【Interop Tokyo 2010】
iコンシェルが情報を繋ぐ、ドコモが描く携帯のビジョン


ドコモの阿佐美氏

 Interop Tokyo 2010の最終日となる11日、その最後の基調講演にNTTドコモの執行役員でコンシューマサービス部長の阿佐美 弘恭氏が登壇した。同氏は、「進化するケータイ」と題して、ドコモの「iコンシェル」サービスなど、行動支援型サービスの現状と今後の展開について言及した。

 阿佐美氏は、携帯電話市場が成熟期を迎え、携帯電話自身がユーザーに何かしてくれるようなコンセプトが必要だとした。携帯電話に日常の中での付加価値向上が求められ、リアル世界との連携からおサイフケータイが誕生したと語った。ここ数年はさらに行動を支援するような、ユーザーの日々の生活をどれだけサポートできるかを考えてきたという。

 iコンシェルのユーザー数は2010年3月末現在で約420万人。阿佐美氏は直近で450万人程度になるとした。同氏はドコモの全契約者の1割程度が使っていると説明し、ユーザー数が1000万人に達すれば、メディアのようなものになると語った。ドコモでは、2010年度のiコンシェルのユーザー獲得目標を790万人としている。

 講演ではiコンシェルのサービス内容が説明され、インフォメーションやiスケジュール、トルカ、オートGPSといった機能が紹介された。こうした機能を利用して、交通機関の情報やイベント情報から、警報や台風地震などの災害情報などまで幅広く提供されている。iコンシェルはドコモのみならず、コンテンツプロバイダーなどもさまざまな情報を提供しており、現在情報提供する企業は500社を超えているという。

 また、昨年から提供が開始されたオートGPSについても説明し、テレビで観たレストランをチェックしておくと、付近を通りがかった際に通知される、最終電車の時刻を案内する、といったような利用シーンを具体的に紹介した。阿佐美氏によると、最終電車の通知機能は男性を中心に、非常に好評とのこと。同氏はタクシー代の節約につながると話していた。



ターゲットに届けることで広告は情報に変わる

 講演の前半は、iコンシェルやオートGPSによってユーザーにもたらされるメリットが紹介された。後半は企業向けに話をシフトし、iコンシェルの企業側コンセプトについて説明があった。

 阿佐美氏は、「iコンシェルはエンドユーザーにはエージェントとして、情報提供社にはターゲティングの情報配信機能として提供している」と述べた。ドコモはそのプラットフォーマーとして、エンドユーザーの要望と企業が提供する情報をマッチングし、「誰に情報を提供するべきか」を判断しているという。

 講演ではタワーレコードや航空会社(ANA/JAL)、シュフモ、ニッセン、凸版印刷、日光市役所、アオキーズ・ピザ、東山動物園などのiコンシェル導入事例が紹介された。阿佐美氏は、企業の導入事例を紹介する中で、iコンシェルが企業のCRM(Customer Relationship Management)として興味が持たれていると語った。また、情報とユーザーをマッチングすることについて、「企業は欲しい人に広告を送りたい。欲しい人に広告を送ることで、ユーザーにとって広告は情報に変わる」などと述べた。

 講演の最後、阿佐美氏はiコンシェルの今後の展開について言及した。

 iコンシェルで情報を提供する企業は、自社でサーバーを用意・運用する必要があり、一定の技術を持ってなければ提供できない。こうしたハードルを下げ、さらに情報提供企業を拡大するため、ドコモではホスティングサービスを提供する方針。阿佐美氏は「いろいろな携帯電話が登場しているが、結局、それが生活に役立つか、顧客とユーザーの生活する地域をどれだけ結びつけられるかがポイントになるのではないか」として、講演を締めくくった。


 



(津田 啓夢)

2010/6/11/ 16:52