本日の一品

HOLGAレンズでアナログ・レトロにハマる

EOS Mにはブラックコーナーエフェクターレンズが意外と似合う

 HOLGA(ホルガ)という名前の120mmフィルムを使用するカメラが誕生したのは、約30年ほど前の香港らしい。最新のコンパクトなデジタルカメラと比較すると、手の小さな女性なら両手で持てるくらいの大きなプラスチック製のウルトラチープなカメラだ。

 昨今のカメラ女子と称されるカメラ好きの女性にも定番の人気トイカメラだ。昨今は巷で簡単に買えるコンデジやスマホ内蔵のカメラも、画素数は軽く1000万画素を越え、オートフォーカスのスピードはコンマ以下のハイスピード。そんなテクノロジー優先、スペック重視のカメラ市場にあって、アナログHOLGAカメラの人気には目覚ましいものがある。

 人気の理由の大きな要素は、まずカメラ本体の価格が”安い”というところだろう。そして、もうひとつの理由は、短期間に進化し過ぎたデジタルカメラは、ほとんど誰が撮影しても失敗の無い結果を約束してくれる面白みの少ないハードウエアになってしまったことかもしれない。

 そんなこんなでHOLGAは人々の予想を大きく上回り普及した。そして今度は、そのHOLGAの雰囲気やテイストをデジタルカメラでも気軽に体験できる“交換レンズだけの商品”が登場した。「ブラックコーナーエフェクターレンズ」(以降、HOLGAレンズ)というわけのわからない名称が付けられたレンズがそれだ。

HOLGAレンズはHOLGAカメラのレンズのみを取り出して、各社のカメラにマウントできるようにした商品だ。キヤノン以外にも殆どの国産カメラメーカー用のHOLGAレンズが用意されている
絞りは固定でF8なので思い切り暗いが、滅多に使うことのないデジカメのマニュアル機能を使うことは楽しい。
EOS Mの場合、マウントアダプターEF-EOS Mを介して取り付けるしか手段がない
マウントアダプター介してでっかくなったHOLGAレンズはなかなか迫力満点だ

 “ブラックコーナー”というのは読んで字のごとく、撮影後の写真の四隅が黒くなっていることらしい。これは年代物のクラシカルなレンズを使用した場合などに、周辺光量が不足して四隅が暗くなり、大げさに言えばトンネルの中から外を見ている様な雰囲気になる“ヴィネッティング”という現象と同じだ。

 この撮影結果を“マイナス効果”と考えるか“レトロな良い味”ととらえるかは、その人が育ててきた映像に関する感性しだいだろう。最初のHOLGAはそのつもりで開発したわけではないと思うが、受け入れる人たちが“レトロな良い味”ととらえた為に、今日のHOLGAがあるのだろうと思う。

ブラックコーナーエフェトが顕著な優しい写真が撮影できる
暗い場所の撮影ではよりコントラストが強調された写真になる
遠景も味わいはあるが、個人的にはHOLGAのイメージとは少し違う

 このHOLGAレンズは、国内の各デジタルカメラメーカーのレンズマウントの規格に合わせて数種類が発売されている。筆者が購入したのはキヤノン社製の一眼レフ用交換レンズEF規格の商品だ。EOS-Mに取り付けるには、マウントアダプターEF-EOS Mを介して取り付けることとなる。

 HOLGAレンズはプラスチック筐体のチープなレンズではあるが、マウントアダプターを介して取り付けた時の風格はなかなかだ。HOLGAレンズそのものには4段階のアイコンが表現するいい加減なピント目盛しかなく、合焦範囲はだいたい1m~、6m~、無限大くらいの感覚だ。

 HOLGAカメラ本体のシャッタースピードはだいたい1/100固定で、またISOは購入したフィルムで自動的に規定されてしまう。一方、デジタルカメラにHOLGAレンズを取り付けた場合は、液晶モニターで被写体を見ながら、お好みのシャッタースピードやISO設定で何度でも自由に変化をつけて試し撮りができるのでHOLGAカメラの雰囲気を現代のデジタルカメラで体験することはきわめて面白い。

 しかし、選択の幅が広がるデジタルとアナログの折衷型カメラは、必ずしもベストフォトを約束してくれるわけではない。筆者はHOLGAレンズでいろいろ楽しんだ後で、HOLGAカメラ本体を買ってしまい、すでにブローニーフィルムも10本を越えてしまった。デジタルだけの世界に留まっていれば静かに佇んでいられる確率は高いが、ほんの少しでもアナログの世界に足を突っ込んでしまうと、そこはもう底なし沼の世界かもしれない。「地獄へようこそ!」

製品名販売場所価格
HOLGA「ブラックコーナーエフェクターレンズ」Amazon.co.jp3150円

ゼロ・ハリ