していたのに対し、今回はサーバー側にアップロードして、計算処理をした上で、端末に戻すという仕組みを採用することで、今までよりも高品質なモデリングを可能にしている。また、作成した3DモデリングのデータをFacebookのタイムラインに投稿し、シェアするしくみもスタートしている(海外のみ)。
次に、新しい領域への取り組みとして、これまでの「SEE(見る)」「HEAR(聞く)」に加え、「TOUCH(触れる)」を組み合わせた新しい機能が搭載されている。まず、「SEE」については従来モデルから搭載してきた「X-Reality for mobile」を改良し、「高輝度」「高精細」「高コントラスト」といったHDRコンテンツの特徴をSDRのコンテンツでも再現できるようにしている。「HEAR」については従来に引き続き、ハイレゾ音源に対応するほか、音圧を20%向上させることで、より聞きやすい環境を実現している。S-Forceと呼ばれるサラウンドスピーカーの効果も音圧向上の影響で、より臨場感のある体験が可能になっている。この音圧とクラリティの向上は、内蔵スピーカーのユニットを新しくしたほか、高い音についてはダクトを再設計することによって実現されている。
「TOUCH」については、新機能として搭載され「Dynamic Vibration System」になる。これは着信時などに振動するバイブレーターに、新しい振動素子を導入することで、音に連動する形で振動する機能で、音楽や映像の音響、ゲームのサウンドなどに合わせて振動させることができる。標準はミュートの状態となっているが、ユーザーが音量を調節するときにスライドバーが表示され、振動の強弱を調整できるようしている。スマートフォンに内蔵される振動素子(アクチュエーター)は各メーカーごとにそれぞれの筐体に合わせたものが搭載されているが、今回のXperia XZ2に搭載されたものはより迫力ある振動を体感できるものを選定し、搭載しているという。ちなみに、このDynamic Vibration Systemによる振動は、基本的に映像などを視聴するときに体感することを想定しているため、音楽再生時など、画面がオフの状態のときは機能しない仕様となっている。
Q&A
ソニーモバイルコミュニケーションズ UX商品企画部門 UX商品企画1部 商品企画課 統括課長の染谷洋祐氏、ソニー クリエイティブセンター スタジオ5 NPデザインチーム1 統括課長の飯嶋義宗氏からの説明後、引き続き、質疑応答の時間が設けられた。
――Xperia XZ2はQi対応のワイヤレス充電ができるが、充電時のワット数はいくつになるのか? また、USB PDには対応しているのか?
染谷氏
9Wを前提にしており、弊社のオプション品と組み合わせることで、急速充電を実現できます。Qi対応ワイヤレス充電器はさまざまなメーカーから製品が販売されているため、組み合わせるものによっては充電できる速度には違いがあります。USB PDについては昨年のモデルから対応していて、今回のモデルも対応しています。
――今回、指紋センサーのレイアウトが変更になり、背面に装備されたが、その意図はどこにあるのでしょうか?
染谷氏
従来の側面に備えられた指紋センサーは、基本的に右手で持つことを想定していましたが、やはり、左右どちらの手でも操作しやすいことを考慮し、背面に移動しました。また、デザインを一新する上で、本体の厚みや持ち心地、メタルのフレームを採用していることなどから、最終的に背面に移動する判断をしました。ただ、未来永劫、同じ場所に装備するという意味ではなく、指紋センサーの使われ方やユーザーのみなさんの反響を見ながら、考えていきたいと思います。
――どうしてイヤホンマイク端子をなくしたのでしょうか?
染谷氏
現在、オーディオ業界の中で、ワイヤレスの流れが大きくなってきている現状があります。我々が端末として実現したいデザインなどを鑑みたとき、今回のタイミングで削除するのが適切と判断しました。その代わり、我々としてもワイヤレスのアクセサリーを用意するほか、ワイヤレスでもUSB Type-Cでも接続できるアクセサリーもラインアップすることで、対応しようとしています。当然、ソニーの中にはオーディオアクセサリーを手がける部門がありますので、そこと情報をやり取りしながら、市場導入をできるようにしたいと考えています。ちなみに、すべての商品にはUSB Type-Cからアナログ(3.5mmイヤホンマイク端子)に変換するアダプターを同梱しています。
――まだ国内モデルは発表されていませんが、そのアダプターはワンセグ用アンテナと兼用するようなものになるのでしょうか?
染谷氏
今回はグローバル向けの発表で、国内についてはまだ何もアナウンスしていないので、何もお話しできないのですが、製品はそれぞれの国と地域に合わせて出荷することになります。ただ、現時点では何もお話しできることがない状況です。
――イヤホン端子は物理的に付けることはできたのでしょうか?
染谷氏
はい。物理的に付けることはできましたが、防水性能などのことを考えると、単に付けるだけでなく、その性能を担保しなければならない要素もあり、こういう判断にしました。
――両機種ともSnapdragon 845を搭載していますが、ネットワークの対応を見ると、Xperia XZ2が5CA LTE/CAT.18対応であるのに対し、Xperia XZ2 Compactは4CA LTE/CAT.15対応となっています。これはサイズ的にアンテナが入らなかったということですか?
染谷氏
アンテナの話だけではなく、コンパクトモデルを求めるユーザーはネットワークの接続よりも持ちやすさなどを重視する人が多く、価格帯のことなども考え合わせた上で、判断をしています。
――最近のトレンドから見ると、上下のベゼルがまだ厚いように見えますが、これはわざとやっているのでしょうか?
染谷氏
我々としては、まず、アンテナのパフォーマンスをもっとも高めることを考えているため、これは上下のベゼルの幅に影響が出ます。また、左右のベゼルについても防水仕様をサポートするうえで必要なものがあり、こういったサイズにまとめられています。今回は縦横比18:9のディスプレイを採用し、従来に比べると、少しベゼルが狭くなっていますが、従来モデルと変わらない性能が確保できることをきちんと確認したうえで、設計しています。
――今回のMWC 2018のデモでは、Googleアシスタントを使ったものを見せています。最近、端末上にAIを載せたものも登場していますが、Xperiaとしてはどういった形で取り組んでいくお考えでしょうか?
染谷氏
スマートプロダクトでもいろいろな商品や取り組みを紹介してきましたが、スマートフォンについてはやはりGoogleアシスタントを使いながら、そこで我々の機能やサービスをいかに使ってもらうかが重要になるため、現在のような仕様になっています。一方で、AIという取り組みで考えると、単に音声でコントロールするだけでなく、ユーザーが使う状況に合わせて、機械学習の結果を反映し、カメラをコントロールしたり、スタミナ(電池残量)をコントロールするといったことにも取り組んでいます。
――冒頭で新しい「超高感度撮影」のデュアルカメラの話が出ました。ところが、今回のモデルには搭載されていません。次のモデルの説明を先に聞いてしまったような印象もあり、お客さんは「次のモデルを待てばいいじゃないか」と考えてしまいそうです。なぜ、このタイミングで発表されたのでしょうか?
染谷氏
こちらの意図としては、今回の発表の場を考えたとき、今後、いつ出すという限定的なものではありませんが、二眼をソニーが取り組んだ場合、どんなことができるのかということをきちんとお示ししたかったというのがあります。我々はスマートフォンがメインのフィールドですので、やはり、一番メッセージが届くのはMWCの場だろうという判断です。
――ユーザーには今回発表された機種と、将来的に登場するかもしれない二眼カメラ搭載モデルのどっちを買って欲しいんでしょうか?
染谷氏
たとえば、今回、ご紹介した超高感度撮影のような機能を毎日、必要になる人がどれくらいいらっしゃるのかというと、必ずしもすべてではないでしょう。やはり、一般的なお客さまにとっては、今回発表させていただいた2機種が軸になると思います。
――なぜ、今回はラウンドデザインを採用されたのでしょうか?
飯嶋氏
今回のモデルは「人に寄り添う」「環境に寄り添う」という考えに基づき、有機的なデザインに仕上げています。特に背面については、内部の構造もご覧いただけるとわかるのですが、膨らましているというわけではなく、最小限のレイアウトで、中身を階段状にレイアウトしています。カメラやバッテリー、指紋センサー、ワイヤレス充電のコイルなどがあり、これらを最適な形に配した結果、この形状ができあがっています。
――それは中身が増えたということでしょうか?
飯嶋氏
中身が増えたというより、元々、あったパーツを最小限の形で「包んだ」という表現が適切かと思います。
――厚みはXZ1よりも増えているようですが……。
染谷氏
そうですね。最厚部は厚くなっていますが、左右の端に持っていくところは薄くなっているので、手に持ったときの違和感がないように仕上げています。
飯嶋氏
数字だけで見てしまうと、最薄でも最軽量でもないかもしれませんが、手に持ったときのなじみやすさでは重さも大きさも感じさせないデザインに仕上げています。
――どうもありがとうございました。