【CES 2019】
米中貿易戦争下での「CES」、中国スマホメーカーへの影響を探る
2019年1月10日 21:13
CESに出展する企業の国や地域はさまざまだが、ここ数年は、年を追うごとに中国メーカーの存在感が大きくなっていた。
スマートフォン関連メーカーでは、日本でもおなじみのファーウェイやZTEがプレスカンファレンスを開催し、米国に導入するスマートフォンを発表してきたほか、TCLやハイセンス、レノボなども毎年、大規模なブースを出展している。
一方で、トランプ政権下で米中間の関係は急速に冷え込み、「米中貿易戦争」とも呼ばれるようになった。中でも5Gをめぐる覇権争いが激化しており、ファーウェイやZTEはその影響を大きく受けている。既報の通り、2018年には対イラン制裁違反を受け、ZTEが米国企業との取引を停止され、経営が傾く事態になった。12月にはファーウェイのCFOに対イラン制裁違反の容疑がかけられ、カナダで逮捕された。現在は裁判が進行中で、予断を許さない状況だ。
ただ、CESの会場に限っては、そんな不安定な政情を感じさせないほど中国メーカーの存在感が大きく、渦中のファーウェイもMate 20シリーズやhonorシリーズのスマートフォンを大々的にアピールしていた。一連のニュースで知名度が上がったこともあってか、ブースに足を運ぶ来場者も非常に多く、控えめにいっても大盛況といえる状態だった。
ファーウェイは端末部門がスマートフォンや周辺機器を出展していただけでなく、Kirinシリーズのチップセットを手掛ける傘下のハイシリコンもブースを構え、AI関連技術をアピール。チップセットやモデムの開発を手掛ける同社ブースに5Gの文字が踊っていない点にはやや違和感を覚えたが、米国に向け、同社の技術をアピールしていた。
例年どおりの規模でブースを構えたファーウェイだが、中国から幹部が渡米するのは控えていたようだ。2017年、18年はデバイス部門のリチャード・ユーCEOが基調講演を行ったが、今年は、その姿を見かけることはなかった。また、例年のように幹部インタビューを行う機会もなく、粛々と展示を行っている印象を受けた。うがち過ぎかもしれないが、この点では、米中貿易戦争の影響を受けていたといえるだろう。
2017年のCESでドコモと共同開発した「M」を大々的にアピールしていたZTEは、ブースの出展も取りやめている。同社のローエンドモデルやミドルレンジモデルは北米でシェアが高く、過去には本誌にも掲載されているように、米国市場向けに特化した発表会も開かれていたほどだ。その状況が一転、2019年はブースの出展が途絶えた。出展社一覧に名前はあったが、端末納入先との商談を行っていたようだ。
基地局やコアネットワークのインフラベンダーでもある2社は、貿易戦争のあおりを受けやすい側面はあるが、その他の中国メーカーは“平常運転”。例年と大きな違いはないように感じられた。
まず、TCLは、AlcatelとBlackBerryの両ブランドでスマートフォンを展示。来場者の注目度はBlackBerryに集まっていた様子だったが、これは昨年9月に独ベルリンで開催されたIFAと同じだ。同社はCESにも、「BlackBerry KEY2」および、その廉価版の「BlackBerry KEY2 LE」を展示していた。
ハイセンスも同様で、背面に電子ペーパーを搭載した「A6」を出展。こちらもIFAに出展していたモデルで、背面の電子ペーパーに写真を固定して貼り付けておいたり、電子書籍を読んだりすることができる。
レノボは、既報の通り、グーグルと協業した「Smart Clock」や、Amazonと協業した「Smart Tab」を発表している。同社は例年、展示を一般公開しておらず、報道陣や取引先などの招待客のみに限定公開している。この点は例年通り。同社はモトローラブランドのスマートフォンも展開しているが、こちらに関しては、「moto z3」や5G対応の「moto mods」を展示していた。
一口に中国メーカーといっても、その立ち位置はさまざま。それによって、影響の度合いも異なっていた格好だ。一方で、あくまでCESのスマートフォンメーカーの出展状況に限った話ではあるが、トータルで見れば、中国企業の存在感は依然として強かったといえる。