本日の一品

太古の「NEC9801F2」ユーザーが懐かしの“ピポッ音”を再現する「BEEP on USB」を手に入れた

PC98の起動音のエミュレーションをやってくれる「BEEP on USB ver 1.0a」はHandyなゲーム機と一緒に持ち歩いてどこでも価値の分かる分かる友達にだけ自慢している

 1982年の10月末に発売され後に“国民機”と呼ばれたNECの16ビットコンピューターの覇者「PC9801」シリーズは、2003年9月20日でその21年に渡る長い歴史の幕を閉じた。1990年前後に、対抗陣営でDOS/V市場の拡大のためにその戦略と製品企画を担当していた筆者が、2023年の今、そのことを書くとは予想もしなかったことだ。

 実は、筆者自身も1985年ごろになけなしのお金をかき集めて初代機であったPC9801を大幅に機能強化、拡張して発売された当時最新モデルだった「NEC PC-9801F」(F2モデル)を手に入れた。買ったのはたしか、大阪日本橋の怪しい某現金問屋で購入価格は10万円引きの29万8000円だった。

 PC98の販売が終了して10年近く後の、2014年ごろに国民機の起動音を懐かしむ一部のユーザーが自主発売した「国民機起動音発生装置PiPo」やそれに続いてデビューした現役の「BEEP on USB」の最新モデルを秋葉原のショップで手に入れた。

筆者の購入した「BEEP on USB ver 1.0a」は現代では簡便に使える機会の多いUSB給電受けの最新モデルだ。値段も1980円と歴代最高値だった

 筆者自身の「ピポッ」音に対する懐かしさだけではなくエミューレーションデバイスの発売に関わった人達の“ただただ懐かしいから作った”“遊び心と“無駄を楽しむ気持ち、製品へのこだわりとパッション”に惹かれて思わず出遅れて買ってしまった。そこでぜひとも読者の皆様にもご紹介したいと思った。

 筆者の購入した製品は秋葉原の“家電のケンちゃん”で売られている「BEEP on USB ver 1.0a」と呼ばれている、2017年に発売されたUSBインターフェイスのものだ。途中、何度か価格改訂があり諸物価高騰のおり、現在は過去最高の1980円で販売されている。しかし、ネットやメディアに紹介されるとなぜかすぐに売り切れてしまう人気だ。

 ウルトラ単機能の最新モデルである「BEEP on USB ver 1.0a」でできることは極めてシンプルだ。本体のType-A規格のUSBプラグ部分を、どこかの給電可能なUSBポートに挿入すると一度だけ「ピポッ」とPC98の起動音と思われるサウンドが基盤に搭載されている圧電スピーカーから聞こえてくる。

モデル名とバージョンを記した側の一番大きな部品は圧電スピーカーだ

 USBポートを利用できる「BEEP on USB ver 1.0a」が登場する以前には、デスクトップパソコンのFDD電源ポートを利用するモデルやPCIから電源を確保して、パソコンの電源投入時にボックス内部で「ピポッ」となってくれるリアリティ度の高いモデルもあった。筆者もその存在は知っていても現物には見たことも触れたこともなかった。

 「BEEP on USB ver 1.0a」から実際に聞こえる音は、2kHzと1kHzの音を順に鳴らすだけのものだ。圧電スピーカーが付いているのと反対側の基盤上には2つのネジがある。“PRIORIS”と企画元の同人サークルのブランド名を正しく読める向きで、左上のSと書かれたネジを回すとピッとポッの連続音のスピードが変わり、右上のVと書かれた側のネジを時計回りに回すと再生音量が大きくなる仕組みだ。

PRIORISのロゴのある側の最上端の左右にはS(peed)とV(olume)の2つのネジがあり2kHzと1kHzの音を順に鳴らす時の速度と音量を調整できる

 再生スピードやボリュームはネジを回しながらリアルタイムで聴くことができないので、ドライバーで回して適度なところで「BEEP on USB ver 1.0a」に給電して適宜調整する必要がある。USBモバイルバッテリーやType-Aポートのあるパソコンにつないだり、取り外したりして調整するのが良いだろう。

USBモバイルバッテリーを使えば何処でもピポッ音のデモができる

 筆者は途中に、電源オンオフの切り替えスイッチのあるUSB延長ケーブルを使ったので手間がなく、スピードとボリュームを調整するたびに切り替えスイッチをオフオンするだけだったので何度も調整したがストレスは皆無だった。

ネジを回しても音はリアルタイムに変化しないので、意外に途中にオンオフスイッチのあるUSB延長ケーブルが便利だった

 ただ、もともと圧電スピーカーの音が極めて小さいので、筆者の場合はボリュームネジは常時右に振り切った状態の最大だ。なので実際の調整はスピードのみだった。ネジ1個を回すだけなので、スピードの調整は極めて簡単で人間の耳に届く「ピポッ」音も大きく変化するが、何より困ったのは手元にオリジナルのPC98がなく比較対象がないことだった。

 オマケに、筆者が大昔にしばらく愛用していたPC98は、PC9801F2というモデルでネットの情報では「ピポッ」音が登場したのは、筆者のPC98の後継機種として市場に投入された9801VXという機種かららしい。なので筆者の大脳の中には初めからPC98のピポッ音は存在しないようだった。

道具箱を見ていたら雰囲気の似たネジ山のネジ回しが見つかったので適当に使ってネジを何度も回したり戻したりして音の雰囲気をチェックした。最終的に音量は最大、速度は気分でいろいろ変えている

 おそらく筆者が聴いていたと勘違いしていたPCは、ほぼPC9801F2と前後して並行して使っていた東芝のJ3100GTやMacintosh Plusなのかもしれない。お国柄が違えば起動時のビープ音はIBM PCのように不吉な兆候音でもある。電源投入時に短いビープ音が2回鳴ったりしたらかなりいや~な雰囲気の仕事始めだったりする。

 今回、自分の目指す目的音を失ったままネット上をいろいろ回遊してみたら、ピポッ音の登場した初代の9801VX以降のほぼ全機種の実機のピポッ音を一同に録音コレクションした神がかり的サイトを発見した。暇に飽かしてほぼ全てのピポッサウンドを聴いてみたが確かに微妙な違いがある。

 暇な筆者はこれら全ての実機サウンドを聴いて、BEEP on USB上のスピードとボリューム調整をいろいろやりまくったがどうもこの二つのネジの回転調整だけでは同じサウンドを作り上げるのは無理だと判断した。

 あくまで「BEEP on USB ver 1.0a」で作り上げることのできるサウンドはエミュレーションであり一番重要なのは雰囲気だ。いろいろやった結果、筆者もあるレベルの音量とスピードで好みのサウンドに落ち着いた。

 BEEP on USB ver 1.0a」は超小さく軽量なので、PCオタクが集まる宴会などどこにでも持って行って自慢できるアイテムだ。USB Type-Aポートのないパソコンでもモバイルバッテリーのポートに抜き差しするだけでピポッ音が可能だ。

ポート変換のアダプターを使えばUSB Type-CしかないThinkPad X1 nanoでもGalaxy Z Fold4でも「BEEP on USB ver 1.0a」は使えた

 残念ながら、最近の筆者愛用のThinkPad X1 nanoにはUSB Type-AポートがなくType-Cだけだ。しかし手元のType-A to Type-C変換プラグを使えば大丈夫だった。同じポート変換で筆者のメインスマホである「Galaxy Z Fold 4」でも音は鳴った。敵ながら素晴らしい戦友だった、PC98の起動音をThinkPadの起動時に鳴らせることは光栄の極みだ。

製品名発売元実売価格
BEEP on USB ver 1.0aPRIORIS1980円