【CES 2016】

発売間近の「NuAns NEO」、海外展開やContinuumの対応状況は?

トリニティ星川氏に聞く

 iPhoneを中心としたアクセサリーメーカーのトリニティは、CES 2016でブースを出展。前夜祭とも言えるイベント「CES Unveiled」でも、発表を行っている。そこで展示していたのが、Windows 10 Mobile搭載スマートフォンの「NuAns NEO」だ。日本市場向けの端末を、海外の展示会で披露する狙いはどこにあるのか。代表取締役社長の星川哲視氏に、話を聞いた。

CESやCES Unveiledに出展されたトリニティの「NuAns NEO」

――CESに出展した意味を教えてください。

星川氏
 僕たちはSimplismのときも、NuAnsも、日本だけで販売しようとは思っていませんでした。我々がいいと思って作っていて、日本でも「これ、いいでしょ」という形で広げてきた。この「これ、いいでしょ」を、アメリカ、ヨーロッパ、中東、アジアを問わずに言いたいのです。

 CESはこれで6回目の出展です。その前は「Mac World」というイベントに出ていました。うちは創業10年目ですが、8年前からすでに海外展開はしたいと考えていました。

トリニティの代表取締役社長、星川氏

 その延長線上で、当然NuAns NEOもできる限り海外で販売したい。CESはちょうど1年前から出展する場所をリザーブしなければいけないのですが、すでに出展することは決まっていたのですが、あわせてMobile World CongressにもNuAns NEOがある程度完成したときに申し込んでいます。

 CESは家電のショーですが、MWCはワイヤレスの展示会です。この2つで反応を見たい。というのも、NuAns NEOの場合、海外で販売しようとなると、専用のバンド設計が必要になります。急に「Amazonで販売します!」と言うことができないので、需要を見つつになりますね。

 CES Unveiledでは、「Indiegogo」の人に、「ある程度コミットを集めてからやった方がいい」と言われています。もし北米で販売しようとすると、最低5000台は作らなければいけない。その半分ぐらいの目途がついた上で展開しないと厳しいですからね。もしかしたらアメリカでは、クラウドファンディングを使って、買う人が集まったら販売するという形にするのがいいのかもしれません。

――なるほど。対応バンドを変えるにしても、すでに端末もありますからね。

星川氏
 キャリアさんの採用には、相当高いハードルがあります。どうにか販売をしようと思っても、米国では日本と同様に、SIMフリーの市場が非常に小さい。販路もキャリアショップや量販店、オンラインがほとんどです。それでも日本ならある程度はできますが、こちらだとBestBuy(アメリカの家電量販チェーン)で販売するというだけでハードルが高くなります。

 ですから、最初はダイレクトのマーケティングをして、コミットをもらってから出すというのが近道になるような気がしています。まだ分からないですけどね(笑)。

技適も取得し、最新ファームウェアではマークも表示される。国内のイベントでも、デモを行う予定だという

――実際、海外で出すとなると、バンド設計はどの程度変えなければいけないのでしょうか。今の対応バンドでも、Band 3があるため、欧州ならそこそこ使えてしまいそうですが。

星川氏
 ノキアなどもそうですが、(グローバルに販売するメーカーは)大体北米版、欧州版、アジア版というように、3つぐらいに分けることが多いですよね。使える、使えないで言えば、とりあえずは使えるのかもしれませんが、キャリアを選ぶことができなかったり、圏外が多くなってしまったりということはあると致命的です。

 とりあえず売りますならいいのですが、快適に使ってもらうには、やはり専用のバンド設計があった方がいい。実際、時間や販売の目途がついていれば、NuAns NEOにはもう少し対応バンドを盛り込めました。ただ、そうすると時間の問題があり、現地でのフィールドテストも必要になります。そういういろいろな問題がって、今回は、日本においてちゃんと使える設計にしました。

――出展してみて、来場者の反応はいかがでしょう。

星川氏
 1つあるのが、我々が出展しているのが「iProducts」というエリアで、オペレーターなどのモバイル関係者がほとんどいないところです。ですので、「ああ、すごいね」という反応がほとんどです。ビジネスとしてというより、「いいね、すごいね、グッドラック!」という感じがほとんどですね(笑)。その意味で、本番はMWCからだと思っています。

――メディアの反響もありましたか?

星川氏
 こちらのEngadgetやGizmodeなどにUnveiledの記事が載り、それを見た人が来てくれたり、今日はWindows Central(Windows情報を専門に扱うメディア)の方がビデオを撮りにきてくれたりと、メディアの反響はすごくいいですね。基本的には、「おもしろい」と言ってもらえています。やはりいろいろと見比べた上で、質感が違うねということで評価してもらえています。

――日本も間もなく発売です。予約などの状況はいかがでしょうか。

星川氏
 お陰さまで、初回出荷予定ぶんは、すべて行き先が決まりました。中国が旧正月に入ってしまうのでどうしようもないのですが、その次の出荷は2月末になります。今は、そこでの出荷分を含めて、予約が入ってきています。端末の販売をしたのが初めてなので、これが多いのか、少ないのかはよく分かりませんが……。

――初回出荷分は完売ということですが、伊勢丹やロフトなどに行けば手に入りますよね?

星川氏
 お店の在庫分、法人の発注分は別で、伊勢丹やロフトなどには在庫として入りますから、そこで買うことはできます。ただ、テスト的な形で考えているので、何十台もあるわけではありません。早く欲しいけど、予約にあぶれてしまった人は、そちらで買われてもいいと思います。

 あとはU-mobileの店舗とオンラインですね。SIMが元々ない人や、2台目として買う人にとっては、U-mobileの使い放題で2980円というプランも悪くないのではないでしょうか。実はうちの母親もNuAns NEOを使ってくれることになって。あ、勧めたわけじゃありませんよ(笑)。今iPhoneを使っているのですが、回線ごとU-mobileにしてしまおうと思っています。

 我々のオンラインストアで予約してくれた方に、U-mobileの初期費用(契約事務手数料)が無料になるコードをプレゼントをするということもやります。

――U-mobileではカバーをプレゼントというのがあったので、相互に連携しているということですね。MVNOはほかにもまだありますが、今後、広げていくというお考えでしょうか。

星川氏
 今はなかなか言いづらいですね。U-mobileには、エクスクルーシブで買っていただいているので。ただ、当然その期間が終わったら、何か考えていきたいですね。2016年はMVNOがもっと広がり、大手キャリアから出ている端末を買わなくてもいいんだと気づく人が増えると思います。今年は、その節目になるのではないでしょうか。

会場では、Continuumのデモを行っていた。キーボード入力などにやや遅延はあるが、文字の入力はある程度スムーズに行える

――暫定と言われていたContinuumに関しては、いかがでしょう。

星川氏
 我々の中では、「Lumia 950」と比較しても、(レスポンスなどは)変わらないぐらいという評価です。操作時に若干遅延もありますが、今の段階でのパフォーマンスとしてはこのくらいです。これがLumiaがすごい、NuAns NEOがそうでもないというのであれば改善の余地がありますが、レスポンスとしてはマイクロソフトが想定しているところは出ています。

 ただし、オフィシャルのリクワイアメントに入っていないと使えないかというと、そうではありません。マクロソフトがオフィシャルにサポートしていない状態でも、我々としてContinuumをオンにした上で出荷することはできます。自分としては、9分9厘大丈夫だと思っていますが、たとえばマイクロソフトで「MWCに合わせて提供を開始しよう」などとなってしまうと、発売が遅れてしまいます。

――つまり、オフィシャルにOKが出る、出ないに関わらず、最初から使えるということですね。

星川氏
 はい。我々にも、「Continuumはどうなっているのか」という問い合わせが多く入っています。予約された方の中にも、もしサポートされなかったらどうしようという人もいます。これでパフォーマンスが出せなかったら仕方がないのですが、今あるものはそうではありません。

 9分9厘行くと思いますが、タイミングもあります。また、Snapdragon 617は、有線接続でのContinuumが使えないため、言い方をどうするのかということもあります。ですから、もし承認が遅れても、それまでの間は我々の端末の機能として提供することを考えています。

――ありがとうございました。

石野 純也