本日の一品

万年筆のインクが使えるフェルトペン

 筆記具の中でも万年筆は歴史が長く、現在もエレガントな筆記具の頂点にある。しかし、後発のボールペン、ローラーボールやサインペンなどの大躍進もあり、昨今ではシャープペンシルにその地位を奪われてしまった鉛筆と同じ立場にある筆記具のようにも見える。

 市場の先行きが危うくなってくると、一気に無くなってしまうモノと、何らかの改善や工夫で浅く世界を広げて別の発展をして生き延びてゆく製品もある。

フェルトペンは万年筆のインクを使えるスムースな書き味の楽しい筆記具だ

 従来の万年筆は、クラシカルで伝統的、どちらかと言えば敷居の高い筆記具だったが、将来市場の不安からか、柔軟な思考の出来る関係者が居たからか、発想の転換が早くに起こたようで市場のセグメンテーションが実現した商品だ。

 ひとつは従来の格調高さを遥かに超えるハイエンド層向けの高級筆記具、もう一つは親しみやすいナチュラルな筆記具として、万年筆を知らない層にアプローチするローエンド戦略が功を奏して今では新しい市場を開拓しつつある。

 万年筆の構成要素はペン本体とインクだ。特に最初にローエンド層に人気の高かった商品は昨今ではごく普通になったカスタムインクだ。自分で調合し、世界で一つのカラーインクを作り上げるシステムは大いに普及した。

 万年筆の失地回復策のもう一つの戦略は万年筆用インクの他筆記具への展開だ。今回、ご紹介する「フェルトペン」もその一つだ。

最初に買ったのは外観カラーがグリーン色のフェルトペン
どうしても試して見たくて、1.4㎜の太字のペン先ユニットと一緒に白い本体のフェルトペンを買った。本体カラーが赤いタイプも注文済みだ
昨今、万年筆以外に万年筆用のインクを使う筆記具は増えてきている

 万年筆インク(水性インク)を既に万年筆以外の筆記具にも使っている例は多い。筆者の持っているモノだけでも、筆ペンやボールペンは既に万年筆インクを使っているものがある。

 フェルトペンはそれらに続く3番目の筆記具として近くの文房具屋さんで買った。一般的に繊維質のフェルトを使った筆記具で有名なものはラインマーカーやマジックインキだろう。

 今回、筆者が買ったフェルトペン・キットは繊維質のフェルトを0.8㎜という細いペン先に加工したモノだ。購入したキットにバンドルされていたペン先は0.8㎜だが、お好みに応じてより太い1.0㎜、1.2㎜、1.4㎜がオプション商品のペン先交換ユニットとして単品入手が可能だ。

 キットは、本体、ペン先ユニット(0.8㎜)、インクカートリッジ、コンバーターのセットで税別1200円で販売されているものだった。買ってすぐ使えるインクカートリッジ付きでなかなかリーズナブルな価格だ。

フェルトペンは、コンバーターとカートリッジの両方が付属する

 今回、筆者は、同じペリカンのボトルインクを使って普段使いの万年筆(Bold)、ボールペン(カキモリ0.7㎜)、フェルトペン(0.8㎜)の3本にボトルインクを吸い上げて描いてみた。

 筆者は、気分的な問題もあって、フェルトペンでは、万年筆のお作法とは異なり、カキモリのボールペン同様、コンバーター単体でボトルインクを吸い上げて使用している。これは絶対条件では無く筆者の個人的な好みだ。

同じペリカンの青いボトルインクを、万年筆、フェルトペン、ボールペンの3本に入れてみた

 ボトルインクなので、今使っているインクカラーに飽きてきたら、洗浄して別のカラーに替えて使えそうな印象はあるが、どうもペン先ユニットのフェルトにしみ込んだインクはそう易々とは脱色出来そうにないようだ。

 筆者のようにお好みのカラーを複数使いたい場合は、最低、ペン先ユニットはカラーの数だけ買う方が結果的には良さそうだ。もちろん同時並行的に、黒、青、赤の3色を使いたい筆者のようなユーザーはフェルトペンその物を3本買った方が早いだろう。幸いにもフェルトペンの外観カラーも3色以上揃っている。

 原稿書きが遅れている間に、今回注文していたペン先ユニットが届いた。太い線の好きな筆者は購入する万年筆の殆んどはボールド(太字)、今回のフェルトペンは0.8㎜とかなり細いタイプのペン先ユニットが標準セットだったので、先日、1.4㎜径のボールドを注文してみた。

今回は万年筆、フェルトペン、ボールペンの3種類で比べてみた
フェルトペンのペン先ユニットを太い1.4㎜に交換するときっと大好きなPentel社のサインペンのような書き味になるに違いない
標準付属の0.8㎜と1.4㎜では見かけもこんなに違う

 期待通り、ペン先ユニットの1.4㎜径は、インクのフローも、スムースな筆記感覚も筆者愛用のBold(太字)万年筆の雰囲気に最も近いモノだった。万年筆のFine(細字)を好きな人の中には、カリカリとした独特のエッジの効いた筆記感触を好む人も居るが、そういう人には1.4㎜ペン先当然向いていない。

 フェルトペンの書き味は、一般的な万年筆やボールペンとは全く異なる書き味で、イメージ的に近いのはぺんてるのベストセラー商品である「サインペン」のスムースさだ。ギリギリで届いた1.4㎜のペン先ユニットに交換すれば、間違いなくその筆記感覚だった。

 水性インクを使う万年筆の弱点は、長時間使わないでいると、インクが乾燥したり、毛細管現象を実現する仕組みの途中で詰まって筆記不能になってしまうことだ。これはボトルインクを使用するボールペンでもフェルトペンでもほぼ同様の悩みだ。

 今回試した3本の中では、フェルトペンのキャップが、不用意なペン先の乾燥に対するシールディング機構が一番良く出来ている感じだった。キャップの取り付け、取り外し時に指先に感じる抵抗値が高く、極めて密閉感が高く安心感があった。

1.4㎜のフェルトペンはさすがに予想通り超スムースな書き味だが、まだまだサインペンの太さには及ばない。万年筆のような少しカリカリしたプラマンとは対照的なフェルトペンはやはりサインペンのようなスムースな書き味が命だ
万年筆のインクが使える筆記具はこれからもいろいろなタイプが発売されるだろう

 万年筆、ボールペン、フェルトペンの3本を並行的に使う予定のユーザーなら、4種類のペン先を揃えられるフェルトペンはありがたい。スケジュールやTo DOはデジタルに移行済みで、アナログの小さな手帖に細かな文字を書くことも30年ほど前に止めてしまった筆者は、BOLDの万年筆、1.4㎜径のボールペン、9㎜芯のシャープペンシル、1.4㎜ペン先ユニットのフェルトペンだ。

製品名発売元購入価格
フェルトペンプリコ1320円(税込)
ペン先交換ユニット 550円(税込)