iPhone向けカード決済ソリューション「ペイメント・マイスター」


iPhone用クレジットカード決済ソリューション「ペイメント・マイスター」

 株式会社フライトシステムコンサルティングは、日本初となるiPhoneを活用した法人向けクレジットカード決済ソリューション「ペイメント・マイスター」の販売を、9月30日より開始した。

 最近では宅配業務や訪問販売など、外出先での代金回収を必要とする業務において、クレジットカードでの決済を要望する声は多い。しかし、これまでセキュアなクレジットカード決済を実現するためには、モバイル決済専用の端末が必要だった。ペイメント・マイスターは、電話、メール、その他多様なアプリケーションを実行可能なiPhoneを、そのままクレジットカード決済の端末として利用できるソリューションだ。

ハード、ソフト、決済サービスによるソリューション

 ペイメント・マイスターは、ハードウェア(クレジットカードリーダー付き専用ケース)、iPhone上のソフトウェア、およびクレジットカードの決済サービスによって構成されるソリューション。このうち、ソフトウェアはフライトシステムコンサルティングが独自に開発した、日本国内専用クレジットカード決済アプリケーション「ペイメント・マイスター(PaymentMeister)」である。クレジットカードリーダー付き専用ケースは、極薄のバッテリー付きiPhone用ケース「Juice Pack」で知られる米国Mophie社が製造・販売を行っている「Marketplace」を、フライトシステムコンサルティングがOEM供給を受ける形となっている。また、クレジットカード決済サービスは、三菱UFJニコス株式会社の「ECカード決済サービス」に接続する仕組みとなっている。もちろん、ペイメント・マイスターによる決済情報を、企業の情報システムと連携させるため、ECカード決済サービスは、加盟店単位でさまざまなカスタマイズが可能である。

 ペイメント・マイスターの利用の流れは以下の通り。

 まず、ペイメント・マイスターをiPhoneにダウンロードし、クレジットカードリーダーのついた専用ケースをiPhoneに装着する。その後、金額など必要事項を入力し、クレジットカードリーダーからクレジットカードの情報を読み取んで決済を行う。その後、取引結果がiPhoneの画面上に表示されるため、確認して終了する。ただし、ペイメント・マイスターによる決済を利用するためには、事前に三菱UFJニコスとの加盟店契約が必要となる。

ペイメント・マイスター利用の流れ
株式会社フライトシステムコンサルティング 代表取締役社長 片山 圭一朗氏

 10月12日に都内にて行われたペイメント・マイスターの記者説明会において、フライトシステムコンサルティング 代表取締役社長 片山 圭一朗氏は、ペイメント・マイスターの特長について次のように語っている。「既存のモバイル決済の専用端末は、導入費用が高く、重量もあった。しかし、ペイメント・マイスターは、電話やメールに使っているiPhoneをそのままクレジットカード決済端末として利用できる」(片山氏)。

キーマネジメント方式による高いセキュリティを実現

 クレジットカード決済において、非常に重要となるのがセキュリティ面だ。ペイメント・マイスターでは、キーマネジメント方式「DUKPT」による暗号化技術によってクレジットカードの決済を行う。クレジットカードに関連する個人情報はiPhone上に保存せず、データはすべて決済センター上で復号化するため、非常に高いセキュリティを実現しているという。ちなみにDUKPTは、国際的なクレジットカード業界におけるクレジットカード読み取り端末装置に関する規格PCI PTS(Payment Card Industry PIN Transaction Security)において、推奨されている暗号化方式である。また、米国におけるデビットカードに使われる暗号化方式でもある。

 さらに、iPhone紛失時は、決済センターからデジタル証明書を無効化する、あるいはリモートでiPhone内のデータを消去するといったセキュリティに配慮したさまざまな機能も提供されている。

 また、決済時の操作についても、ペイメント・マイスターにはこだわりがあるという。モバイル端末におけるクレジットカード決済では、決済を実行する場所によって電波状態なが悪い場合もある。現在よく利用されている専用のモバイル端末では、客から一時的にクレジットカードを預かり、電波状態の良い場所で決済の操作を実行するという場面が多く見られるという。しかし、ペイメント・マイスターの場合、電波の状態に左右されることなくカード情報を読み込み、金額などを客に確認してもらった後に、ECカード決済サービスに接続する。つまり、電波状態が悪い場所での決済は、クレジットカード情報を読み込んだ後、そのクレジットカードを客に返して、改めて電波状態の良い場所を探して決済するのだ。この方式について片山氏は、「お客様の見えない場所にカードを持って移動するのは、セキュリティの面では非常に恐いこと。クレジットカードを、お客様から離すような決済は好ましくありません」と語る。

すでに大手生命保険会社が導入を決定

AIGエジソン生命保険株式会社 常務取締役 二見 通氏

 ペイメント・マイスターは、AIGエジソン生命保険が営業担当者向けに導入することが決定している。ペーパーレス化、およびキャッシュレス化を推進している同社では、保険収納におけるスムーズな対応を実現し、キャッシュレス化に大きく貢献するクレジットカードのモバイル決済機能の導入を検討していた。すでに、同社ではiPhoneやiPadを営業担当者が携帯し、メール、契約情報照会、地図検索といった機能を試験的に利用していたことから、このペイメント・マイスターによるクレジットカード決済の導入に踏み切った。

 ペイメント・マイスターの導入について、AIGエジソン生命保険 常務取締役 二見 通氏は、「私たちは金融機関ですので、情報セキュリティについては非常に気を使います。しかし、フライトシステムコンサルティングさんとの詳細に話し合いを重ね、私たちの求めるセキュリティ環境が実現することが確認できました」と語っている。

初期導入コストは数万円台、パイロット導入など少数にも柔軟に対応

「初年度は数万単位で、ペイメント・マイスターを売上げたい」(片山氏)

 気になるペイメント・マイスターの導入コストだが、100台単位の場合、ハードウェア、ソフトウェアを合わせ、1台あたり4万円弱で提供可能であるという。その他、決済センターに加盟するための初期費用として約10万円、月額約5万円、さらに決済手数料が必要となる。しかし、既存のモバイル決済端末の導入に比べると、格段に導入コストは安いといえるだろう。さらに、少数ではじめたい企業や、パイロット導入をしたい企業に向けては、柔軟に対応していきたいと片山氏は語る。

 現在ペイメント・マイスターは、iPhone 3G/3GSにのみ対応しているが、今後はiPhone 4にも対応の予定。さらに片山氏は、「まだはっきりとは予定を申し上げられないが、今後は中国銀聯カードやICカードへの対応を行っていく予定。また、初年度は数万単位で、ペイメント・マイスターを売上げたい」と将来の展望を語っている。

(北原静香)

2010/10/13 06:00