本日の一品

値頃感の出てきたトゥルー・ワイヤレス・イヤフォン「W800BT」

お手頃価格になったオーディオの老舗、オンキヨーが発売しているトゥルーワイヤレスイヤフォン「W800BT」

 2016年秋に発表され、しばらく人気だったオンキヨー「W800BT」。年が明けて少しずつ各地の販売価格も落ち着きを見せ、今では筆者の知る限り、どこでも2万円以下という安定したベストバイ価格になってきたようだ。

 発売直後からずっと3万超えで見送っていた筆者が購入したのはこの春先。約3カ月ほど、週2~3回は使っており、iPhone 7 PlusのAirPodsと並んで、日常使いのAndroidスマホの定番ワイヤレス・イヤフォンとなった。

 広義にワイヤレス・イヤフォンと言っても、アップル社のAirPodsや今回ご紹介する「W800BT」のように、左右のイヤーモジュール間に全くケーブルのない、日本流に言うなら“完全ワイヤレス・イヤフォン”と呼ばれるモデルがある。一方、左右のモジュールが短いケーブルで接続され、その間に充電池やBluetoothの無線モジュール、リモコンなどをインテグレートした“ワイヤレス・イヤフォン”もある。

フルワイヤレスヘッドフォンという表記

 前者は、海外では“完全”=“Perfect”ではなく、“True Wireless Earphone”と呼ばれている。簡単な話、多少でもケーブル(紐)のある無線モノが“ワイヤレス”、全くのケーブルレス(紐なし)が“True Wireless”(完全ワイヤレス)ということだ。

 完全ワイヤレスの起源はそれほど古くはなく、昨年のCOMPUTEX TAIPEIに多くのクラウドファンディング系企業の実機出展があり、年末に出荷時期を迎えたアップル社のAirPodsと時期が重なったため、急にその話題が盛り上がったようだ。

 価格と音質との相関関係は、大昔のアナログオーディオの頃からありそうで無さそうで、聴力や感性を含む個人差や年齢差もあり、なかなか微妙だが、AirPodsの実力と低価格は、その後の“完全ワイヤレスイヤフォン”市場に大きな目標を与えたことだけは確かだ。

 そういう意味で、「W800BT」がリーズナブルな市場価格に落ち着いてきたのは、もういつ買っても大丈夫という時期なのだ。

 さてW800BTだが、筆者は、日常、並行してiPhone 7 PlusとAirPodsを使ってほぼ同じソースをカブって聴いている。そんな筆者の独断と偏見で使用感を言わせてもらうなら、音質より先に、いつも落としそうな不安な気持ちにさせてくれるAirPodsと、常にガッチリ耳の穴をグリップしてくれるW800BTという、音以前の価値差を感じている。

W800BT(左)とAirPods(中央)、SHUREイヤフォンをBTワイアレス化するHB1(右)

 個々の人の耳にジャストフィットすることを目指すのではなく、全体的な見た目の外観デザインとアップル的な味(差別化)に重きを置きながら、外から内側に向かって作り込んでいったAirPodsと対局にあるのがW800BTだ。

イヤフォンの中に55mAhのリチウムイオン電池が内蔵されており、3時間の音楽再生が可能だ。「レ点」のような格好をしたスタビライザーがイヤフォンのほぼ完璧な脱落防止と気持ち的な安定感を増幅してくれる

 W800BTの最大の特長は、音質の向上に取り組み完成した無骨な形状に加え、外耳道に押し込んだイヤーピースの脱落を防止する目的で、「レ点」型のシリコン製スタビライザーを加えて、最適化してゆくという内側から外側に向かって作り込んでいく違いを感じる。

S/M/Lのイヤーピースが付属。充電ケースはAirPodsを見慣れていると大きい

 製品の作り方の差異と同じく、両者にはその結果としてさまざまな違いが存在する。オーディオ機器メーカーの作ったHiFiイヤフォンとして開発されたW800BTは、昨今流行の完全ワイヤレス型のイヤフォンとしては、ややサイズが大きい。スタビライザーの支援で、外耳道にガッチリと固定出来る音楽没入型の外界音シャットアウト型だ。

 一方、外耳道に軽く引っ掛け、イヤフォンをぶら下げるように音楽を聴くタイプのAirPodsは、再生ボリュームの大小にもよるが、多くの場合、微かに外界音も聴こえる環境型イヤフォンのイメージも強い。”耳からうどん”と揶揄される独特のデザインも、”カフェなど周囲の騒音も音楽の一部だ”という先進的自然派ユーザーにはベストマッチだ。当然ながら、音漏れはW800BTより大きい。

 W800BTは、イヤフォン本体に55mAhの充電式リチウムイオン電池を内蔵している。普通に音楽再生すれば3時間近くは動作し続ける。充電池が底をつけば、付属の専用ケースに収納することで、内部にある900mAhのリチウムイオン電池から5回まで給電される仕組みだ。バッテリー容量などの差もあるが、イヤフォンデザインと同じく、充電ケースにも機能先行のオンキヨーと、デザイン先行のアップル社の違いが見えて面白い。

筆者はW800BT、AirPods、2つ下のHB1を同じAndroidスマホにBT接続して利用している
充電ケースの5つのLEDインディケーターにより、イヤフォンへの充電の状態(左端の1個)と充電ケースそのものの電池残量(右側4個のLED)現在左側4個のLEDの内3個が点灯しており、充電ケース内の電池残量は75%だ

 充電式のW800BTの充電ケースは外部のUSB/ACアダプターから給電を受け自身を充電するためのUSBケーブルを本体にインテグレートしている。W800BTを大きくしたような充電ケースの周囲に巻かれている赤くスリムなUSBケーブルを解いて充電する。筆者はたいてい使用頻度の低いUSBモバイルバッテリーから充電することが多い。

充電ケースへの充電はケース周囲の巻かれたUSBケーブルを解いて行う
筆者は普段あまり登場の機会が少ないUSBモバイルバッテリーを利用して、USBモバイルバッテリーのトレーニングも兼ねている

 さて肝心のW800BTの音質だが、一言で言えば、長くオーディオ事業を主軸に置いて継続しているメーカーらしい比較的バランスの取れた真面目な音作りだが、低域と高域に特徴があり、その好き嫌いは好みが別れる可能性がある。基本的に、あくまでソースに何を聴くかということが一番重要だと考えられる。

 筆者の音楽の好みは非常に単純明快で、ブラス系の強いトラディショナルなR&Bやジャズ・ロック、少人数のヘビメタ、女性ジャズボーカルとウエストコーストミュージックがソースの90%以上だ。J-POPS系はまず聴かないのと、クラシックはモバイルオーディオでは一切聴いていない。これらの条件下で、W800BTは、ベースの低域の輪郭の明確な所、シンバルやハイハットなどの衝撃音の歪のないクリアさなど、良い意味での繊細感の過剰ではない筆者好みのドンシャリ系だ。

ヘッドフォンなどの自己評価には、必ず登場する好きな定番音楽。オーディオは良い音、悪い音ではなく好きな音へのアプローチが重要だと考えている

 現在の2万円を切った価格帯なら、間違いなくAndroidユーザーにとって、W800BTは買いのアイテムだ。ただトゥルーワイアレスでは避けて通れない問題かもしれないが、車内では全く問題ないものの、混雑する駅のホームや改札付近で、周囲の電波状況からか、音の瞬断が発生することがある。その発生率はアップルAirPodsよりも高い。何もしなくても、すぐにリカバリーすることが大半だが、最悪の場合は、右側(赤いラインのある)のイヤフォンだけを長押しするリスタート操作が必要な場合もあった。

製品名提供元価格
W800BTオンキヨー1万9500円(ビックカメラ有楽町)