本日の一品

希少なグッドデザインに惹かれて「ステンガンジー缶切」を買った

最近は滅多に使う機会のなくなった缶切りを懐かしさと安さで買ってしまった

 昨今、我が家を含め多くの家庭で、使う機会の激減したモノの代表に“缶切り”があるのではないだろうか? 一番の理由は、一般家庭で使うことの多い食料品の缶詰のほとんどは缶切りがなくても簡単に開けることのできるプルトップ缶に変わってきたためだろう。

 実際に今回の一品である「ステンガンジー缶切」を松屋銀座のデザインコレクションで買って帰った日に、我が家の食品ストッカーにあった缶詰を全部見てみたが、缶切りの必要な缶詰は全く見当たらず、すべてプルトップ缶だった。

昨今の缶詰はほんのごく一部を除いて、プルトップ缶になってきているので、昔懐かしい缶切りの出番はまずないだろう
筆者宅に今も在るのはロータリー型の少しだけ進化した缶切りだが、同じく出番はないに等しい

 そういえば我が家の食器棚の引き出しの中に、古くから缶切りがたった1個だけあったが、すでに一番直近に使ったのはいつ頃だったかすら思い出せない始末だ。

 そんな筆者が、今まで通りの生活なら、まず使うことのない缶切りであるステンガンジー缶切と言う超クールで昭和な缶切りを買ってしまった。缶切り本体もクールだが、その前に目に入るチープなパッケージもそれ以上にクールなのだ。

昭和の香りのする缶切りを見かけてすぐにレジに向かってしまった
絶対に缶切りでないと開けられない缶を探すためスーパーマーケットに行き、パイナップルとピーチの缶詰を見つけた

 とにかく筆者世代には懐かしい。缶のトップの好きな場所にまずは“ブスッ”と最初の小さな穴をあけて、後は“キコキコキコキコ”と缶を切って行く手先の感覚を思い出したくて、近所の業務スーパーにプルトップじゃない缶詰を探しに行った。

 さすがに業務スーパー! すぐにパインナップルの缶詰と桃の缶詰が見つかった。やはり大量に重ねて輸入する海外製品や、空中から落下させる戦闘食品、耐久性が命の避難時の食料品などには、まだまだプルトップの軟な缶詰ではないハードボイルドな食品も生き残ってるようで嬉しい限りだ。

 これで早速、ステンガンジーを試すことが出来る。ステンガンジーを一目見て気に入ってしまった最大の理由は道具の最終目的と使用性のみを追求した“無駄のない機能デザインの美”だった。

てこの原理で最初の穴を開ける鋭い爪のような歯が特徴だ
栓抜きも付いているが、これも昨今は瓶ビール以外では出番が少なくなってきている
真四角で、軟なデザインをしていない屈強なステンレスの形状が素晴らしい
ワックスやドロップなどの押し込み型の薄い蓋をこじ開ける機能も付属する

 てこの原理で缶詰に最初の穴を間違いなく開けるための鋭角な先端、そのあと、切り進むための持ちやすさと力の配分を考え尽くした、人の手に合ったバランスの良い全体形状。押し込み型の固い蓋などをこじ開けるオプション部分。いずれの部分の形状も必要なモノでそこに一切の無駄がない。

 もちろん、筆者宅に昔からあったドイツ製のロータリー型の缶切りも機能的には素晴らしいモノだと思う。2つのハンドルを開き、2枚の歯車で缶の縁を掴み、回転ハンドルを回すことで、缶のトップを後退しながら切り裂いてゆく仕組みは素晴らしい。

基本的にはステンガンジー缶切と同じ仕組みを回転ハンドルで実現したロータリー缶切り
ロータリー式缶切りは2枚の歯車が缶の縁を掴み、ハンドルを回転させることで缶を回転させ、小さな丸刃が缶を切りきながら後退する仕組みだ

 一方、ステンガンジー缶切の楽しさは、後発のロータリー型を生み出す要素となった機能美と一体となったシンプルな構造の道具を人の手が使うナチュラルさだ。

 極めて考えられた持ちやすい取っ手を握って最初の穴をあける瞬間から、リズミカルに缶を時計の針と反対回りに回転させ、切り進むプロセスを楽しみながら一気に開けることが出来た。

意外と大きな持ち手は女性でも簡単に最初の穴を開けることが出来る
あとは“キコキコキコキコ”と腕を動かして切り進むだけ
ほんの数秒で缶は簡単に開けることが出来た。スプーンで缶を開けるサバイバルも大事だが、日常に“道具”と呼べるステンガンジー缶切を使ってみるのもなかなか楽しいものだ

 多くの読者諸兄もすでに缶切りを使わなくなって何十年だと思うが、その長いインターバルをものともせず、極めて自然に使えることは自分にとっても驚きだった。ステンガンジー缶切のようなシンプルで機能追及型のプロの道具は、レジェンドになることも他のテクノロジー商品に置き換えられることもない一生現役の逸品なのだ。

製品名購入場所購入価格
ステンガンジー缶切松屋銀座 デザインコレクション900円
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