Global Mobile Internet Conference 2014

DeNA社長 守安氏が北京で講演

グローバルで通用するモバイルゲーム展開のノウハウ

DeNA代表取締役社長兼CEO 守安功氏

 北京で開催されている「Global Mobile Internet Conference(GMIC) 2014」で、2日目の5月6日、DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏が「How to make your game global」と題して講演。DeNAが日本やグローバル向けにリリースしたゲームアプリから得られた知見をもとに、中国からアジアや欧米へ進出を考えているデベロッパーにアドバイスを送った。

5つのリージョンで異なる特性

 守安氏は2006年、DeNAが急成長を遂げる要因となったフィーチャーフォン向けソーシャルコンテンツ「モバゲータウン」を立ち上げた1人。その後、スマートフォンの流行に合わせスマートフォン向けゲームも提供を開始し、今の「Mobage」となったのは知られているところだろう。

 2010年には米国のゲーム開発会社ngmocoを買収し、海外進出。中国市場にも展開して、グローバル市場において3~4年の経験を積み上げてきた。日本の一般ユーザーの視点からはDeNAの海外での活動はあまり目立たないかもしれないが、中国、韓国、シンガポール、ベトナム、アメリカ、オランダなど、すでに10カ国に拠点を構えている。

モバイルゲーム市場の年平均成長率は15%。守安氏はさらに伸びのペースは大きくなると予想する

 守安氏はまず、現在の各国におけるモバイルゲーム市場の状況について解説した。世界全体のゲーム市場の規模は、2013年はモバイルゲームが170億ドルであり、2016年には270億ドルものマーケットになるというリサーチ会社のデータを示した。年平均成長率は15%で、1桁成長と見込まれるWebやPC、コンシューマー機を圧倒している。ただ、「今の中国の成長をみても、この予測よりもうちょっと拡大ペースが速いのではないか」と同氏は考えている。

 人気のあるゲームは国によってさまざまだが、モバイルゲームプラットフォームは、端末のOS、利用できるアプリ配信サービス、課金手段に関してはほとんどが共通。その中で、中国のみGoogle Play Storeが存在せず、代わりに中国独自の配信プラットフォームを利用する特殊な状況になっている。

各国におけるモバイルゲームプラットフォームの状況。中国の違いが際立っている
人気ゲームは国によって異なる

 DeNAでは、こういったモバイルゲームに関わる市場の特性ごとに、北米・ヨーロッパ、中国、日本、韓国、その他という5つのリージョンに分けて考えている。これら5つのリージョンに応じて「やり方を変えないと成功は難しい」という。成功させるためには、その国の状況、特性を体感としてよく知っている開発・運営チームやパートナーを見つけることが重要であり、アプリの場合は初回のリリースだけでなく、その後のアップデートや運用といったものも必要になるため、先を見据えたチーム・パートナーとの円滑なコミュニケーションを図ることも大切だと強調した。

1つの国で成功したゲームでもローカライズは不可欠

米国での代表的なアプリ展開の例。一番上の「Rage of Bahamut」以外は米国向けに開発した

 北米・ヨーロッパの特徴は、コンシューマーゲーム機の市場が大きく、スマートフォンのゲームを作るデベロッパーがまだ少ないこと。したがって、そこにアジアのデベロッパーにとっては大きなチャンスがあるだろうと話す。DeNAは、日本でヒットしたカードバトルゲーム「Rage of Bahamut」を米国向けにほぼそのままリリースして大きな成功を得たものの、その後同様に変更をほとんど加えることなく展開したカードバトルゲームはことごとく失敗。その反省から内容を米国向けとしてリリースした「Blood Brothers RPG」や「MARVEL War of Heroes」といったタイトルは、月間数百万ドルを稼ぎ出すヒット作になった。

 一方、中国市場はPC用オンラインゲームが流行していること、Androidのアプリストアが独自であること、ネットワーク速度が遅いことなど、他国と異なっているところが多い。そのため、製品の作り方、運営の仕方を中国の事情に合わせてローカライズしない限り、他国が中国市場で成功するのは難しいとした。DeNAも、日本や米国でヒットしたゲームを中国に投入したが結果は芳しくなかったという。

中国におけるアプリ展開の例。他国の人気ゲームをほぼそのまま投入したものは失敗に終わった

 失敗したゲームについては、開発を中国以外で行っていたため、中国スタッフの意見が反映されづらい状況だったのが原因の1つと守安氏は分析。アプリの開発と運営をすべて中国で行ったNBAを題材にしたスポーツゲームは成功させることができたという。このことから、他国で配信しているゲームを中国市場で提供する場合には、「プロダクトの改変、オペレーションのやり方を含め、中国のスタイルに合わせないとならない」と断言した。

 日本も、同氏によればゲーム市場の文化としては独自の発展を遂げているという。コンシューマーゲーム機やモバイルゲームの歴史が比較的長く、ゲームに強いデベロッパーも数多いことから、海外のデベロッパーが参入するのは難しいところもあるようだ。DeNAも米国や中国の市場でトップを獲得したゲームを日本に投入したが、全く成果は出なかったとのこと。

他国のヒット作を日本で展開した例。いずれも成功とは言えない結果に

 韓国もPC用オンラインゲームが強く、カカオトークとの連携が広がっていることなどから、海外から参入して成功するのは容易ではないとしている。国の人口自体も多くないため、「今後韓国市場が大きく成長するかというと、そうではないと見ている」と同氏は述べた。

 以上から同氏は、1つの国で成功したアプリを他国でリリースする際には、その地域で人気のあるデベロッパーに手を貸してもらい、少なくともグラフィックのテイストを現地ユーザーに親和性の高い見た目に変えること、地域の事情に詳しい開発・運営チームによって、単なる翻訳に止まらないゲーム内容の変更や運用全体を含めたローカライズを行っていくことが成功には欠かせないと訴えた。

日沼諭史