【CES 2020】

内臓脂肪や血糖値、気になる数値を測定できるCESで見つけたヘルスケア系デバイス

 ヘルスケア関連のスマートデバイスとしては、Apple WatchやWearOSの汎用のスマートウォッチが心拍数はもちろん、SpO2や心電図の計測にも対応するようになるなど、どんどん高機能化しているので、CESに展示されるようなスタートアップによるデバイスとなると、それ以外の生体情報を計測しようというものが増えている。

 大手が手を出さない生体情報となると、ややうさんくさいデバイスも多いが、ここではそうしたやや怪しいデバイスも含め、CESで見つけたユニークなヘルスケア系のデバイスを紹介する。

光学センサーで腹の体脂肪をピンポイントに解析するデバイス

bello

 Olive Healthcareの「bello」は体脂肪を測定するデバイスだ。体組成計のように電気を流して全身の体脂肪率を推定するのではなく、belloは近赤外線を肌に照射して脂肪を測定する。しかも腹部に特化していて、腹の脂肪の密度を測定することで、アプリ上では皮下脂肪と内臓脂肪の量も推定し、リスクレベルを算出する。

 デバイスは手のひらから少し余るかなというサイズ感で、底面を腹に直接押しつけて約3秒間で測定する。アプリでは測定結果をスコアにして見られるほか、測定結果に応じて推奨される運動や食事に関する動画が提供される。

 韓国のスタートアップによる製品で、現在Indiegogoでクラウドファンディングキャンペーン中。通常価格は379ドルの予定だが、クラウドファンディングの価格は189ドルから。6月出荷予定で、韓国とアメリカは送料がかからない。

底面部にセンサーを搭載している。これをおなかに押し当てる。会場で試したが、おなかを出すのが若干恥ずかしい
筆者の総合スコア。筆者は筋肉もないが脂肪も少ないガリガリ体型なのでわりとスコアは良かった

体脂肪率を測定してくれるApple Watchバンド

AURA Strap

 AURA Devicesの「AURA Strap」はApple Watch用の付け替えバンドで、体脂肪率を測定できる。といっても、着用中に自動で計測するなどではなく、測定時にはアプリを立ち上げ、バンドにある電極にApple Watchを装着していない方の手を当てるというポーズを取る必要がある。

 アプリで測定結果を表示するので、当然Apple Watchと通信をしているのだが、データの送信には超音波を使っているという。電源はボタン電池(CR2025)で、1つの電池で約6カ月稼働させられる。現在予約受付中で、価格は99ドル、4月出荷予定。

バンドの外側にも電極があり、両腕を電極に触れさせて体脂肪率を測定する
Apple Watch上で体脂肪率や筋肉量を確認できる

脈波のエコーから血糖値を推定する京セラの血糖値センサー

京セラの「糖質ダイエットモニタ」

 血糖値の計測は、筆者のような高血糖気味の人間にとって重要なテーマだ。現在のところ、簡易測定でもごく少量の血を採取しないといけないので、自分で測るとなるとなかなか大変なのだが、採血をしないですむ、いわゆる非侵襲型の血糖値測定についても、さまざまな研究も進められている。

 京セラは脈波から血糖値を推定するセンサーを展示している。食後などに血糖値が上がったりして血液や血管の状態が変わると、手先の末梢部の毛細血管への血液の流れ込みやすさも変化する。手首で脈波を精密に測定すると、手先の毛細血管が抵抗となり、脈がそこで跳ね返ってくるエコーが計測できるが、このエコーの跳ね返り方が血糖値など血液の状態によって変わってくるはずなので、このエコーから血糖値を推定しよう、というアイディアだ。

 通常の心拍センサーではこれは計測できず、京セラのセンサーではスマートフォン用のジャイロセンサを元に、脈の振動をダイレクトに計測できる専用機器を作っている。動脈の脈動だけの測定できるよう、測定には静止している必要があり、またそれなりの熟練も必要となる。

 2019年のCEATECでも展示されている。具体的な商品化については決まっていないが、使っているセンサーがスマートフォン用のジャイロセンサーということもあり、それほど高価なデバイスにはならない見込みだ。なおこちらのデバイス、医療機器にする予定はないことから、血糖値としての数字は出さず、単位不明の参考値を表示する「糖質ダイエットモニタ」と銘打って開発している。

測定結果の表示。このあたりは開発中の仮のものだが、こんな感じでやんわりと単位なしに表示する
実際の脈波のグラフ。もっとも振幅の大きいピークから下がる途中にあるピークがエコーの位置

血糖値推測機能付きのスマートリストバンド「Glutrac」

Glutrac

 Add Careの「Glutrac」も血糖値を測定するデバイスで、こちらはスマートウォッチの形状をしている。血糖値だけでなく、血圧や血中酸素レベル、心電図、呼吸なども測定可能で、さまざまなセンサーを搭載して複数のデータを複合的に解析することで血糖値を算出している。

 測定時には、本体にある電極に装着していない方の手の指を押し当てる必要があるため、常時自動測定といった運用はできない。アプリでは血糖値の数値が[mmol/L](血糖値の単位に用いられる濃度表記で、日本では[mg/dL]などが多い)で表示されていた。また、1回の測定には1分程度の時間がかかっていた。

 高血糖な人間からすると、正確な数字は病院で測るときだけで問題なく、普段は「前日の食後より極端に上がってる」とか「ここ数週間の食後は以前よりも下がっている」くらいの大雑把な傾向がわかる程度の精度でも、日々の食生活改善に役立てることができる。それよりも毎日何回も測定できることに意義があるので、こうした非侵襲型の血糖値測定デバイスが日本でも利用できるようになることに期待したい。

Glutracの測定時はもう片方の手の指も使う。測定にはけっこう時間がかかる
血糖値は具体的な数値で表示されていた。過去のデータと見比べられる

頭皮の状態を赤裸々に解析する診断デバイス

becon

 「becon」はサムスン電子の社内インキュベーションプログラムのC-Labが開発している頭皮診断デバイスだ。頭皮の接写画像や温度、湿度などから頭皮の状態を推測し、各状態にスコアを付けた上で最適なヘアケア製品のレコメンドまで行なってくれる。

 販売店のシャンプー売り場などに最適な製品とも言えそうだが、こちらはコンシューマー向けのホームケア製品として開発されている。

測定結果。頭皮の写真と各種数値が表示される。生え際が気になるお年頃の筆者だが、密度は申し分ないとのこと。良かった……
オススメのシャンプー。1番目は韓国のシャンプーだ(日本のAmazonでもマケプレ商品として売っている)

目の動きも測定して着用者の状態を知るメガネ

Serenity Eyewear。見た目は普通のメガネ

 ellcie healtyyの「Serenity Eyewear」は、アイトラッキングを含む様々なセンサを搭載したメガネだ。JINSの「MEME」と似たコンセプトのデバイスで、ディスプレイは搭載せず、着用者のセンシングに特化している。ただしスピーカーと着用中にも見えるLEDは搭載していて、居眠りを検知したときに警告するといった機能にも対応している。

 センサーとしては赤外線の眼球センサー、9軸センサー(加速度とジャイロ、地磁気)、気圧/温度/湿度センサー、ECG(心電図)センサー、マイクを搭載。居眠りを検出したり、着用者のストレスレベルをモニタリングしたり、アクティビティトラッカーとしての機能や転倒検知センサーとしての機能もある。

 現在Indiegogoでクラウドファンディングキャンペーンを実施中で、通常販売価格337ドルのところ、キャンペーン中は198ドルからとなっている。フランスのスタートアップによる製品だが、展示されていたアプリは日本語化もされていた。

目の動きをリアルタイムでアプリでトラッキングができる
眼球センサーはレンズフレーム部に複数搭載されている

トントンしてくれる心を落ち着けてくれるリストバンド

Apollo。これが内側で、デバイスの外側にバンドが来る珍しいデザイン

 「Apollo」はリストバンド型デバイスだが、トラッキングやセンシングのデバイスではなく、一定リズムの小さな振動で着用者を眠りに誘ったり、リラックスさせたり、集中力を高めたりすることを目的としたデバイスとなっている。

 動作モードは「Energy/Wakeup」「Clear/Focused」「Meditation/Mindfulness」「Relax/Unwind」「Sleep/Renew」「Social/Open」「Reguild/Recover」の7つで、アプリ上で切り替える。

 現在予約受付中のデバイスで、通常販売価格360ドルのところ、予約向けの先行価格は199ドルとなっている。1月31日より出荷予定だが、日本での展開予定はいまのところないようで、日本への発送も行っていない。

 同様に振動を発するリストデバイスとしては、睡眠に特化した「DreamOn」というデバイスも展示されていた。そちらの価格は149ドルで、日本への出荷も行っている。

Apolloのアプリ。再生中のモードも表示され、なんか音楽再生アプリっぽさがある
こちらは似た機能を持ったDreamOn。どちらも機能がシンプルなのでデザインもシンプルだ